シャープが「AQUOS R11」で挑む“価格高騰時代”のスマホ戦略 「シェアを追うよりも既存ユーザーを大切に」(3/3 ページ)
シャープは「AQUOS R11」で従来の準ハイエンドから本格ハイエンドへ位置付けをシフトさせた。背景にはロイヤリティーの高い既存ユーザー層を重視しミドルレンジ以上の比重を高める同社の新戦略がある。SoCやカメラ性能の向上に加え独自の癒やし機能も備え、価格上昇以上の価値を訴求していく。
“ケータイのイルミ”を想起させる「アカリウム」はデザインのアクセントにも
―― 前世代までのAQUOS Rと比べると、デザインも変わりました。
清水氏 今までは角ばっていましたが、手当たりがよくなり、額縁も細くなりました。額縁の細さは技術の進化で、ハイエンドモデルとして先に進んでいくために必要なことの1つです。それに合わせて、デザインの雰囲気も変えています。
ただし、大きなコンセプトは変えていません。インテリアになじむことや、家具と一緒に使うといったところか発想する点は変わっていません。洗練させるというか、より品位を上げる考え方で、その辺がパネルの仕上げやアルミの輝度感、カメラリング周りなどに表れています。
今回、望遠を搭載したことでカメラの処理をどうするかは考えました。今までは、少しキャラクターを想起させるカメラリングでしたが、3つになるとキャラの目には見えない。そこを違和感なくしつつ、品位感を持たせるよう、カメラリングの自由曲線は変えずに黒で塗りつぶしてライトバーを置いて目のように見える表現をしています。
―― 目のように見えることは目指していたんですね(笑)。
清水氏 もともと、何かのキャラに見せたいということではなかったのですが、記憶に残るものとして、普通になってしまわないよう工夫しています。
―― そのライトバーが光るという発想も新しいと思いました。
清水氏 電話着信やアラームで光るという、機能的な価値もあります。ガラケー(旧来型の携帯電話)のときにはそういうものが多かったですよね。シャープも、イルミできれいに光らせるということをいろいろやってきましたが、それが今の若い人には新鮮に見えるようです。僕ら世代だと「ケータイのイルミね」となりますが、こんなふうに光るのが価値になります。
光がデザイン上のポイントにもなります。また、ウォッチやリングといったウェアラブルも一緒に商品化していく中で、ウェアラブルのウェルビーイングとひも付け、たき火のような光で癒されるということをやれば、シャープの商品としてまとまりがあっていいのではというところから、このような機能を搭載しています。
中江氏 1つの着眼点があり、そこに対していろいろな人のアイデアがどんどん接続していくうちに、ストーリー性が出てきました。1日のうちに画面がついているのは、多い人でも3時間ぐらい。大体の人は1時間ぐらいです。画面をつけていない状態でも役に立つというのは、確かにちょっと面白い。スマホを使っていると睡眠の質が悪くなるというように、まるでスマホが悪者みたいになっていますが、これなら集中力や睡眠状態をアシストできます。
それならトコトン突き詰めて、効果があるといえるところまでやってほしいと言いました。たき火の光り方はどうなのかということや、たき火の音とアカリウムの音では本当に同じ特性が出るのかということまで、こだわってやるなら面白いと思ったからです。
―― 実際、リラックス効果はあるのでしょうか。
清水氏 どういうふうに世の中にお伝えするかは、まだ練っているところです。
―― それは薬機法の関連で、でしょうか。
清水氏 はい。そういうところには、気を付けなければなりません。どういうふうにお伝えすればいいのかに、いろいろなハードルがあります。
5100mAhで2日間持つバッテリー、microSD非対応は丁寧に説明
―― バッテリーですが、最近では7000mAhぐらいの容量を搭載した機種も徐々に出てきています。今回、そこまでは難しかったのでしょうか。
清水氏 もちろん、大容量バッテリーにすることはできますが、2つ整理しなければならないことがあります。シリコンを含んだバッテリーはスペック上の容量を上げることができます。ただ、実際の電池の持ちにどれだけ寄与するのかは、もうちょっと慎重に考えなければいけないと考えています。スペックだけをどんどん上げていく考え方はしていません。
また、これも法律に関することになりますが、電圧が高いバッテリーを積んでいると、輸送に規制がかかることもあります。使える空港や輸送手段が限られてしまう。そういった観点でも、5100mAhという今の容量が一番いいと判断しています。
ただ、5100mAhでもバッテリーの持ちは十分いいと考えています。1日10時間使う試験もしています。動画4時間、音楽3時間、SNS2時間、ゲーム1時間というように、割とガッツリめに使っても、2日間持つという結果が出ています。容量の多い少ないではなく、ちゃんと使っても大丈夫ということはお伝えしていきたいですね。
中江氏 今回、アウトドアビューも見やすくなり、結果として消費電力も落ちています。通常の屋外であれば、アウトドアビューで(輝度を持ち上げて)発熱して使いづらくなるといった症状も起きにくくなっています。
清水氏 もともと見えていたところはあまり持ち上げないよう、スマートアウトドアビューという形で載せています。地味に役立つ機能だと思います。AIに近いことをやっていて、画面の中のヒストグラムを見て、暗いところと明るいところ分析し、ここは上げない、ここは上げるということを最適化しています。もちろん、動画のようにずっと画面が動いていても効かせ続けることができます。
―― 仕様面では、microSDスロットが非対応になってしまいました。
清水氏 microSDスロットは、「AQUOS R9 pro」も対応していませんでしたが、今回の方が反響は大きかったですね。コストのためというより、構造面と、microSDを使っている方がどのぐらいの容量を選んでいるのかも調べた上で256GBなり512GBなりを商品化しました。そのぐらいの容量があれば、(過去の機種に入れていたmicroSD内のデータを)丸ごと移していただけることが分かったからです。ちゃんと丁寧なご案内もしながら、microSDを外す判断をしました。
スペックページにはSD非対応でも安心して使うための説明をしたページへのリンクを張り、こういう手段でコピーができるということや、今のmicroSDを読み込むための動作確認済みのリーダーをご紹介しています。
シェアだけを追わず、今のAQUOSユーザーを大切にしたい
―― 今回、台湾でも発売しましたが、海外でこのぐらいのハイエンドはどうなのでしょうか。
中江氏 台湾は日本と市場的に似ていて、平均価格も近いかむしろあちらの方が高いぐらいです。AQUOS R11を安いと思って買う人はいないと思いますが、こだわって買うなら許容される価格ではないかと思いますね。
―― 逆に、シンガポールやインドネシアでは販売しません。
中江氏 インドネシアはやはり価格的にちょっと厳しい。ただ、それも今はという話です。GDPもすごい勢いで伸びていますし、5Gも急速に拡大しています。市場の端末もまだ4Gが多い。5G比率が上がってきた時には、考えられると思います。
シンガポールについては、ちょっとやり方や戦略を考えなければなりません。今、GalaxyやXiaomiが強いからです。シャープ全体のブランドバリューも含めてどうやっていくのか、全体的な戦略が求められています。
―― 製品の前に発表された事業戦略の際に、ミドルレンジ以上の割合を増やしていくというお話がありました。あれは、売り上げの話でしょうか。
中江氏 売り上げです。もともと、sense以上とsense未満で半々ぐらいでした。AQUOS wishシリーズの数が出ていたということですが、これが難しくなってくると思っています。市場を見るとお分かりの通り、今までのような売り方はできなくなってきています。各種部材が環境変化で高騰していく中で、すごく難しい分野です。
―― とはいえ、シリーズがなくなるわけではないですよね。
中江氏 はい。といっても法人のお客さまからは好評をいただいています。そこには、新しいwishでこたえていきたいですね。
―― あまり販売台数のシェアは追わないということにもなるのでしょうか。
中江氏 既存の方にいかにAQUOSを使い続けたいと思っていただけるかを主軸にしていきます。その結果として、シェアは多いに越したことはありません。ただ、シェアを追っていくと、従来のお客さま以上に新規の方を取ってくることも必要になり、全方位にやる必要が出てきます。シェアはいらないというわけではありませんが、シェアだけを追うよりも、今のAQUOSのお客さまを大事にしていきたい。もちろん、他社から来てくれればうれしいのですが、今はガマンの時です。世界の動きが激しい中で、まず地盤を固めていきます。
清水氏 その中での仕込みがウェアラブルになります。これをまず使っていただき、AQUOSと一緒だともっといいことがあるとご提案して、次はAQUOSがいいかも思っていただきたい。第1弾はロック画面での確認ですが、これからそういったことはどんどん増やしていきたいですね。シャープと言うつながりも含めて、もっとブランドの広がりを大きくしていきたいと思っています。
取材を終えて:ラインアップの全体像をどう伝えていくか
タイミング悪くメモリやSSDが高騰してしまったため、それを受けての値上げと思われがちだが、AQUOS R11は、意図的にカテゴリーをより上位にシフトさせた端末だった。プロセッサやカメラ、さらにはディスプレイなども、それに見合ったグレードのものが選択されている。これまで“ど真ん中のハイエンドモデル”が不在だったAQUOSだが、AQUOS R11でその穴が埋まった格好だ。
一方で、「11」というナンバリングを前モデルから継承していることもあり、ややその位置付けが伝わりにくいのも事実だ。現時点でミッドハイにカテゴライズされる端末がなく、ラインアップの全体像が見えていないのもその一因といえる。完成度は上がっているだけに、それをどうアピールしていくかが問われそうだ。
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