「5G」のめどは付いた――2020年のトラフィック1000倍増に挑むドコモ:ワイヤレスジャパン2014(2/2 ページ)
2014年度中に下り最大225Mbpsの「LTE-Advanced」を開始するドコモ。2020年には1000倍にも増えると予想されるトラフィックをさばくため、さらに第5世代通信規格のシミュレーションも進めている。
LTE/LTE-Advancedの先にある第5世代の通信規格とは
LTEネットワークを完成させつつあるドコモは、すでに次世代規格への取り組みも進めている。徳広氏は「2020年のトラフィックは2010年の1000倍になると予測されている。ネットワークのキャパシティを上げるには、通信方式を入れ替えなければならない。そのために第4世代であるLTE-Advancedを準備しており、第5世代(5G)の議論も進んでいる」とその必要性を説いた。
LTE-Advancedでもっとも特徴的な技術が、キャリアアグリゲーション(CareerAggregation:CA)だ。これは離れた周波数を同時に使って高速化するもので、徳広氏は「離れた2車線を4車線に見たてて使うようなもの」と説明する。ドコモは今年度中に、800MHz帯と2GHz帯、1.5GHz帯と2GHz帯の2つを組み合わせたCAを提供する計画で、通信速度は下り最大225Mbpsにアップする。
また広いエリアをカバーするマクロセルの上に高速通信を受け持つマイクロセルを追加するヘテロジニアスネットワーク、複数のアンテナを同時に使って通信を高速化するMIMOの拡張、基地局が連携することで高速通信を継続するセル間協調伝送技術なども使われる。徳広氏は「第4世代(LTE-Advanced)は技術的なめどが付いており、オンゴーイング(現在進行形)だ」と述べ、間もなくスタートできることを改めて強調した。
LTE-Advancedの後に控えるのが第5世代で、より高速な通信を実現するために高い周波数を使うのが特徴だ。「電波の周波数が高くなると高スループットで高速通信ができるが、遠くに飛びにくくなる。そこで従来の周波数と重ねることでエリアを構築する。そのために基地局はどんどん小さくなる」(徳広氏)という。
第5世代は、LTEやLTE-Advanced(いずれもOFDMAと呼ばれる技術が使われている)を拡張するか、まったく新しい通信技術(New Radio Access Technology:New RAT)を採用することで、通信速度を飛躍的にアップさせる方針だ。「(第5世代なら)モバイル通信でも4K映像のストリーミングが可能になる」(徳広氏)というように、よりリッチなサービスを提供できると期待されている。
その一方で、これから爆発的な普及が見込まれているM2MやIoT(モノのインターネット)を支えるために、低消費電力化や低コスト化、高信頼性も求められている。相反するような要求をクリアするためにドコモでは、世界の主要ベンダーと第5世代に関する実験で協力することを合意。2014年中に神奈川県横須賀市のドコモR&Dセンターなどで屋内実験を開始し、2015年以降に屋外実験を開始する予定だ。
そして効率的で信頼性が高いインフラ作りに欠かせない仮想化されたコアネットワーク(Software-Defined Network:SDN)についても、主要なベンダー3社との実証実験に成功している。徳広氏は、「従来(のコアネットワーク)は専用ハードウェアに専用のソフトを搭載して提供していた。仮想化では汎用ハードに仮想化レイヤーを通じてソフトを載せ、いわば上半身と下半身を分離する。ハードになにか障害が起きても、その上位レイヤーでサービスを提供できる」と説明した。
現在の約1000倍というトラフィックに対応するための第5世代通信規格。徳広氏は「シミュレーター上では500Mbpsから1Gbpsのスループットが出ており、2020年に現在の1000倍になるトラフィックを賄うためのめどは付いている」と話し、「2020年の東京オリンピックに合わせて、世界最高水準のサービスを提供したい」と講演を締めくくった。
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