商用化に向けて、5G一色だったMWC――NTTドコモが頭を抱える「競合他社のなんちゃって5G」:石川温のスマホ業界新聞
先日閉幕した「Mobile World Congress 2018」は、5Gの話題で持ちきりだった。しかし、「5G」の定義について、悩ましい事態が既に進行しつつある。
今年のMWCは猫も杓子も「5G」一色であった。
ファーウェイが、5Gチップを搭載したWi-Fiルーターを発表。5G時代の到来が一気に現実味を帯びてきた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年3月3日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
ただ「ファーウェイが発表した5G対応Wi-Fiルーターはどこで売る気なのか。固定回線の代替のための製品にも関わらず、アメリカには政府の意向もあって本格参入できていないははずないか」という疑問が湧いた。
そこで、ファーウェイ関係者に聞いたところ「2019年に中国で5Gが始まりそう。この製品は中国向けを意識している」とのことだった。
去年辺りは「2018年にアメリカで固定回線の代替として5Gが始まり、2019年で韓国、2020年に日本」という話であったが、ここに来て中国が割って入って来たようだ。
日本における5Gスタートまで、残された時間は少ない。
5Gというとザックリした感があるが、実際は2017年12月に3GPPから規定されたRelease15に対応したサービスを提供すれば、5Gをスタートしたことになる。
しかし、NTTドコモの5G推進室、中村武宏室長によれば「実はRelease15はLTEのRelease15も含まれている。つまり、LTEでもRelease15なら、5Gと言えなくもない」という。
本来であれば、5GのRelease15に対応した技術を投入して初めて「5Gスタート」というのが筋だ。しかし、すでに「5G Project」と語るキャリアもあることから、「正式な5Gでなくても、5Gと言ったもん勝ち」という状況になりかねない。
4Gの時も、アメリカが3Gの高機能版であるHSPAに対応しただけで「4G」と言い始めて、なし崩しにどのキャリアも4Gになった。
一方、NTTドコモは、素直にLTEといえばいいものを「Xi」という独自ブランドをつけて大失敗した経緯がある。
NTTドコモがXiと語る一方、他社はLTEや4Gで通した。結果、「NTTドコモはLTEをやっていない」という間違った認識が一般に広まるという苦い経験もある。その後、LTE-advanced導入時に「PREMIUM 4G」という名前に変えてきたりと、なんだか一貫性がまるでない状態に陥ってしまった。
技術の進化のたびに名前を変えるということをすると、あとあと、辻褄が合わず、面倒なことになりかねない。
5Gに向けてNTTドコモとしても慎重になっているようで「ブランディングの問題なので、社内で議論している」(中村室長)という。
これからは、広告代理店に余計なお金を払って違った名称をつけるより、素直に「5G」というサービス名称を通したの方がいいのではないか。
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