コラム

値上げの結論を出したソフトバンク なぜ一部プランで“月額1万円超え”に?

4月10日、ソフトバンクは新料金・サービス発表会を開催し、基本料金が月額1万円を超える新料金プランを発表した。専務執行役員の寺尾洋幸氏が通信品質維持と事業コスト拡大を背景とする値上げの理由を説明した。宮川潤一氏の過去の決算会見での発言の変遷を振り返り、値上げに至るまでの背景とは……?

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 4月10日、ソフトバンクは都内で新料金・サービス発表会を開催し、SoftBankブランドの新料金プランを発表した。新たに提供を開始する「ペイトク 2」はデータ容量が無制限で、月額(割引適用前の基本料金)1万538円に設定。従来の無制限プランと比較して基本料金が値上がりし、各種割引前の基本料金が月額1万円を超える新料金プランの登場となった。

 現行の無制限プラン「ペイトク無制限」も9625円から1万175円へと値上がりし、こちらも基本料金が月額1万円を超える設定となった。一方で新しいプランでは、衛星通信の追加や対象決済時のポイント付与率の倍増など、各種特典や通信サービスを拡充して実質的な提供内容を強化し、顧客への価値還元を図った。


ソフトバンクが4月10日に発表した新料金プラン「ペイトク 2」

ペイトク 2の料金表

 SoftBankブランドと合わせて、Y!mobileブランドについても月額料金の改定を発表した。6月2日から「シンプル 3」を220円、7月1日から「シンプル 2」などを330円値上げ。一方でシンプル 3向けには対象のゴールドカード支払いで適用される割引の増額などを新設し、実質的な価値を向上させた。

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時間を要した値上げ結論 宮川社長の決算会見での発言の変遷

 長らく値下げ競争が続いてきた日本の通信業界だが、インフレや各種コストの高騰を背景に他社が実質的な値上げに動く中、ソフトバンクは慎重に検討を重ねてきた。

 値上げについて宮川潤一社長が具体的に言及し始めたのは、2025年2月10日開催の2025年3月期 第3四半期 決算説明会である。この説明会で宮川社長は、値下げ一辺倒の業界動向に対し「通信が安いだけの国になってしまった」と開発力の低下を危惧し、「健全な形でものの値上げ(物価高騰)に合わせたぐらいの値上げを、どこかでやらなければならない」と発言した。ただし、この時点では「4社のうちの1社が最初にスタートを切るのは、相当勇気がいるところ」として「いまは動くつもりはない」と静観する姿勢を示していた。

 続いて、2025年5月8日開催の2025年3月期 決算説明会では、NTTドコモやKDDIが先行して実質的な値上げに動いたことを受け、「いわば『お兄ちゃん』のような存在が先に値上げに踏み切ってくれた」と歓迎し、コスト削減などの企業努力は限界に達しているとコスト構造の課題について発言した。

 さらに、8月5日開催の2026年3月期 第1四半期 決算説明会においては、「値上げしたい気持ちはすごくある」と本音を吐露しつつも、楽天モバイルへの顧客流出という「漁夫の利」を警戒し、「お客さまにご納得いただけるような適正価格になるように慎重に検討したい」と語った。

 その後、11月5日開催の2026年3月期 第2四半期 決算説明会では、これまでの慎重な姿勢から一歩踏み込み、「ソフトバンクはどこかで値上げに踏み切る」と中長期的な視点での値上げを明言した。物価高が続く現状において「われわれもどこかで動かざるを得ないだろう」と、値上げに向けた強い意志を示した。

 そして直近となる2026年2月9日開催の2026年3月期 第3四半期 決算説明会では、人件費や外注費の上昇といった事業環境を鑑み、「やっぱりどこか(のタイミング)で値上げしなければならない」と改めて強調した上で、「これからさまざまな検討をして結論を出していきたい」と発言し、新料金に向けた価格改定の判断がいよいよ近づいていることを示唆していた。


値上げを示唆していた宮川潤一社長。過去の決算説明会で物価高が続く現状において「われわれもどこかで動かざるを得ないだろう」などと話していた

 実際、通信料金本体の値上げに先立ち、各種コスト増や事業環境への対応として事務手数料の改定には着手している。2025年8月にWeb経由での事務手数料を改定した際には「セキュリティ対策や本人確認、決済システムなどの関連費用が増加していること」を理由に挙げた。さらに直近の1月にもWebでのSIM再発行等の手数料を改定し、カードの発行・配送等の実コストの有無や顧客の要望を考慮し、USIMについては1100円とする一方でeSIMは無料にするなど、実態の費用負担に応じた適切な手数料体系への見直しを進めてきた。


ソフトバンクは物価高騰に伴う各種費用の上昇をはじめとする昨今の状況を踏まえ手数料などの改定を行うと案内していた

 では、なぜソフトバンクは値上げをしたい本音はありつつも、なかなかSoftBankブランドでの通信料金値上げに踏み切らなかったのか。2025年8月5日の決算説明会の質疑応答にて、料金プランを改定するうえで憂慮している点について問われた際、次のように回答していた。

 「改定後の料金プランが、お客さまに本当に受け入れられるのか、さまざまな検討をしている。NTTドコモやKDDIだけでなく、楽天モバイルの動向も見つつ判断する必要がある」

 「お客さまの反応や市場動向を見ながら、適切な時期に適切な料金プランの見直しを行う予定。お客さまの納得感を重視し、慎重に判断したい」

なぜ通信料金の値上げに至ったのか?

 このように、他社の動向を注視しつつ、何よりも「顧客の納得感」が得られるかどうかに苦心していたことがうかがえる。今回の発表会は、こうした一連の発言やコスト対応を経て、ついにソフトバンクが結論を出した形だ。

 なぜ通信料金の値上げに至ったのか。同社専務執行役員コンシューマ事業副統括の寺尾洋幸氏が発表会の冒頭でその背景を説明した。「モバイル事業を開始した20年前は数万局だった基地局を現在は30数万局まで増やし、圧倒的なネットワークを構築した」と寺尾氏は話す。スマートフォンの進化やコンテンツの増加によって、トラフィックは過去5年間で1.6倍に増大しており、「維持が最大の使命だ」という。

 同社はランサムウェア等のセキュリティリスクへの対応や、自然災害への備えとしてネットワークの強靭(きょうじん)化を進めてきた。これまでは技術進化や効率化で事業費用の増加を管理してきたが、寺尾氏は「電気代の高騰や各種部材の価格上昇など原価高騰の波が押し寄せた」と説明し、「次世代へ向けた設備更改の時期も重なり、安定した通信環境と事業基盤を維持するために今回の料金改定に踏み切った」と、値上げの結論に至った理由を明かした。

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