コードは世界を変える?――未来を創るApple 4つのプラットフォーム: 神尾寿のMobile+Views(2/6 ページ)
WWDCは「イノベーションとテクノロジーの震源地」である。世界中から多くの開発者が集まり、彼らに向かって「Appleの目指す未来」について語られる。WWDC 2016の会場で何が語られ、どのような未来が示されたのか?
Apple Watchを生まれ変わらせる「watchOS 3」
Appleには現在、iPhone/iPad、Mac、Apple Watch、Apple TVなどカテゴリー別に4つのプラットフォームがある。今回のWWDCで真っ先に取りあげられたのが、Apple Watch向けのwatchOSである。
watchOS 3はアプリの内部処理やUIデザインなどが大幅に見直されており、概略の説明を聞き、デモンストレーションを見るだけでも、かなり大規模なバージョンアップであることが分かる。
なかでも使い勝手を大きく向上させるのが、アプリ実行の高速化とバックグラウンドでの情報更新機能だ。
「watchOS 3でアプリの起動処理は最高7倍まで高速化される。またバックグラウンドでの情報更新を行えば、アプリが表示されてからデータの読み込みで待たされるようなことはない。さらに(Apple Watch右側にある)サイドボタンを押すと、よく使うアプリを表示して素早く起動できるDock機能を搭載する」(watchOS エンジニアリング担当バイスプレジデントのケビン・リンチ氏)
Dockの使い方は、iPhone/iPadのアプリ利用履歴によるタスク切り替えに近い。Apple Watchの利用シーンではいちいちアプリをメニューから選んで起動するのは面倒なことが多いので、Dock機能が実装されたら、利用頻度はかなり高くなりそうだ。
UIデザイン関係では、iOSと同じくコントロールセンターを搭載。モード切替などよく使う機能は全てここにまとめられており、使い方もiPhone/iPadと同様となるという。また、メッセージが届いたときの返信機能では、定型文のほか、手書き文字認識で任意の文章が書ける「Scribble」という機能が用意される。ただし、これは現時点で発表されたのは英語と中国語だけであり、日本語に対応するかは不明だ。
機能面でも、watchOS 3は多くの進化がある。
ヘルスケア機能では活動量計のアクティビティーのデータを家族や友人と共有する「アクティビティー シェアリング」の機能が追加された。これを使うことでシェアした相手と活動量を競ったり、そのアクティビティーのデータを見てメッセージを送るといったことが簡単にできるようになっている。
一方、ユニークなヘルスケア機能としては、深呼吸を促す「Breathe」が追加される。ヨガを見れば分かる通り、呼吸を整えることはとても健康によく、Breatheでは本体を振動させるタプティックエンジンと心拍モニターを組み合わせて、正しいリズムでの深呼吸を促すという。
そしてwatchOS 3の新機能として、筆者が「これはすばらしい!!」と感じたのが、緊急通報機能の「EMERGENCY SOS」である。これはApple Watchのサイドボタンを長押しすると表示・実行される機能であり、その名の通り、非常時に緊急通報を行う。例えば米国では911に位置情報付き緊急通報が行われるほか、事前に登録された家族にも緊急通報した位置が通知されるのだ。また、このモードでは「MEDICAL ID」としてApple Watchに事前登録したヘルスケア情報と心拍数も通知する機能があり、緊急通報を受ける当局や病院と連携すれば、緊急通報や救命医療の現場でかなり役立ちそうだ。
今回の発表では、EMERGENCY SOSの対応国は米国と香港が明かされたのみ。しかし日本でもクルマ向けでは、トヨタ/レクサスが使用する「HELPNET」や、BMWの「BMW SOSコール」、ボルボの「Volvo On Call」など、類似の緊急通報サービスが普及している。的確かつ効率的な緊急通報システムの普及は救命率の向上に大きく貢献するため、日本向けのwatchOS 3でもぜひEMERGENCY SOSの導入に期待したいところだ。
以前、筆者がwatch OS2のレビューでも書いた通り、Apple Watchは、数あるApple製品の中では「成長中」のカテゴリーのものだ。watchOS 2で普及期の階に足を踏み入れたという感じだったが、いよいよwatchOS 3で実用性が大きく向上し、「多くの一般ユーザーに勧められるもの」になりそうである。watchOS 3によってApple Watchは、生まれ変わりに近い進化を遂げそうだ。
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