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5Gマネタイズの切り札「ネットワークスライシング」始動 ドコモとソフトバンクの戦略差、海外の先行事例を読み解く石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

国内でも5G SAの普及に伴い、ネットワークを仮想的に分割するネットワークスライシングの商用化が進む。ドコモビジネスやソフトバンクは、法人向けやイベント対策での帯域確保や低遅延通信の提供を開始した。今後は海外事例のように、コンシューマー向けゲームや動画配信への応用による収益化が期待される。

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諸外国で進むネットワークスライシングの事例、コンシューマー向けもあるか

 もっとも、ネットワークスライシングの本格活用にはまだ課題も多い印象を受けた。1つは、5G SAのエリアだ。特にドコモに関しては、KDDIやソフトバンクと比べると5G SAの展開が遅れており、ネットワークスライシングを適用できる場所が限定される。ドコモビジネスの岩本氏も、「SAエリアがネーションワイド(全国規模)に広がっていないため、今回われわれがスライシングを提供するのは、面的というより固定的なユースケース」と語る。

 半固定的な使い方であれば、「お客さま要望エリアという形で基地局を作っていくことがある」(同)ので、エリアの狭さはある程度カバーできる。例えば、自動運転のような幅広い場所で通信が必要になる用途を想定すると、エリアの拡大は必須。コンシューマー向けにスライシングを活用したサービスを提供する上でも、エリアの広さは欠かせない要素になる。

 5G SAで先行している海外キャリアに目を移すと、法人利用に加え、コンシューマー向けサービスにもネットワークスライシングを活用し、収益化している会社もある。3月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC26 Barcelonaでは、こうした実績を成功事例として共有しているキャリアも存在した。

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3月に開催されたMWCでは、一部キャリアがネットワークスライシングの成功事例を紹介していた

 シンガポールのSingtel(シングテル)は、エリクソンのブースで最新の動向を解説。同社は2022年にソフトバンクと同じF1シンガポールグランプリで、ネットワークスライシングを活用した動画配信を提供。ワールドカップでも、ユーザー向けに優先帯域を割り当てるサービスを実施している。

 また、現在は「5G+ Priority」というサービスを提供しており、コンシューマー向けにも料金プランに応じた通信品質を提供している。エリクソンによると、F1やワールドカップのようなシンプルなネットワークスライシングから段階的に複雑な仕組みを導入していくことで、より広いユーザーに受け入れられるサービスに育ててきたという。


MWCのエリクソンブースで展示していたSingtelの事例。ネットワークスライシングで品質を分け、料金を分けているという

 Singtelの担当者は、より高品質なサービスを提供することでユーザーの満足度が向上するとともに、5Gへの移行も進んで収益化にも貢献したと話す。他にも、ドイツのドイツテレコムが「5G+ Gaming」という名称でストリーミングゲームをより低遅延で遊べるオプションを提供しているが、5G SAで先行する中国でも同様の事例は多い。


Singtelの場合、ユーザーの満足度が上がっただけでなく、収益性も向上しているという

 法人向けのような特定用途や半固定的な場所に限定される日本のネットワークスライシングは、まだ初期段階のもので導入が早かった国と比べると後れを取っているようにも見える。一方で、KDDIが優先制御の「au 5G Fast Lane」をネットワークスライシングへの橋渡し的な役割に位置付けているように、サービスの立ち上がりを予感させる動きもある。2026年度からの各社の動きにも注目しておきたい。

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