「ドラクエ」関連アプリが快進撃、スマホはゲーム市場の“主役”となるのか?:佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/2 ページ)
初代ドラクエを配信したスクエニのポータルアプリが350万ダウンロードを記録し、有料アプリ「ドラクエVIII」も異例の大ヒットとなった。スマホはゲーム市場の“主役”になるのだろうか。
スマートフォンが“壁”を崩し、逆の流れを作り始める
だがそうした“壁”も、スマートフォン向けゲームの人気が高まったことによって、低くなってきたといえる。“アプリ”の存在によって開発の自由度が高まり、本格的なゲームを提供しやすくなったことから、シンプルなゲームだけでなく、ゲーム性の高いタイトルが受け入れられるようになってきた。
その動きを象徴しているのが、パズル&ドラゴンズの人気であろう。“合成”や“ガチャ”などモバイルソーシャルゲームの要素を踏襲しながらも、スマートフォンアプリならではのゲーム性を取り入れつつ、手軽に遊べる内容を実現。このことがモバイルのゲームプレイヤーだけでなく、コンシューマーのゲームプレイヤーにも受け入れられる要因につながったといえる。
同タイトルのヒットが影響してか、従来のようなゲーム性のある内容のタイトルが、モバイルでも受け入れられるようになった。それゆえ従来モバイルを苦手としていたコンシューマーゲームメーカーが技術を生かせるスマートフォン市場に積極的に参入し、高い人気を得るケースも増えてきている。「チェインクロニクル」や「ぷよぷよ!!クエスト」などでスマートフォン市場で存在感を高めているセガが、その代表的な存在と言えるだろう。
さらに面白い動きとして上げられるのは、従来とは逆に“モバイルからコンシューマーへ”という動きが見られるようになったことだ。最近ではモバイルで高い人気と売上を上げた企業が、コンシューマーゲーム機のゲーム以上にテレビCMを打つなど、積極的なプロモーションを実施。これにより人気と注目の度合いを高めたゲームをコンシューマーゲーム機向けに横展開し、人気を獲得するケースが出てきているのだ。
その傾向を顕著に示したのが、パズル&ドラゴンズをニンテンドー3DS向けにして提供した「パズドラZ」である。2013年12月に発売された同タイトルは、パッケージ版の国内出荷数が累計100万本を突破するなど、大ヒットを記録した。無論、パズル&ドラゴンズとパズドラZは全く同じ内容という訳ではないのだが、スマートフォンから派生したタイトルがコンシューマーゲーム機でもヒットを生んだというのは、非常に大きな意味を持つ出来事だったといえるだろう。
スマートフォンが“真の主役”になるには?
実はパズドラZ以前にも、モバイルから派生したゲームが人気を獲得するケースが、ダウンロードコンテンツでは増えつつあった。例えば「拡散性ミリオンアーサー」は、2013年4月にPlayStation Vita向けにも提供され、10万を超えるユーザーを獲得したという。またフィーチャーフォン向けのインディーズゲームとして誕生した「チャリ走」(スパイシーソフト/LIRENEO SOFT)なども、ニンテンドー3DS向けに「チャリ走DX」「チャリ走DX2 ギャラクシー」を配信し、売上ランキングの上位に入るなど高い人気を獲得している。
モバイルのゲームがコンシューマーゲーム機向けに横展開できるようになった背景には、やはりフィーチャーフォンからスマートフォンに移行したことで、ゲーム機に匹敵するゲームを提供できるようになったことが大きい。それだけに今後、モバイルでヒットしたゲームのユーザー層拡大を狙い、特に同じ携帯性のある携帯ゲーム機向けを中心に、横展開していく流れは強くなっていくだろう。
もしコンシューマーゲーム機とスマートフォン、双方の主従関係が逆転するようになれば、ゲームの主役という座も変化する可能性が高い。現在のコンシューマーゲーム機の礎を築いた任天堂の「ファミリーコンピューター」も、発売当初は「ドンキーコング」などアーケードゲーム機のゲームが家庭で遊べることを売りとしており、アーケードゲームが“主”、コンシューマーゲーム機が“従”という関係にあった。だがファミリーコンピューターが家庭に広く浸透してコンシューマーゲーム機の市場が広がり、家庭用ゲーム機ならではのヒットタイトルが生まれていったことで、その後の両者の関係は大きく変化した。
スマートフォンも当時のファミリーコンピューターと同様、すでに裾野の広いユーザー層と高い市場性を獲得しており、主役の座を獲得するための素地は整ってきたといえる。それだけに“スマートフォンで人気のタイトルをコンシューマーゲーム機に展開”という流れが強まり、それがユーザーに望まれるようになれば、スマートフォンがゲーム市場において真の主役を奪うことになるのかもしれない。
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