「Xperia Z」 日本の技術が可能にしたソニー独自の“中身”を分解して知る:バラして見ずにはいられない(3/3 ページ)
名前だけで勝負できるメーカーとなると、本当に限られてくる。その数少ないメーカーの1つがソニーだ。Xperia Zが抜群の人気を誇るその理由を中身から見ていこう。
日本のユーザーが必要とする機能を実現するチップ群
日本の携帯電話やスマートフォンに必須の機能が赤外線通信だ。今のように無線LANに対応していないだけでなく、携帯電話基地局が少なく室内で圏外となりやすかった時代でも、赤外線通信で端末を近づけてアドレスを交換してきた。赤外線通信は、IrDAと呼ぶ規格を採用しており、1メートル程度の距離で毎秒最大16メガビットの通信が可能だ。Xperia ZでもIrDAをサポートしており、この通信ポートはローム「RPM975」で制御している。ロームといえば電源ICメーカーとして有名だが、いまでは、IrDA赤外線通信ポートやディスプレイの光量を最適化する環境センサのメーカーとして携帯電話やスマートフォンにおける採用例も多い。
基板で最も大きな部品の1つがDRAMだ。プロセッサと連動して動くため、通常はプロセッサの上に重ねるPOP (Package on Package)方式で実装している。13MピクセルカメラやフルHD画面を構成する膨大な画像データに対応するため、タブレットデバイスのハイエンドモデルにおけるDRAM容量は増加しているが、狭い基板で容量を筯やすためには、大容量タイプのメモリチップが必須になる。Xperia ZのDRAM容量は2Gバイトで、分解した機材ではエルピーダのチップを実装していた。
通信部のパワーアンプには、ルネサスエレクトロニクスと思われるICを2基搭載している。データシートの存在は確認できていないが、部品の位置、チップ表面の印刷で使っているフォントと番号のパターンから推定した。ワンセグICもルネサスエレクトロニクス製の可能性が高い。チップ表面印刷のパターンは、旧NEC系の製品である可能性を示唆している。ワンセグICがルネサスエレクトロニクス製であるとすれば、この分野でNECと技術ライセンス契約を結んだ米国のMaxLinearが開発した技術を受け継がれている可能性もある。
通信や各種制御に不可欠な水晶振動子でも日本の製品は健在だ。Xperia Z SO-02Eには7基のデバイスを搭載しているが、その5基が日本製だった。プロセッサ用はセイコーエプソンで、無線LANとBluetooth用、そして、電源管理ICが集まる場所に京セラ、NFCとRFID用は村田製作所、ワンセグ用に東京電波を採用している。なお、ピンク色が目立つチューニング用音叉は、スイスのMicro Crystalであり、時計で有名なSwatchグループに属する。
ディスプレイは基板ガラスの印刷から、ジャパンディスプレイ製と思われる。画素の形状や周辺部の回路のパターンを観察すると、東芝のVA(Vertical Alignment=液晶物質の並びかたの1つ)方式の液晶技術で製造している。VA方式の特徴は、コントラストが優れていることで、白い部分は鮮やかに、黒い部分はより黒く表示できる。一方で視野角が狭いという欠点もある。
高品質であるだけに価格が高くなってしまう
黒基調の質感と薄型で高級感のある外観、大型ディスプレイ、クアッドコアCPUにLTE対応、ワンセグ、電子決済機能に防水対応など、Xperia Zには最高の機能と技術が詰まっている。ソニーのロゴも購買意欲を郄めてくれる。しかし、価格を知ると二の足を踏むかもしれない。購入方法や新品と中古の違い、店頭におけるキャンペーンなどで大きく変わってくるが、NTTドコモのWebページにある新規契約の一括支払いの場合、7万7280円になる。分割払いでは、さまざまな割引を適用して、最終的な実質負担金を2万9400円まで抑えることができるものの、月額基本料やスマートフォンには不可欠のパケット定額料などを加え、端末料金の割賦支払を考慮すると1カ月の支出は1万円近くになる。
スマートフォンは、高い性能と多くの機能を導入することで、それまでの携帯電話から大きく利便性が向上した。このおかげで、性能と機能を重視する上級者をはじめとする多くのユーザーを獲得した。上級者が主要なユーザーだった当時は、価格が高くても購入してくれた。
しかし、今やスマートフォンの進歩はピークに達し、ユーザーも上級者だけでなく、デジタルガジェットにそれほど興味を持たないユーザーが主流になりつつある。自分はハイエンドモデルが本当に必要なのかという点も含め、ユーザー側の選択肢が増えている中で、ハイエンドモデルがこれまでのように売れ続けるということはなくなってくるかもしれない。そうなると、ミドルレンジからローコストモデルでXperia Zのような品質を実現することも必要になってくるのではないだろうか。
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