第7回 「月々安価」も、使い方次第で意外に変化──ソフトバンクとイー・モバイルの場合:ケータイの「分離プラン」を改めて考える(2/2 ページ)
ドコモとauの料金プランと異なり、同じキャリア間の通話を無料とするプランを用意するソフトバンクモバイルとイー・モバイル。ソフトバンクの「ホワイトプラン」、イー・モバイルの「ケータイ定額プラン」がどのようなものかを“月の通話時間”を軸にして改めて検証してみよう。
業界最低料金で音声端末でも攻勢をしかけるイー・モバイル──ただ、“ただし”も多い
同じキャリア間で無料通話を可能とし、基本料金の安さという点でソフトバンクモバイルのライバルとなってきたのがイー・モバイルだ。サービスエリアの広さはまだ及ばないものの(ちなみにドコモ網によるローミング時は、イー・モバイル同士でも無料通話の対象にならない)、ある程度基地局展開が進んでいる都市部のユーザーであればどちらを選択するか悩む人もいるだろう。イー・モバイルのキャリア間無料通話は時間制限がない魅力もある。
イー・モバイルの音声端末向けの主力料金プランは「ケータイプラン」と、2009年2月7日に開始した「ケータイ定額プラン」の2つ。ケータイプランの基本料金は1000円/月だが、キャリア間無料通話はプラス980円/月の「定額パック24」に加入して実現するので、実質は1980円/月になる。
一方のケータイ定額プランは780円/月でキャリア間無料通話を利用できる。ただ、ケータイプランが追加料金なしでパケット定額に対応するのに対して、パケット定額を利用するには最低1000円/月の段階定額制「データ定額オプション」への加入が必要になる。実はやや複雑なので、詳しくは下記の表を参考にしてほしい。
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ケータイ定額プランは、「通話の利用が中心」の場合は確かに割安感がある。例えば「通話割引オプション」を組み合わせると、基本料金1095円/月で他社携帯電話への通話料金が9.45円/30秒、固定電話への通話が5.25円/30秒とする通話料金がなかなか魅力的で、利用シーンによってはソフトバンクモバイルのホワイトプラン+Wホワイトより基本料金も通話料金もリーズナブルだといえる。
その反面、メールや携帯サイト閲覧、PCのデータ通信などを含むパケット料金まで考えると、ケータイ定額プランよりケータイプラン+定額パック24にする方が安価になる場合が多くなる。このプランの方がパケット単価が安いので、パケット定額の上限額に達しにくいメリットもある。
さらに、純粋に料金面だけの話ではなくなってしまうが、イー・モバイルのケータイ定額プランは契約種別として「ベーシック」と「にねん」、「にねん+アシスト500/同1400/同1800(アシスト***については、関連記事を参照)」のいずれかから選ぶ仕組みである。この場合、2年契約での割り引き合計額が2万4000円となる「ケータイプランの新にねん」と比べると、合計1万6800円に減額される。割り引きの減額分を補う形でアシスト500が追加されたと予想される。
例えば安価に販売する音声端末「H11HW」のベーシック価格は2万9800円(2009年2月現在 直販サイト価格)だが、新にねんで契約し、購入時に初期費用として5980円を支払えば新にねんの割り引き分で相殺されるので、月々の端末代支払い額は発生しない計算になる。同じ端末でケータイ定額プランに当てはめると、購入時の支払い額が1万3180円とやや高めになるか、(購入時の支払い額が1180円に下がる代わりに)アシスト500による実質の分割端末代金500円を毎月支払うことになる。2年単位の合計額といったようにトータルコストで考えると、場合によっては割安にならない要素も含むところは注意すべきポイントだといえる。
このように、月額料金が安いキャリアでも結果として割高になる可能性があり、逆に月額料金が高くてもお得に使える場合もある。今後、通信キャリアや料金プランを選ぶ、あるいはプランを変更する場合は、例えば利用料金の単価だけでなく「通話するか否か」「何分ほど通話するか」「主にどのキャリア宛てに通話するか」も考慮するポイントの1つに考えてみてはいかがだろうか。
(続く)
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