「下り440Mbpsほぼ全国化」+「規制ルール変更」のWiMAX 2+に死角なし?:5分で知る最近のモバイルデータ通信事情(2/2 ページ)
UQコミュニケーションズの「WiMAX 2+」が、下り最大440Mbpsエリアをほぼ全国に拡大し、合わせて直近3日間の通信量にもとづく通信速度規制のルールも変更しました。スペック的にはより万全になったように見えるWiMAX 2+。本当に死角はないのでしょうか?
モバイルルーターで高速通信するには設定が必要
先述の通り、最新のWiMAX 2+ルーターでは下り・上り共に最大通信速度が向上しています。しかし、WX03とW04については、初期状態のまま使うと最大速度で通信できません。具体的には、標準では「ノーマルモード」に設定されていて、下りの最大通信速度が220Mbpsに制限されているのです。これは、4×4 MIMOとCAを同時に使うと電力消費量が増え、結果としてバッテリー持ちが悪くなってしまうからです。
もしも、WX03とW04の“本気”を体感したいなら、省電力モードの設定を「ハイパフォーマンスモード」にする必要があります。WX03の場合、省電力モードと通信速度の相関は以下の通りになります。
- ハイパフォーマンスモード→下り最大440Mbps(4×4 MIMO+CAを利用)
- ノーマルモード(標準設定)→下り最大220Mbps(CAのみ利用※)
- エコモード→下り最大110Mbps(4×4 MIMOとCAを無効化)
※ バッテリー残量が一定値以下になるか一定時間通信がないと、CAもオフにして下り最大110Mbpsになる
WX03では、ノーマルモードの連続通信時間が約600分(無線LAN通信時の公称値、以下同)なのに対し、ハイパフォーマンスモードは約440分と、ノーマルモードより約160分(2.7時間)短くなります。一方、エコモードに設定すると約740分と、ノーマルモードよりも約140分(2.3時間)延びます。
言い換えてしまえば、下りの最大通信速度を2分の1(ハイパフォーマンスモード→ノーマルモード)にすれば約140分(2.3時間)、4分の1(ハイパフォーマンスモード→エコモード)にすれば約300分(5時間)も長く使えます。標準設定をハイパフォーマンスモードに“しない”理由がよく分かります。
「最新ルーターに乗り換えたのに思ったよりも通信速度が出ない!」「連続通信時間よりも通信速度を重視したい!」という人は、ハイパフォーマンスモードにすることを忘れないようにしましょう。なお、WX03では省電力モードの切り替えをすると本体の再起動が必要です。短い時間でモードを切り替える、という使い方には不向きです。
ちなみに、据え置き型のL01はバッテリー持ちを考慮する必要がないため、最初からハイパフォーマンスモード相当の通信を行うようになっています。
「拡大」「緩和」の相次ぐWiMAX 2+に「死角」はない?
前回の連載では、UQがWiMAX 2+における通信制限のルール変えることにも触れました。その内容をざっとおさらいすると、以下の通りです。通信容量のしきい値が上がり、制限のかかる時間が短縮された一方で、速度制限はより厳しくなりました。
- 通信容量のしきい値:直近3日間で3GB以上→直近3日間で10GB以上
- 速度制限のかかる時間帯:超過翌日13時頃〜翌々日13時頃(終日)→超過翌日の18時頃〜翌々日2時頃(8時間)
- 制限時の通信速度:YouTubeのHD動画が視聴できる(6Mbps)程度→YouTubeの標準画質動画が視聴できる(1Mbps)程度
この変更は2月2日から実際に適用されました。速度制限の時間が夜の8時間に限定されたため、自宅で固定回線を使っているユーザーは制限対象になっても影響は比較的少なく、昼間に速度制限がかからなくなった分、むしろ利便性は高まる可能性もあります。
通信制限ルールの事実上の緩和や、先述の下り最大440Mbps対応エリアの拡大など、UQはWiMAX 2+サービスを矢継ぎ早に強化していますが、「死角」はないのでしょうか?
筆者は、WiMAX 2+の「電波」が死角になりうると考えています。
何度も言いますが、WiMAX 2+は電波さえしっかり入れば下り速度面での不満はありません。上り速度についても、先述の上りCA対応によって不満は徐々に少なくなっていくでしょう。しかしながら、実際にWiMAX 2ルーターを使っていると、電波状況によって速度が落ち込むことが非常に気になるのです。
例えば、エリアマップ上は「穴」がほとんどない都心部でも、エリア化されていない地下鉄の駅や地下街は意外とあります。また、屋内の奥まった場所に移動・滞在すると、電波が弱くなって通信速度が遅くなったり圏外になったりすることがまだまだあります。さらにいえば、電車や高速バスなど比較的高速な公共交通機関で移動している時も速度が低下することも少なくありません。
WiMAX 2+における電波問題は、単純に「サービスエリアが広い(狭い)」で片付く問題ではないのです。電波状況が通信速度(品質)に影響することは、モバイル通信の仕組みを考えれば当然です。WiMAX 2+の場合は、とりわけ高速移動中の速度維持において厳しさを感じます。
それもあり、筆者は最近、移動中は大手キャリアまたはMVNOのLTE回線、カフェやホテルなどで着席しているときはWiMAX 2+ルーター、という風に使い分けるようにしています。WiMAX 2+ルーターは「たいていのエリアをカバーする公衆無線LANサービス」といった位置づけです。
UQでは2017年夏をめどに、au 4G LTEエリアでも通信できる「LTEオプション」(月額1005円)を無料利用できる対象を拡大する方針です。地下鉄・地下街や高速移動中におけるWiMAX 2+の弱点をau 4G LTEネットワークを使って克服しよう、ということです。
ただし、この無料化措置が実施されても、LTEオプション(ハイスピードプラスエリアモード)を使った際の「月間7GB」制限はそのまま残ります。エリア・品質面での死角をなくしても、LTEオプションの「死角」はそのまま、という格好です。この死角さえなくなれば、隙のないデータ通信サービスになるのですが……。
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