「数字だけのシェアは追わない」 OPPOが日本市場で目指すもの:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/3 ページ)
急成長を遂げている中国の新興メーカーOPPOが日本に参入。第1弾スマホとして「R11s」を発売したが、ラインアップはこの1機種のみで販路もまだ狭い。日本市場での攻め方をどう考えているのか? OPPO Japanのトウ・ウシン社長に聞いた。
世界シェアで第4位、アジアに限定すると1位と、今、急成長中のスマートフォンメーカーOPPOが、ついに日本に上陸した。第1弾が、明るさの異なる2つのカメラや、18:9のディスプレイが特徴の「R11s」だ。R11sはSIMロックフリースマートフォンとして、まずはビックカメラやヨドバシカメラなどの家電量販店で販売されている。
大型参入として話題を集めたOPPOだが、グローバルでのラインアップを見渡すと、他にも日本で発売できそうな端末は多い。また、新規参入は果たしたが、販路は家電量販店のみと限定的。MVNOやサブブランドとのセット販売は行われておらず、R11sは比較的静かな船出となった。MVNOとの関係を深め、発売日には複数の会社が大々的に端末をアピールする他社とは対照的な印象も受ける。
そんなOPPOは、どのような戦略で日本市場に臨んでいくのか。新たに設立されたOPPO Japanで代表取締役社長を務める登宇辰(トウ・ウシン=登の字は登におおざと)氏にお話を聞いた。
なぜこのタイミングで日本に参入したのか
―― まずは参入おめでとうございます。ただ、一方で既に多数のメーカーがSIMフリースマートフォンを日本で発売しています。なぜ、このタイミングだったのでしょうか。
トウ氏 OPPOという企業がここまで成長して、準備ができたからです。外部から見ると分かるデータでは、アジアナンバー1、グローバルナンバー4という位置付けで、R11sはAndroidの中で最も売れているブランドです。マーケティングとプロモーションの経験を積み上げてきて、いいタイミングだと思っています。
2点目として、日本市場に進出することで、OOPOにとっても経験を積み上げていくことができます。製品デザインや開発、セールス、ユーザーとのコミュニケーション能力も、日本への進出で高まることを期待しています。これは全社の能力向上にもつながり、今後、アメリカ市場に進出する際にも役に立つと考えています。
3つ目として、市場自体にも魅力を感じています。日本の人口は億を超えていますし、端末の販売台数も毎年3000万台を超える実績があります。電子機器として考えると、ブランドの聖地でもあり、日本に進出すること自体に意味があります。市場自体もオープンになっています。
また、サプライチェーン(部材等の調達)にもチャンスを感じています。今後数年間は、既に進出しているブランドも含め、サプライチェーンで課題を抱えると予想しています。例えば、今お使いの端末(担当編集が録音に使っていたiPhone Xを指しながら)は、スクリーンが特注サイズで、切り欠き(凹状態になっていること)は独自のものです。こういった場合、サプライチェーンにはオーダー量で発注できるか、できないかが決まってきます。
―― それは、日本にいた方が調達の面で有利になるということでしょうか。
トウ氏 今のリーディングブランドは、そのような困難を迎えることになるでしょう。結果として、消費者に最新の機能で、かつ費用対効果の高い製品を提供できなくなります。ブランド側のコストも高まります。その意味で、マーケット自体に参入のチャンスを感じています。OPPO以外のブランドもそう見ているはずで、他社が参入する前に日本に入ることにしました。
なぜR11sのみを投入するのか
―― R11s以外にも、OPPOにはさまざまな端末があると思います。なぜ、R11s単体で投入することにしたのでしょうか。
トウ氏 根本的な理由は、ビジネスにおける競争への認識にあります。OPPOにとっては、ブランドへの口コミが最も重要だからです。売り上げや台数よりも、口コミを最重要視しています。高級な端末と格安の端末両方を出し、格安で台数を出す一方、高級モデルでブランドを作っているメーカーもありますが、実際に買われているのは、ほぼ格安端末です。それでは高級端末のイメージが薄くなってしまう。むしろ、格安ブランドとしてイメージが定着してしまう可能性もあり、同時に出すことで、高級端末を出す意味がなくなってしまいます。これはマラソンのようなもので、立ち位置が大事になるという認識です。
R11sを最初に出すことで、ユーザーに対しては最高に素晴らしい商品で、カメラ機能もしっかりしているという印象を残すことができます。売り上げ台数を見ると少なくても、ユーザーが喜んで他人に見せられるのが、本当の意味での口コミです。これを長く続けることで、OPPOとしての口コミも積み上がっていきます。
キャリアとは商談をしている
―― 一方で、日本は大手キャリアがハイエンドモデルに購入補助を出しているため、比較的リーズナブルな価格で購入できます。型落ちの場合など、時には0円で売られていることもあります。そちらの市場に参入したいという思惑はあるのでしょうか。
トウ氏 大手キャリアとの提携に関しては、もちろんです。日本市場はグローバルから見ると特殊で、キャリアが90%以上のシェアを占めています。キャリアと提携しなければ、この市場に進出した意味はなく、SIMフリーだけで頑張っても未来はありません。ですから、もちろん3社ともに接触はしていて、一部に関しては、ある程度商談ベースの話に入っています。詳細はまだお話できませんが、お話はしています。OPPOも、自分たちの製品にキャリアの技術仕様を合わせたものを開発したいと考えています。それは、日本に合わせたものということです。
―― つまり、おサイフケータイや防水などにも対応していきたいということでしょうか。
トウ氏 はい。将来の機種の中には、そういった機能を加える予定もあります。
―― 大手キャリアの前に、現状だとまだ提供されていないMVNOからの発売もあるのでしょうか。
トウ氏 現在販売されている端末は、ビックカメラやヨドバシカメラで扱われています。その意味では、すでに(MVNOとの)提携に入っているともいえます。
―― 確かに家電量販店でSIMカードと組み合わせて購入することはできますが、直接MVNOが扱うことはないのでしょうか。
トウ氏 各社ともに接触はしていますが、今のところ、家電量販店に注力していきたいと考えています。
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