5G SAや大容量化で“真の5G”がいよいよ本格始動へ 4キャリアの最新ネットワーク戦略を解説:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
CEATECの会期2日目には、大手キャリア4社や国内通信機器ベンダー、インフラシェアリング事業者が集うイベントが開催され、5Gの現状とこれから進む道を示した。各社5GのSA(スタンドアロン)を拡大しながら、次のサービス展開を準備している。ソフトバンクは5G SAのエリアが急拡大し、KDDIはミリ波をより活用していく。
国内最大級のテクノロジー展示会「CEATEC」が、10月14日から17日の4日間に渡って開催された。会期2日目には、大手キャリア4社や国内通信機器ベンダー、インフラシェアリング事業者が集うイベントが開催され、5Gの現状とこれから進む道を示した。NSA(ノン・スタンドアロン)の5G整備が一段落しつつある中、各社とも徐々にSA(スタンドアロン)を拡大しながら、ネットワークスライシングなど、次のサービス展開を準備している。
国内での展開に後れを取った、失敗などといわれることもある5Gだが、“真の5G”とも呼ばれる5G SAでは、ついにその真価を発揮することになる。では、国内大手4社は5G SAをどのように整備し、どんなサービスを展開していくのか。ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの講演を元にしながら、各社の5Gの最新事情をまとめていく。
ドコモはネットワークスライシング導入間近、KDDIはその成果を披露
「ネットワークスライシングを使ったサービスを、そろそろ出したいと考えている」――こう語るのは、ドコモの執行役員 ネットワーク本部長を務める引馬章裕氏だ。ドコモでは、「最初はミリ波を入れたり、スピードを上げたり、SAを入れたりと、機能的な準備をしてきた」(同)。その真価をついに発揮できるときが、近づいてきたというわけだ。
ドコモでは、2025年度以降に5G SAでのネットワークスライシング開始を予定しており、半年以内に何らかのサービスがスタートするとみられる。その前段として、ドコモ傘下のドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)では、優先制御で通信を安定化させる「5Gワイド」を法人向けに展開する。5Gという名称ながら、これは「LTEエリアでも使えるサービス」だ。
5Gワイドは基地局側で優先的にリソースを割り当てる仕組みで、KDDIがauの一部ユーザー向けに提供している「au 5G Fast Lane」と同様の技術を用いている。ドコモは現在、これを法人限定で提供しており、「さまざまな業界からご評価いただき、多くの受注を獲得している状況」だという。その発展形となるネットワークスライシングも、「できるだけ早く提供したい」考えだ。
ネットワークスライシングの導入には5G SAが必須になるが、ドコモは「5G SAの展開にも力を入れている」という。5G SAの拡大は、ここ数年、ドコモを悩ませているネットワークの混雑対策にもつながる。引馬氏は、次のように語る。
「(5G SAは)NSAと違って5Gの装置だけで完結できるため、方式としてはシンプルだ。LTEで混んでいるようなトラフィックの高いところで5G SAを使うと、LTE側の混雑がなくなり、(全体的に)スループットが上がる。多くの方々が来られて、非常に多くの通信が発生するような状況だと、5G SAを使って快適な通信が得られる」
5G SAの拡大に注力していくというドコモだが、エリア化では現状、KDDIやソフトバンクが先行している。特に「国内最多のSub6と5Gエリアを面的にカバーするための4G転用を組み合わせることで、高品質なネットワークを提供している」(KDDI 執行役員専務CTO コア技術統括本部長 吉村和幸氏)KDDIは、そのSub6の基地局を全て5G SA化しており、幅広いエリアでの利用が可能だ。
法人向けに限定されるが、「スライシング技術を活用した映像中継ソリューションを提供もしており、スポーツ中継や屋外イベントのライブ配信において5Gを活用している」(同)という。また、上空でのネットワークスライシングを使い、ドローンの飛行実験も実施。ドローンから配信される映像を運行システムに効率よく伝送する実証も行ったという。
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