Appleに独占禁止法違反の疑い 公取の調査が“iPhone販売”に与える影響は?:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
公正取引委員会は7月11日、独占禁止法違反の疑いがあったAppleに対する調査結果を発表した。Appleとキャリアの間では、「iPhone Agreement」と呼ばれる契約が結ばれていたという。これが改定されたことで、どのような影響があるのか?
大勢に変化はなし、docomo with入りも実現するか?
とはいえ、KDDIが既にiPhoneで分離プランを導入している以上、この改定をもって何かが大きく変わることはないだろう。auピタットプラン、auフラットプランはユーザーからも好評で、4月8日時点ですでに700万契約を突破している。auのスマートフォンユーザーの約3分の1が、1年たたずに新料金プランに移行したというわけだ。Appleにとっても、端末購入補助に固執するより、分離プランを受け入れた方がプラスになったはずだ。
一部には料金が下がり買いやすくなるという論調もあるが、分離プランでは逆に端末の実質価格が上がるため、ユーザーの負担が大きく変わることもなさそうだ。ただし、au以外のキャリアでも分離プランが選べるようになれば、端末を長く使う人にとってはメリットが出てくる。特にiPhoneは、iOS 12で旧端末の高速化を売りの1つにするなど、端末のライフサイクルが長い。結果として、端末の買い替えサイクルは低下してしまうかもしれない。
ドコモは、「今回の公正取引委員会の事件審査の結果、iPhoneの販売方法に一定の選択肢が増えたことは事実」としながら、「これにより、お客さまにとってメリットがあり、かつ分かりやすい料金プランが提供できるか、今後検討していく」とコメント。検討の結果がどうなるかは未知数だが、docomo withにiPhoneを導入するハードルも低くなっている。
あくまで可能性の話でしかないが、iPhone SEのようにもともと廉価なiPhoneや、型落ちになったiPhoneを、docomo withとして販売する可能性もありそうだ。ドコモの吉澤和弘社長はdocomo withの対象を「ミドルレンジの下の方」と語っていたが、「LG Style」のように、docomo withは4万円を超える端末にも広がっている。現状では、最も安いiPhone SEの32GB版が4万3000円程度で、docomo withの対象になっても不思議ではない。
ただ、あるキャリア関係者は「今さらこれでは……」と語っていたように、公取の調査は時機を逸している感がある。ドコモがiPhoneを導入する前や、KDDIがauピタットプラン、auフラットプランを始める前であればまだ分かるが、このタイミングでの調査結果公表は、キャリアにとって肩透かしだったはずだ。公平性という観点では、iPhone Agreementの改定をもって、過去の疑いを不問にする姿勢にも疑問は残った。
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