5分で分かる先週のモバイル事情:5月10日〜5月16日
ドコモの中村維夫社長が6月20日をもって退任し、新社長には現副社長の山田隆持氏が就任することが決定。横浜で開催されたワイヤレス・テクノロジー・パークでは、次世代通信のさまざまな新技術が披露された。携帯電話を手がけるメーカーの決算は、NECと富士通が好調だ。
中村維夫社長が退任、新社長は現副社長の山田隆持氏に――ドコモ
NTTドコモが役員の異動を発表した。代表取締役社長の中村維夫氏は、6月20日をもって退任し、新社長には現代表取締役副社長の山田隆持氏が就任する。
また、代表取締役副社長の平田正之氏は、副社長職を退任し、情報通信総合研究所に入社予定。取締役常務執行役員の辻村清行氏と鈴木正俊氏、顧問の松井浩氏は代表取締役副社長に就任する予定となっている。
iモードの立役者として知られ、退社が噂されていた夏野剛氏は、執行役員を退任。セガサミーホールディングスが同氏を社外取締役として迎えることが決まっている。
ドコモのHSDPA網は14Mbpsに対応済み――ワイヤレス・テクノロジー・パーク2008
5月13日、14日の両日、パシフィコ横浜でワイヤレス・テクノロジー・パーク2008が開催され、キャリア各社が次世代無線通信の取り組みについて説明した。
同イベントで講演を行ったドコモの無線アクセス開発部部長、尾上誠蔵氏は、同社のFOMAハイスピード(HSDPA)を支える基地局設備は、2006年から導入を開始したモデルでは最初からHSDPAに対応しており、スペック上は下り最大14Mbpsまでサポートしていると説明。現在の基地局のハードウェアは「最初から3GPPで規定されている14Mbpsに対応している」(尾上氏)とし、端末の進化に合わせて、通信速度を順次上げていく計画だ。
スーパー3G(LTE)については、コアスペックが2007年12月に承認されており、ドコモでも2007年7月から実証実験を開始。20MHzの帯域で4×4のMIMOを使い、下りで最大300Mbps、上りで最大50Mbpsの通信が可能なシステムを用いてさまざまな検証を行っているとした。具体的な導入時期については明言を避けたが、2009年末までに開発を完了させ、商用展開が可能な状態にすることを目指すという。
展示会場では、瞬時に表示が切り替わる「マルチ表示キートップ」や、PUCCを活用したホームネットワークのデモが披露された。
ジャ博士が来日、チップセット戦略を説明――QUALCOMM
クアルコム ジャパンは5月15日、米QUALCOMMのCOO兼Qualcomm CDMA Technologies Group(半導体部門)プレジデント、サンジェイ・K・ジャ博士の来日に合わせ、半導体事業の戦略説明会を開催した。
ジャ博士は、CDMA2000 1Xがこれからも進化し続けること、「Snapdragon」を搭載した、通信機能を備える小型デバイス(Pocketable Computing Device/Mobile Computing Device)が間もなく登場すること、CDMA2000とW-CDMA(UMTS)の両方に対応した通信モジュール「Gobi」を提供する計画があることなどを明らかにした。
Snapdragonは、プロセッサコアに1GHzオーバーで動作するScorpionを採用した統合チップセットで、無線通信によるインターネット接続が可能でコンパクトなデバイスを開発するのに適している。600MHz動作のDSPやGPS、AMD製のグラフィックスコア、通信機能、HDビデオのデコーダー、ディスプレイコントローラーなどを備え、3.7〜4.5インチのワイドVGAクラスのディスプレイを搭載し、HD解像度の動画鑑賞や音楽鑑賞やGPSを利用したナビゲーション、ゲームなどもできるうえ、ストレスなくWebブラウズを行えるような機器を開発できるという。
OSはBREWに加え、Windows MobileやLinuxなど、さまざまなオープンOSに対応。すでに日本、台湾、韓国および米国で、複数のメーカーが15機種ほどのSnapdragon搭載端末の開発を進めており、「2008年第4四半期から2009年第1四半期にはSnapdragon搭載製品の最初の製品が出てくる」(ジャ博士)としている。
インテルのAtomに対する優位性については、「Snapdragonの特徴は、高度なインテグレーション(統合)をしていること。特にマルチモードの3G通信機能を持っていることが大きな違いといえる。また消費電力の少なさも非常に競争力が高い」と話している。
存在感を示し始めた海外端末メーカー――オープンなインターネットが魅力の「X02NK」
5月13日、ノキア・ジャパンがソフトバンクモバイルの同社製端末「X02NK」の製品説明会を開催した。
「N95」をベースに開発されたこのモデルは、オープンなインターネットを楽しむための多彩な機能を搭載し、それをパケット定額プランで楽しめるのが特徴。撮った写真をワンクリックで「mixi」や「Vox」に投稿できるシェアオンライン、コンテンツの検索からダウンロード、再生までをX02NK単体で行えるポッドキャスト、AAC、MP3、WMA(Windows Media DRM)の再生に対応するミュージックプレーヤー、世界で使えるGPSナビ機能、JavaScriptやRSSフィードに対応したSafariベースの携帯向けのPCサイトブラウザ、無線LANとキャリア網のいずれの通信環境下でも利用できるVoIPなどが搭載され、日本の端末にはないインターネット体験を実現した(記事1、記事2参照)。
この端末のコンセプトについてノキア・ジャパン デバイスGTMシニアマネージャの大塚孝之氏は「(ユーザー参加型メディアの)CGMをいかに充実した形で楽しんでいただけるかに注力した」と説明。「今までの“家に帰ればできる”ことや、“PCならできる”ことが、出先でも時間や場所を選ばずできるようになるのが、この端末の大きな特徴」(同)とアピールした。
LG電子が日本市場向けの「PRADA Phone by LG」を発表するなど、このところグローバルで展開する端末メーカーが日本市場で存在感を示し始めている。通信ジャーナリストの神尾寿氏は「市場環境、キャリアのビジネスモデル、そして海外メーカー自身の変化などにより、日本市場の“垣根”は、存在はするもののそれほどの参入障壁にならなくなってきている」と分析している。
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富士通とNEC、携帯事業が好調
携帯電話の開発を手がけるメーカーが相次いで決算を発表した。
NECが5月15日発表した2008年3月期の連結決算は、携帯・PC事業やエレクトロンデバイス事業が営業黒字化し、営業利益は前期比124%増の1567億円となった。携帯電話端末事業は黒字化し、今期は台数拡大に向けてソフトバンクモバイル向けにも端末を供給する計画だ(記事1、記事2参照)。
富士通の2008年3月期連結決算は、営業利益が前期比12.6%増の2049億円で売上高は4.5%増の5兆3308億円。サービス事業やPC/携帯電話を中心に、全セグメントで増収を記録し、営業利益率は0.2ポイント改善して3.8%となった。
なお、ソニーは2008年3月期決算の説明会で、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ向け携帯電話の国内生産を縮小する方針を明らかにした。大根田伸行CFOは、この影響でソニー全体の売上高のうち、国内分は前期を若干下回るという見通しを示した。
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