楽天のMNO参入は「脅威」「エコシステムの競争に」 ドコモ吉澤社長インタビュー(1/2 ページ)
「回線」から「会員」に軸足を移したNTTドコモ。dポイントのエコシステムを強化し、コード決済サービス「d払い」も始めた。直近の注目トピックについて、ドコモの吉澤和弘社長に話を聞いた。
2020年とその先を見据えた中期戦略「beyond宣言」を掲げ、さまざまな取り組みを行っているNTTドコモ。中でも大きな変化は、「回線」から「会員」に軸足を移したこと。dポイントを活用したエコシステムを強化し、コード決済サービス「d払い」も始めた。端末は同質化が進む一方で、「HUAWEI P20 Pro」を独占的に取り扱って注目を集めた。料金プランはMVNOへの流出を防ぐ安価なプランも増えた。外に目を向けると、楽天のMNO参入が決まり、ライバルが1社増えた格好だ。
ITmedia Mobileでは、ドコモの吉澤和弘社長に単独インタビューする機会を得たので、注目のトピックを中心にお話を聞いた。
ドコモ独自の端末は出しにくくなっている
―― 2018年夏商戦を振り返っての手応えを教えてください。
吉澤氏 夏商戦はお盆あたりでまた盛り上がります。フラグシップはすごい変化があるわけではないですが、今までと同じぐらいは出ているのかなと。XperiaはCompact(Xperia XZ2 Compact)が割と順調に売れています。docomo withは、「LG style」と「arrows Be」両方とも好調です。「らくらくスマートフォン」もdocomo withの対象になっています。「AQUOS R2」は3社から出ていますが、映像と写真を同時に撮れのがいいですね。
P20 Proは、まだ時間がたっていないので何とも言えませんが、トリプルカメラの良さを宣伝しているところです。8〜9月に向けて、もっと出てくると思います。
―― 今回はHUAWEI P20 Proの注目度が高いですが、改めて、Huaweiのスマートフォンを約5年ぶりに扱うことを決めた経緯、またP20シリーズの中でも最もスペックの高いP20 Proを採用した理由を教えてください。
吉澤氏 いろいろな端末メーカーからご提案いただいていますが、その中で、われわれの要求にかなったものを採用させていただいています。P20 Proのトリプルカメラと、シーンに応じ瞬時にAIが認識する機能は今までになかったので、決め手になりました。私も手に取ってみて、3つのカメラがコンパクトにまとまっていると思いましたし、実際の画像もキレイに撮れました。
―― HuaweiさんはSIMフリー市場でシェアを高めてきましたが、そうした実績も評価したのでしょうか。
吉澤氏 それも当然ありますよね。Huaweiさんとはスマホに限らず、データ端末やタブレットでお付き合いがあるので、動きは大体分かっています。
―― 一方で、3キャリアの中で端末の同質化が進んでいて、「ドコモだからこれが買える」というものは減っています。
吉澤氏 私どもの独自開発、共同開発で入り込んでいた時期に比べると、今は各ベンダーさんからご提案を受けて、デザイン性や機能については企画段階でやらせていただいているところもありますが、グローバルモデルをカスタマイズせざるを得ないので、なかなかドコモオリジナルの端末は出しにくくなっています。
ZTEの「M」は一緒にやらせていただいています。今はいろいろあって止まっていますが、必要に応じてわれわれの要望を入れつつ、そういったものを作っていくことも考えています。ただ、以前のiモード端末のように、自ら開発することはないですね。
他のVRやAR、グラスなども今あるものを使っていますが、どういうデバイスが欲しいかは、研究開発を進めています。
―― 今おっしゃった、VRやARに関わるデバイスをドコモさんが自ら開発する可能性もあるのでしょうか。
吉澤氏 そこよりは、コンテンツやその映し方ですね。デバイスにリソースをかけることはないと思います。グラスなどについては、可視範囲を大きくする、鮮明に見える技術、電池。そういったところを研究開発しています。
―― ZTEの件は、米国で制裁を解除するという話も出ています(関連記事)。
吉澤氏 当然、米国の中でもお客さんがたくさんいらっしゃるので、条件付きで解除するということだと思います。(ドコモ向け)端末の供給がどうなるのかは、ZTEから正式な回答がない状況です。
―― 2画面スマホのMも、これで終わってしまったらもったいないですね。
吉澤氏 (後継機を出すとしたら)Mをさらにブラッシュアップさせ、薄くするようなことも考えていかないといけないかなと。動きをしっかり捉え、次をどうするかは決めていきたいと思います。
「ベーシックパック」の契約数は想定よりやや少ない
―― 新料金プランとして段階制の「ベーシックパック」を発表しましたが、導入後の加入者数や反響はいかがですか。
吉澤氏 利用頻度に応じた料金を作ってほしいと言われていました。今回はあまり使われない人に向けて1GBをスタート地点にして、使う方も階段で(20GBまで)駆け上がれるようにしました。特に「パケットパック」のSやMだった方が移っていますが、われわれが計画しているよりも少ないぐらいですね。契約数は申し上げられないのですが。
―― 他キャリアはサブブランドにとどまらせて、MVNOへの流出を防ごうとしていますが、今回の新プランは、MVNOやサブブランドへの流出を防ぐという狙いもあったのでしょうか。
吉澤氏 周りを見ると、MVNOやサブブランドに行くお客さんがいることは確かで、そういったところへの流出は目立っていました。そこに対処したところはあります。後は、docomo withの契約者でベーシックパックを選ぶ人が多いですね。「シンプルプラン」も、パケットも音声も使わない人に受けています。
ドコモが中古市場を活性化させる考えはない
―― 総務省が「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」にもとづいて行政指導を行いましたが、どのように受け止めていますか(関連記事)。
吉澤氏 2年縛りに関して、25カ月目に解約をすると1カ月分の料金が取られてしまう点については、真摯(しんし)に対応して、どういうことができるのか、検討しているところです。今までも、2年経過後に途中解約しても解約金を取らない「フリーコース」を提供しているので、改善できたと思います。
―― 検討会では、中古端末が国内でなかなか流通しないという状況も指摘されています(関連記事)。
吉澤氏 中古はいろいろな出方があると思います。われわれが下取りしたものを中古業者に売ったり、端末の補償サービスに使ったりしていますが、そこは経済合理性だと思います。下取りで買ったものは、一番高く買っていただけるところに出しています(流出先までは把握していない)。中古市場を、ドコモが自ら活性化することは考えていません。
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