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ソニーが「Xperia 1 VIII」で方針転換を図った理由 一般層に間口を広げるも、23万円超の価格がネックに石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

ソニーは望遠カメラの刷新やAIカメラアシスタントを搭載したフラグシップ「Xperia 1 VIII」を発表した。クリエイター向けからライト層へ間口を広げた背景には、Xperia 5シリーズの事実上の終了に伴うラインアップ集約がある。一方、最小構成で23万円超への値上げは、一芸を重視する他社ハイエンド競合の中で販売への大きな挑戦となる。

AIで間口を広げたXperia 1シリーズ、Xperia 5ユーザーの受け皿にも

 一方で、ソニーのデジタル製品はクリエイター向けを明確化し、プロユースに耐えるものが多い。Xperiaも、一時は「Photography Pro」のように、αのユーザーインタフェースをスマホの画面に最適化したアプリを標準で載せ、デジタルカメラのように設定を工夫しながら撮るユーザーに最適化していた。大澤氏も、「われわれはクリエイターエコノミーを非常に意識している」と語っている。

 ただ、「1億総クリエイター状態になっている中、より簡単に、あまり難しいことを意識せず、美しい写真や素晴らしい動画を撮りたい方は増えている」(同)。AIカメラアシスタントは、「そちらのお客さまにも、きちんとXperia 1シリーズを使っていただけるアプローチ」(同)だという。より間口を広げ、「これまで少しハードルが高いと思って使えなかったお客さまにきちんと使っていただけるようにした」のがXperia 1 VIIIというわけだ。


より簡単にクリエイティブルックをベースにした設定をできるようにすることで、間口を広げた格好だ

 背景には、ハイエンドモデルをXperia 1シリーズに集約していることもありそうだ。ソニーは、Xperia 1シリーズよりもコンパクトなXperia 5シリーズを投入してきたが、2023年の「Xperia 5 V」を最後に、以降の新機種投入を見送っている。よりライトにXperiaのハイエンドモデルを使っていた層が、Xperia 1シリーズとミッドレンジのXperia 10シリーズに分かれてきた経緯がある。

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 大澤氏は、「Xperia 5シリーズのユーザーはまだたくさんいるので、その方々がさまよわないようなことは考えなければいけない。Xperia 1や10で受け切れるかが、われわれのラインアップの議論になる」という。実際、Xperia 1シリーズは、2024年に投入した「Xperia 1 VI」でカメラのUIをそれまでのPhotography Proから現行のスマホライクなスタイルに変更。2025年のXperia 1 VIIでも、それを踏襲した。AIカメラアシスタントの搭載で、その方向性をさらに強めたといえる。


シャッターボタンを押すだけで簡単に撮れるカメラアプリは、Xperia 1 VIで導入された。以降、新モデルのXperia 1 VIIIまでそれを継続している

 もちろん、これまでのXperia 1シリーズと同様、「プロの方や、豊富な知識を持っている方にも使っていただきたいので、(カメラのUIには)プロモードも準備している」(同)。プロモードは、「シャッター速度優先」「プログラムオート」「マニュアル」を切り替えることができ、他社スマホのプロモード以上に作法がデジタルカメラに近く、デジタルカメラに慣れたユーザーには操作がしやすい。


プロユースに応えるモードも用意されているが、あくまでカメラアプリのいち機能になった

 プロでも使えるツールをベースにしながら、より間口を広げていき、スマホで撮影を楽しむユーザーも取り込んでいくというのが今のXperia 1シリーズの方向性だ。画質向上や高倍率のズームにAIを多用する他社とはアプローチが異なるが、ラインアップにαを持ち、プロユーザーからも一定の信頼があるソニーらしい戦術といえる。

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