キレイを簡単に、でも機能は“本家”級――「Cyber-shotケータイ S001」の進化と変化:開発陣に聞く「Cyber-shotケータイ S001」(前編)(2/2 ページ)
au向けCyber-shotケータイの第2弾「S001」は、8.1Mピクセルカメラや本格的な撮影機能を搭載し、また1歩デジタルカメラに近づいた端末だ。外観も「W61S」から大きくリニューアルし、ラグジュアリー感が強調された。S001が目指したものとは――ソニー・エリクソンの開発チームに聞いた。
マクロ撮影やテキストメモも自動で――「おまかせシーン認識」
“最先端の機能”として注目したいのが、ケータイ向けには初めて搭載した「おまかせシーン認識」だ。この機能を設定して撮ると、「夜景&人物」「夜景」「逆光&人物」「逆光」「人物」「風景」「マクロ」「テキストメモ」の8つのシーンをカメラが判断し、明るさやホワイトバランス、フォーカス、フラッシュなどを自動調整してくれる。「“誰でも簡単に撮れる”というコンセプトに合う機能として、おまかせシーン認識の要望はかなり高かった」と山本氏は話す。
本家Cyber-shotもおまかせシーン認識を搭載しているが、こちらはハードウェアで処理をしており、ソフトウェアで処理をするS001とは仕様が異なる。ただしシーン認識の精度は「パラメーターを調整したので差はほとんどない」(山本氏)が、ソフト処理だとシーン認識から撮影までやや時間がかかるという。「この点は改善の余地がありますね」(山本氏)
(おまかせシーン認識の)シーンの種類はCyber-shotとS001では異なり、「三脚夜景」はCyber-shotのみ、「テキストメモ」はS001のみが利用できる。「ミーティングで使ったホワイトボードの内容をケータイで撮ってシェアする、といった使い方をしている人には、カメラまかせでメモを撮れるのは便利だと思います」(冨岡氏)
ちなみに、S001では「夜景」「人物」「風景」は「シーンセレクション」から手動でも設定できるが、「夜景&人物」「逆光&人物」「逆光」「テキストメモ」はおまかせシーン認識でのみ利用できる。
「マクロ」も「フォーカス設定」から手動設定できるが、おまかせシーン認識なら自動でマクロ用にピントを調整してくれる。「Cyber-shotはコンティニュアスAFを搭載しているので、プレビュー中に自動でピントを合わせてくれますが、S001はシャッターボタンを半押ししてピントを合わせます。20センチ以内に被写体がいると、だいたい自動でマクロモードに切り替わります」(山本氏)
一方、W61Sで搭載した、最短3センチまで近づいて撮影できる「スーパーマクロ」はS001にはない。これは「光学ズーム用のレンズを搭載しなかったため」(山本氏)だという。
冨岡氏によると、「マクロ撮影時に現れるチューリップマークの意味が分からないユーザーさんが意外と多い」という。「(おまかせシーン認識で)マクロ撮影もフルオートにすることで、失敗写真を減らすことを第一に考えました。S001は最短10センチまで寄って撮影できます。10センチはデジカメやケータイでは一般的なマクロ撮影の距離ですし、30センチ程度しか寄れないケータイもあるので、10センチを最低限実現できればと思いました」(冨岡氏)
とはいえ、スーパーマクロの見送りを惜しむ声は多数挙がっているようで、「今後はこうした要望も聞きながら考えたいですね」と冨岡氏。スーパーマクロが復活する可能性もありそうだ。
「おすすめBestPic」も新たに搭載、“もっさり”も解消
約1秒間に7枚を連続撮影して、その中から笑顔がキレイに撮れた写真1枚を自動で選ぶ「おすすめBestPic」も新たに搭載した。これはW61Sの「BestPic」を進化させた機能だ。BestPicは連写した9枚から気に入った写真を手動で選ぶ機能で、自動では選ばない。そのためか、「もっとBetPicを気軽に使ってもらいたかった」と、ソフトウェア担当の間下氏は振り返る。そこで、ユーザーが意識しなくても美しい写真を撮れるよう“おすすめ”の要素を加えた。
「7枚の中からより美しい絵(よい絵)を、アルゴリズムを元に選びます。その際、人の顔や笑顔の度合い、子どもの顔を優先するよう重み付けをしています。ピントの合い具合は精密には判断できませんが、“ピンぼけしている笑顔”よりは“鮮明に写っている笑顔”が優先されます」(間下氏)
なお、おすすめBestPicの対象となる被写体は人間のみで、犬や猫などの動物は対象外となる。「動物は、あらゆる犬種と猫種を考慮しないといけないので難しいですね。とはいえ、どこかのタイミングで実現させたいとは考えています」(冨岡氏)
笑顔を検出する「スマイルシャッター」と、最大3人の顔を検出する「顔キメ」もW61Sから進化し、機能名から“Lite”が省かれた。これは「パフォーマンスと精度(認識率)が、Cyber-shotとほぼ同等といえるレベルに追いついたため」(間下氏)で、より“速く”“正しく”認識できるようになったことを意味する。
キーレスポンスをはじめとする“速度”関連のパフォーマンスの向上も図られている。W61SはKCP+初期のモデルということもあり、カメラの起動やキーの反応など、やや“もっさり”した動きが目についたが、S001では徹底的に改善した。
「W61Sは、いかに機能をたくさん盛り込むかを最優先したので、チューニングの部分は完全と言えるレベルではありませんでした。そこで、S001ではカメラの起動時間、撮影時間、保存時間、AFロック速度など、基本動作のすべてを向上させました。その結果、W61Sと比べるとかなり高速になりました」(間下氏)
後編では、デザインの意匠や有機EL搭載の苦労などを取り上げる。
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