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インタビュー

ローソンが無人決済「スマホペイ」を導入 その狙いとキャッシュレス戦略を聞くモバイル決済の裏側を聞く(2/2 ページ)

ローソンが都内3店舗で「ローソンスマホペイ」の実証実験を行った。行列に並ばずに手持ちのスマートフォンだけで会計を済ませられるのは斬新な体験だ。ヘビーユーザーからは「やめないでほしい」と好評だという。サービスの狙いをローソンに聞いた。

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スマホペイ導入で見えてきた日本のキャッシュレス対応の盲点

 今回は先行する上海、そして東京の実証実験と2都市での展開となっているが、白井氏によれば両者での最大の違いは「キャッシュレスかキャッシュレスでないか」という部分にあるという。多くが知るように中国では「支付宝(Alipay)」と「微信支付(WeChat Pay)」という2大QRコード決済が存在し、スマホペイのような仕組みも抵抗なく受け入れられていたという。「ユーザー教育の面で日本の利用者にスマホペイが受け入れられるのが問題なのか?」と聞いたところ、同氏からは意外な答が返ってきた。

 スマホペイの仕組みをいざ日本に導入しようとしたとき、これまでApple Payやクレジットカードなどの取り次ぎを行っていた会社にサービスの仕組みを説明してカードブランドへの交渉を持ちかけてもらったところ、日本国内ではまだどこもやっていない初めての仕組みだったのか、その内容を理解してもらえなかったという。

 例えば、POSレジの対面販売での決済手数料は非常に低い料率となっているが、これをd払いやApple Payなどのオンラインの仕組みを利用しようとすると手数料が高くなる。では、スマホペイはどちらに属するのかという話になったとき、「ネットで決済だけど買い物自体は店頭で行われる」ということで料率交渉の問題が発生してしまう。中国での事例を紹介して交渉しても、それはあくまで中国の話ということで、前例のない日本では仲介業者もカードブランドのどちらも判断しかねる状況になってしまう。スマホペイに関して各種報道が出たことで、改めて先方がサービスの内容を理解して、店頭決済の料率に寄せるべく交渉が続いているという。

 白井氏は「資料となる動画も分かりにくく、こちらの説明不足の可能性もありますが……」と言葉を濁すが、新しい決済手段が次々と登場している状況でなお、こうした交渉段階での障害が存在することに筆者は非常に驚いている。キャッシュレスに関してさまざまな問題が取り沙汰されているが、実はユーザーよりも従来の慣習に縛られるサービス提供者側の問題が大きいのではという感想を抱いた。

新型POSの新機能でバーコード決済需要を一気に取り込み

 スマホペイだけでなく、ローソンは現在2020年の東京五輪を前に新しい決済システム導入とレジのオペレーション改善を進めている。まずICカード対応とPOSレジでのカード番号非保持化対応は2018年2月の段階で完了し、当初は5〜6月スタートといわれていたNFC対応は2018年秋以降となる。既に行われているAlipay対応と合わせて、多様な決済手段の取り組みとインバウンド対応を進める計画だ。

 LINE Pay、楽天ペイ、d払いといったバーコード決済への対応もこの一環だが、電子マネーやクレジットカード対応と比較しても開発費用が抑えられるため、導入しやすいというメリットがある。現在は各決済方法がアプリケーション単位で独立しており、決済にあたってはPOSレジで店員がボタンを押してどの支払い方法を利用するか選択してやる必要がある。

 だが2018年6月以降にスタートする新型POSを利用することで、「ダイレクトスキャン」という機能が利用できるようになり、バーコード決済のハードルが一気に下がる。これは、対象となるスマートフォンのバーコード画面を赤外線スキャナーで店員が読み取るだけで、自動的にどの支払い手段かを判断して決済が進むというものだ。年度内にあたる2019年2月までには全国1万4000店舗への展開が完了するということで、これを狙ってバーコード決済を取り込んでいくという。

 新型POSでは、店員と客の見せる側それぞれに巨大な液晶画面が据え付けられており、釣り銭機の導入でいわゆる「キャッシュレジスター」的な機械がPOSまわりからなくなり、非常にシンプルな形状になっている。設置負担のある釣り銭機が標準装備であることには賛否両論あったが、これも今後多様化する「働き手」を考慮したものだという。

 最近都内では顕著だが、コンビニでは外国人やシニアの店員が増えている。こうしたスタッフが慣れない作業や硬貨の取り扱いでミスが発生しないよう、自動釣り銭機で支援し、さらに少ないボタン操作で負担を軽減するという。新型POSは店員側の画面が多言語対応しているのも特徴で(客側は特に変化しない)、とても面白い構造だ。

 白井氏に「WeChat Pay」の対応計画を聞いたところ、現在のところコメントできないとの回答だった。一方でAlipay導入効果は大きいようで、Alipayアプリを通じてローソンのプロモーションが行われている関係で、競合となる他のコンビニではAlipayが導入されていないことから、これを目当てにやってくる中国人客も多いという。

 面白い話としては、ローソン店内でやたらロールケーキが売れるので出所を調べたところ、Alipayで「日本に行ったらこれがおいしい」という形でお勧め商品として宣伝されていたのだという。筆者のまわりでは「日本のコンビニでAlipay決済している人を見かけない」という話も聞くが、インバウンド効果はそれなりに大きいようだ。

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