「日本で前年比4倍成長」のNothing、次の一手は? au販路拡大と楽天の“すみ分け”に見るキャリア戦略(3/3 ページ)
日本市場で前年比4倍の急成長を遂げたNothingが新型ミッドレンジ2機種を国内投入する。KDDIの販路開拓や楽天モバイルとのカニバリ回避など、キャリアごとの巧みな戦略が明かされた。カメラの強化や生成AIウィジェットの搭載に加え、年内開設の直営店でさらなるブランド認知を狙う。
ウィジェットの自動作成機能で生活をより便利に
―― もう1つ面白いなと思ったのが、AIの使い方です。ここも、他メーカーとはアプローチが違いますよね。端末にひも付いているわけではありませんが、今回は、ウィジェットを作れる機能をフィーチャーしていました。
黒住氏 実はあれが面白いと実感したのは、皆さんに最初にお見せしたときだったんです。あのときに、メディアの人たちが一番食いついたのがAIでした。それを受けて、発表会もAIをメインストーリーにしています。僕自身、あまり自信がなかったのかもしれません。まだ機能としてはβ版に近いですし、できるものはミニウィジェットですから。
ですが、あれを見せたときにAIが何をやってくれるかがすぐに伝わりました。仕事だと文章の要約などで使っているかもしれませんが、似たように、アプリを作れるというのは分かりやすい形の1つではないでしょうか。発表会でお見せしたデモも、自分で作ったアプリです。ああいうふうに見せると、AIならこういうプロセスでアプリが作れると分かるので、非常によかったと思っています。
自分たちが利益を得るためではなく、ユーザーの生活がテクノロジーでどれだけ便利に、心地よくなるか。それをすてきな形でやりたいと思っているのがNothingです。AIは、それに一番合ったテーマです。アプリは、こういうものが欲しいと探していると時間がかかりますし、ようやく見つかったと思っても有料だったということもある。その時間で、欲しいと思っているアプリを自分で作ってしまうことができますし、気に入らなければ修正にも対応しています。
僕が作ったのは、ゴールデンウイークの天気だけを表示するウィジェットです。うちの妻が何回も「ゴールデンウイークの天気はどう?」って聞いてくるので(笑)。それだけをウィジェットにしました。こういったものは、ストアに行っても絶対にありませんが、自分で作ってしまえるというのは目からうろこでした。小さな喜びや小さな利便性かもしれませんが、結構大きなことだと思っています。
―― もう1つ、Essential SpaceもWeb対応することが明かされました。こちらも端末ではありませんが、PCからも使えると利便性が大きく高まるような気がします。
黒住氏 Essential Spaceは便利な反面、マルチデバイスでのアクセスがなかったので使い方が制限されています。Web対応で、そこが解決されていきます。他にもAIだとデバイス内とネットのサーチを融合したEssential Searchは便利に使えます。アルバムのフォルダに入れっぱなしにした写真も、キーワードだけでパッと出てきます。
―― 発表会では、アバンギャルディがパフォーマンスを披露しました。継続的に起用されていくのでしょうか。
テクノロジーに有機的な触感を加えていくのがNothing流
黒住氏 テクノロジーはややもすると無機的になりがちですが、そこに有機的な触感を加えていくというのがNothingのフィロソフィーの根幹にあります。そういうことを伝えられるクリエイターやアーティストはなかなかいない。チームのメンバーと話していた中で出てきたのが、アバンギャルディさんでした。表情も変えずに絶妙なシンクロを取りますが、中の人たちはすごく有機的なことをしている。そこがNothingのデザインやフィロソフィーに合っていると思いました。ソーシャルメディアも含めて、訴求力はすごく強いと思っています。
イベント後には動画も出しましたが、Nothing Japanが1万フォロワーぐらいなのに対し、3000件以上のコメントがきました。彼女たちのマネジメントチームも、Nothingをブランドとして評価してくださっているので、いいコラボができたと思っています。これからも、近いアーティストの仲間とはいろいろな局面でコラボしていきたいですね。
―― あまり注目されていないポイントかもしれませんが、Nothingのミッドレンジモデルはコストパフォーマンスもかなりいいと思っています。ただ、昨今、値上げしている端末も多くなってきました。今の価格は維持できるのでしょうか。
黒住氏 外部的な環境は、今も毎日のように変わっています。ですから、そこは読めないところです。ただ、ユーザーさんにとって不利益になるような便乗値上げは絶対にやりたくない。逆に、成長のために逆ザヤになっても売り続けることもやりません。ずっと据え置きとは言い切れませんが、変わるとも言い切れない状況です。
取材を終えて:直営店がブランドイメージを確立する鍵に
日本市場で急拡大しているNothingだが、その背景には、パートナーリングのうまさがある。4キャリアと同時に付き合うリソースが足りない中、まず楽天モバイルと手を組むことで実際に収益を4倍まで拡大できた。伸びている新興キャリアとのタッグであれば、コアなファンが多いブランドも維持しやすい。
Phone (4a)ではKDDIでの取り扱いが始まったが、いわゆるキャリアモデルではなく、オープンマーケットモデルを扱うau Flex Styleというのも絶妙なポジション取りといえる。同時に、2025年は投入を見送っていたaシリーズのProモデルを販売して、少しずつラインアップを拡大している。
Phone (4a)をKDDIで販売しつつ、楽天モバイルには空白地帯になっていたミッドハイの分野に上位モデルのPhone (4a) Proを導入している。販路の開拓とラインアップ拡大のミックスが、うまくハマっているように感じた。
こうした柔軟な戦略を取り続けられるのは、同社が日本市場を重視しているからこそ。一方で、キャリア販売だけだと、Nothingというブランドを伝えるにはやや力不足な側面もある。その意味では、年内に東京に開設される直営店が、認知度を上げつつも、ブランドイメージをしっかり維持するための鍵になりそうだ。
関連記事
2026年は“フラグシップ不在”のNothing それでも「Phone (4a)/(4a) Pro」で戦えると自信を見せる理由
Nothingがミッドレンジの最新スマホ「Phone (4a)」と「Phone (4a) Pro」を国内投入する。標準モデルはau、Proモデルは楽天モバイルが扱い、独自のシースルーやメタルボディーで差別化を図る。2026年はハイエンド不在となるが、FeliCa対応など日本市場に即した仕様で勝負を挑む構えである。「Nothing Phone (4a)/(4a) Pro」日本上陸 LEDで個性が光る5万円台からのスマホ、FeliCaにも対応
Nothingが4月15日に日本国内向けにスマートフォンの新製品を発表した。独自AI機能と進化した光のインタフェースを備え、標準モデルと上位モデルの2機種を展開する。両モデル共通のシームレスなAI体験を軸にしつつ、プロフェッショナルな要求に応える上位モデルには強力なカメラや専用素材を搭載した。Nothing、2026年にフラグシップスマホは発表せず「Phone (4a)」に注力 東京への出店計画も
英Nothingのカール・ペイCEOが、2026年の展望についてYouTube動画で語っている。2026年に新たなフラグシップスマートフォンの発表はしないと述べており、2025年に発売した「Phone (3)」をフラッグシップモデルとして継続する。その一方で「Phone (4a)」を大幅に進化させるという。「Nothing Phone (3a) Lite」レビュー 3万円台で驚異の質感、日本向け機能も完備したエントリー機の新基準
シースルーの背面、控えめに光るGlyphライト、モノトーンで統一されたUI。Nothing Phone (3a) liteは「スペック表の数値ではなく、手に持った時の心地よさで選ぶ」エントリースマホとして登場した。楽天モバイルなら3万2890円。「CMF Phone 2 Pro」「Phone (3)」から見える“本気”のNothing 黒住氏に聞くミッドレンジ/フラグシップの攻め方
Nothingのスマートフォン戦略について、日本事業を率いる黒住吉郎氏にインタビュー。ミッドレンジの「CMF Phone 2 Pro」は販売好調で、楽天モバイルの展開もプラスに働いている。フラグシップの「Nothing Phone (3)」はFeliCaを搭載しながら海外と同水準の価格を実現した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.