「ソフトバンクはどこかで値上げに踏み切る」と宮川社長 中長期的な視点から値上げを検討
ソフトバンクは11月5日、「2026年3月期 第2四半期 決算説明会」を開催。宮川潤一社長が登壇。料金プランに関してコメントした。
ソフトバンクの宮川潤一社長が11月5日の決算説明会で料金プランに関して言及した。携帯電話料金プランは他社を含めて業界としては値上げの方向に動いており、同日、宮川氏は改めて「ソフトバンクはどこかで値上げに踏み切る」と明言した。
他社(NTTドコモ、KDDI)が値上げを実施する中でソフトバンクが値上げを見送った判断について、「短期的には良かったのではないか」という質問に対し、同氏は「企業は短期で判断すべきではない」と回答。「これだけ物価が高騰している中では、われわれもどこかで動かざるを得ないだろう」と述べ、中長期的な視点から値上げを検討している段階にあることを示唆した。
9月25日には、Y!mobileブランドで新料金プラン「シンプル3」を発表したソフトバンク。S(5GB)、M(30GB)、L(35GB)の3種類を用意し、利用データ容量に応じて選べる仕組みとした。従来プラン「シンプル2」から容量を拡充し、Sは4GBから5GBに増量。MとLも大容量プランとして設定し、いずれも余ったデータを翌月に繰り越せるようにした。通話料はSとMで30秒あたり22円、Lでは10分以内の通話が無料となる。Lはさらにグループ通話や割込通話といった有料オプション(月額各220円)を無料で利用できる点が特徴となる。
新料金プランでは、料金体系も見直した。Sが2780円(税込3058円)、Mが3780円(税込4158円)、Lが4780円(税込5258円)に設定され、ここに各種割引を適用することで実質的な負担額を大きく下げられる。代表的なものが「PayPayカード割」と「おうち割 光セット(A)」である。「PayPayカード割」は従来の187円から330円に引き上げられ、「PayPayカード ゴールド」(年会費1万1000円)を利用する場合は毎月550円の割引となる。「おうち割 光セット(A)」はSでも従来の1100円から1650円に増額され、M・Lと同額となった。これにより、例えばSプランでは基本料3058円から計2200円(光セット1650円+カードゴールド割550円)が引かれ、月額858円で利用できる。従来の「シンプル2 S」に同様の割引を適用した場合の1078円よりも安くなり、コストパフォーマンスがさらに高まった形だ。
また、新プランの特徴として海外データ通信の強化も掲げる。200以上の国と地域で、毎月2GBまでのデータ通信を追加料金なしで利用できるようにする計画で、提供開始は2026年夏以降を予定している。それまでの期間は、既存の「海外あんしん定額」の24時間プラン(3GB、980円、非課税)を最大7日分、無料で利用可能とする暫定措置を実施する。海外旅行や短期出張など、海外での通信需要に応える狙いがある。
さらに、PayPayとの連携施策として「PayPay使ってギガ増量キャンペーン」を2025年11月から開始する予定だ。シンプル3の加入者が1回200円以上のPayPay決済を月10回以上行うと、決済回数と加入プランに応じて翌月のデータ容量を追加付与する。S加入者は月10〜19回の利用で1GBをプレゼント、MとLの加入者は20〜29回で5GB、30回以上で10GBを追加できる。付与データは当月末まで利用可能で、繰り越しはできない。経済圏の利用促進を目的とした施策であり、PayPayの利用習慣を持つユーザーにとっては実質的なデータ増量メリットとなる。
一方で、電力サービスとの連携も強化する。シンプル3のうちMまたはLの加入者を対象に、「おうちでんき」各サービスを併用することで基本料から月1100円を最大2年間割り引く「おうち割 でんきセット(E)」を9月25日から提供開始した。Sプランは対象外となる。従来の「おうち割 でんきセット(A)」は前日24日をもって新規受付を終了しており、新たに電力契約を通じた割引体系を整理した形となる。
ソフトバンクは新料金プランの開発にあたり、8月にマーケティングアンドアソシェイツへ調査を委託し、全国の20〜60代の男女1000人を対象に意識調査を実施したという。調査結果では、ユーザーが携帯電話会社や料金プランを選ぶ際に重視する点として、データ容量の多さや経済圏での優遇、追加料金が不要な海外データ通信などが上位に挙がった。シンプル3はこれらのニーズを踏まえて設計されたプランであり、通信量と生活サービスを組み合わせた「お得さ」と「利便性」を両立した内容になっているとアピールしている。
ソフトバンクは、Y!mobileブランドを通じて価格と付加価値の両面で競争力を高める姿勢を明確にした形だ。データ容量の増量、割引制度の拡充、海外利用の無償化といった多面的な施策は、他のブランドとの差別化を狙う動きともいえる。新料金プランの浸透が進めば、PayPayを中心としたソフトバンク経済圏の強化にもつながると思われる。
Y!mobileのシンプル3については、「上手にやったなと正直に思っている」と評価。ユーザーにも受け入れられており、今のところトレンドに大きな変化はなく、予定通りに推移していると報告した。一方、SoftBankブランドでの値上げについては、宮川氏の発言から「いつ動こうか模索している最中」と見て取れる。
ソフトバンクは9月25日にY!mobileの新料金プラン「シンプル3」を発表した。容量を最大35GBまで拡充し、余ったデータは翌月に繰り越せる。Lプランは10分通話無料や有料オプションの無料化が特徴となる。ソフトバンクの宮川社長は「上手にやったなと正直に思っている」と評価した
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