インタビュー

シャープが「AQUOS R11」で挑む“価格高騰時代”のスマホ戦略 「シェアを追うよりも既存ユーザーを大切に」(1/3 ページ)

シャープは「AQUOS R11」で従来の準ハイエンドから本格ハイエンドへ位置付けをシフトさせた。背景にはロイヤリティーの高い既存ユーザー層を重視しミドルレンジ以上の比重を高める同社の新戦略がある。SoCやカメラ性能の向上に加え独自の癒やし機能も備え、価格上昇以上の価値を訴求していく。

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 シャープが7月9日に発売した「AQUOS R11」は、これまでのAQUOS Rシリーズとやや位置付けが異なっている。これまでは、一般的なハイエンドのやや下を狙い、その分コストパフォーマンスを高めた機種だったが、AQUOS R11ではよりスペックを充実させ、正真正銘のハイエンドモデルになった。メモリやストレージの高騰などと相まって値段は上がってしまったが、そもそも端末のポジションが以前と変わっているというわけだ。

 背景には、シャープがスマホ事業の端末ポートフォリオや割合をシフトさせていることがある。これまではAQUOS wishシリーズなどのローエンドモデルが多かったのに対し、よりAQUOS senseやAQUOS Rを充実させ、ミドルレンジ以上の比重を高めていくというのが同社の今の戦略だ。AQUOS R11は、そのポジションチェンジを行った結果、以前よりも大きくスペックが上がっている。

 例えば、プロセッサはその1つで、AQUOS R11はQualcommの「Snapdragon 8s Gen 4」を搭載。8sながらも、ハイエンド向けの8シリーズになった。カメラも望遠を含めた3眼になり、ハイエンドモデルにふさわしいスペックになっている。そんなシャープの戦略やAQUOS R11を開発した経緯などを通信事業本部長の中江優晃氏と、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部長 清水寛幸氏に聞いた。

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シャープの新ハイエンドスマートフォン「AQUOS R11」

せっかく買うなら“ちゃんといいハイエンド”に方針変更

―― AQUOS R11が発売されました。これまでのAQUOS Rよりも高くなっていて、少々驚いたユーザーも多いと思いますが、今回は位置付けが違うんですよね。メモリやストレージの影響もあるとは思いますが。

清水氏 はい。実際、SoCを見ても1つ上のグレードになっています。今の、半導体の価格高騰や円安の中で、業界全体(の端末)が高価格化しています。その中でハイエンドモデルをお届けする際の付加価値を高めています。せっかく買うなら“ちゃんといいハイエンド”にというように、考え方をシフトしました。

 端末の特徴には、トレンドを押さえた性能の底上げや、独自の着眼点で搭載した2つの機能があります。前者の性能については、SoCがSnapdragon 8s Gen 4になっていたり、カメラに望遠が追加され、3眼ともライカ監修になっていたりします。ディスプレイも前回と比べてもかなり狭額縁になり、明るさは3000ニトから3600ニトまで上がりました。デザインについても、より一段洗練されたものにしています。基本性能が、ドンっと底上げされています。

 着眼点の1つが、AIです。AQUOSのAIは「アシスト」がコンセプト。すごいことができるけど、誰でも簡単に使えるという考え方です。確かにAIは画像編集などのすごいものはありますが、どう使っていいか分からないという方もいるとみています。今まで通りの使い方ですごいことができるというような機能を、カメラにいくつか盛り込んでいます。

 もう1つはカメラ部分のライトバーを使った「アカリウム」です。ハイエンドモデルはどちらかというと、忙しい方が使うことが多い端末です。そういった方々に、ひとときのリラックスタイムを提供したい。「自分を知ってよく生きる」というウェルビーイングの考え方は、同時に発売した「からだメイト Watch」に近いですね。たき火や水の音とともにリラックスしていただきたいと考えています。

中江氏 発表会では紹介しきれなかった機能もいくつかあります。例えば、ホーム画面をカスタマイズする「ホーム・デコ」という機能がそれで、その気になれば、自分の“推し活”に基づいたコンテンツでホーム画面を埋め尽くすこともできます。スマホの壁紙はアイコンで埋め尽くされてしまいがちですが、それを邪魔せずに作れる機能です。


中江優晃氏

―― 製品名がAQUOS Rのままなので、従来の延長線上だと思っている人も多いかもしれません。

中江氏 プロモーションで、しっかり打ち出さなければいけないと考えています。店頭やWebなどのお客さま接点で、いかに性能が上がっているかを訴求していくことが求められます。

ロイヤリティーの高いAQUOSユーザーの信頼に応えていく

―― 例えば、「Pro」なり「+」なりを付けることは検討されなかったのでしょうか。

中江氏 Proシリーズは、AQUOS Rの延長線上にはないと思っています。Proが付くモデルは、どこかシャープらしい技術とコンセプトが融合した最高級モデルとして温めていきたい。出てきた瞬間に他と違うようなもので、価格帯ではなく、コンセプトに付けている名前です。ただ、他社のスタンダードラインに対して今の名前が伝わりにくくなっているのであれば、どこかで見直さなければいけないのかもしれないですね。

―― メモリやストレージの価格が上がったからこうなったというわけではなく、もともとAQUOS Rシリーズのポジションチェンジを狙っていたのでしょうか。

中江氏 この戦略を決めたのは、(メモリやSSDの)価格が高騰する前でした。登場したときにこうなっていたので、そう見えてしまうかもしれませんが、時系列でいうと、メモリの問題が顕在化したのが昨年(2025年)10月ごろです。一方で、AQUOS R11のプランニングをしたのは、昨年の上期です。途中で路線変更もしていません。メモリやSSDが想定以上だったこともあり、当初の狙いより価格が上がってしまったということはありましたが、AQUOS R11はもともとそうしようと思っていました。

 Androidの世界は海外勢の攻勢もあり、日本メーカーはなかなか厳しい。ここでどうやって勝ち残っていくのかを考えたとき、今のAQUOSには700万のユーザー基盤があります。そのリテンション率は低くありません。AQUOSを使い続けるお客さまがいるということは、そこに応えていく必要があります。特にAQUOS senseやAQUOS Rのお客さまは、顧客基盤としてロイヤリティーが高い。その方々の信頼に応えていこうとしたとき、おのずと中高価格帯にアプローチしていく戦略になりました。

 自分たちを応援してくれる方を第一に考え、それを見ていいなと思った周りの方に入っていただく。思っていたところと価格がズレてしまった部分はありますが、それによってしっかり魅力や性能の改善を図っています。単純に今までと同じで価格が上がったわけではないというところはしっかりお伝えして、実感していただけるよう、市場の反響を見ながら(プロモーションなどに)フィードバックしていきたいと思います。

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