強みは「コミュニケーション」 LINE Payのモバイル決済戦略を聞く:モバイル決済の裏側を聞く(3/3 ページ)
カードやスマホ画面のバーコードで決済ができる「LINE Pay」。まだ始まったばかりのサービスのような印象だが、「ゼロスタートではない」という。そんなLINE Payの戦略を長福久弘COOに聞いた。
これからのLINE Pay
こうした中で長福氏がライバルに対するLINEの強みとして挙げるのが、やはりコミュニケーションだ。LINE自体は国内の月間利用者が7300万人おり、そのうち84%が毎日アクセスしているという。「何かを支払う」ということにユーザーがメリットを見い出し、その先のコミュニケーションを提供していくのが重要だという。
小売店に対しても、LINE Payを導入するメリットを提示していく。従来、クレジットカードなどの新たな決済手段を小売店が導入することは、手数料を取られるコスト要因でしかなかった。LINE Payの場合、「LINE@」という販促ツールがあり、ユーザーが決済をすることでLINE@や友達登録APIといった仕組みをシステム的に走らせることが可能になる。
LINE自身はユーザーの個人情報をほとんど持っておらず、これを直接パートナーに提供する術を持たない。だがこうした仕組みを通じてパートナー自身が情報収集を行うことで、決済のたびに資産を増やしていく結果となる。重要なのは、LINE@という仕組みが「友だち登録」を行うことでスタートするものであり、その時点で「ユーザーが対象となる企業やサービスに興味がある」つまり「ファンである」ということを示している。LINE Payをフックとして、企業がビジネスやファンを拡大するためのきっかけを作ってほしいというわけだ。
LINE Payもきっかけ1つで爆発的にユーザーが伸びる可能性が非常に高い。長福氏は現状でLINEユーザーが若い層に使われている傾向があるものの、実際にはそれほど層が偏っているわけでもないと述べている。まだブレークのきっかけは見えないが、いずれはLINE Payが同社事業の中核として機能していくだろう。
実際、同社の過去の事例をみても、チャットサービスの登場からスタンプやマンガ、占いといった人気サービスが登場するまでに2〜3年程度の期間を要している。LINE Payもまたユーザーやサードパーティーとともに成長していくサービスであり、そうしたスパンで事業を見ているのだと考える。
収益に関しても、手数料もさることながら、アカウントビジネスとしての側面が強いと長福氏は説明する。LINE Adプラットフォームやサードパーティーを通じた事業など、既存の成功事例にあるようにマネタイズにおけるポイントは幾つかあると説明する。
最後に現状のLINE Payが構想からどの程度の完成度かを尋ねたところ、長福氏は「できていることは1割」とコメントした。FinTechというくくりでいえば、決済や金融、各種サービスやコミュニケーションなど、可能性はいくらでもあり、現状はまだスタート地点にすぎないということだ。
【訂正:2018年2月14日19時30分 LINEの利用者数について、一部誤りがありましたので訂正致しました】
関連記事
- LINE Pay、セブン銀行ATMと連携 スマホ操作でも入金可能に
セブン銀行がLINE Payと連携。セブン銀行ATMからLINE Payへの入金・出金が可能になった。 - 複雑化している国内の「モバイル決済サービス」を総整理する
国内外のモバイル決済トレンドを解説する連載がスタート。一言で「モバイル決済」といっても、さまざまなサービスが存在する。第1回では「国内の決済サービス総括」と題して、複雑化している電子マネーや各種決済サービスを整理していく。 - 世界の決済事情から考える「日本でモバイル決済が普及しない理由」
日本ではスマートフォンを使ったモバイル決済の認知度は高いものの、利用率は低い状況が続いている。一方中国では、日本とは対照的に、AlipayやWeChat Payが急速に市民権得ている。今回は、日本を含む世界の決済事情について読み解いていく。 - ドコモの「d払い」は誰に向けたサービスなのか?
スマートフォンでバーコードを表示して決済できるドコモの「d払い」。既におサイフケータイがある中で、誰に向けたサービスなのか。店舗側にはどんなメリットがあるのか。 - 「d払い」を使う理由、使わない理由
ドコモが4月に開始する決済サービス「d払い」。バーコードを見せるだけなので、簡単に決済ができます。では、自分がd払いを使うかというと……。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.