“格安SIM市場”でトップを走るY!mobile データ増量はMVNOの脅威に:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
Y!mobileが、9月1日から各料金プランのデータ容量を改定する。合わせて、「データ容量2倍キャンペーン」は「データ増量キャンペーン」となり、増量された新容量の半分が追加される。MVNOに与える影響も大きそうだ。
格安SIMシェア1位の地位が盤石に、MVNOへのインパクトも
LINEモバイルとの差別化はソフトバンクがグループ内で調整できる話だが、影響は他のMVNOへ及ぶ可能性もある。例えばIIJmioのミニマムスタートプランは3GBで1600円。10分間の音声通話定額を付けると2200円になる。他のMVNOも価格設定はこれに近く、Y!mobileとの差は縮まりつつある。
MVNOは多くが最低利用期間を定めているだけで、Y!mobileのような自動更新の2年縛りがなかったり、音声通話定額をつけなければ料金はさらに安くなったりするメリットはあるが、少なくとも、9月以降はY!mobileの優位性が高くなることは間違いない。Y!mobileはMNOであるため直接比較はできないが、ユーザー数はどのMVNOも多く、いわゆる“格安SIM市場”では、シェアトップを独走している。対抗上、料金を下げたり、容量を増量したりするMVNOも出てくることになるだろう。
ただ、MVNOの間にはユーザーの利用量の増加に対し、接続料の値下げが十分追い付いていないという不満もくすぶり続けている。こうしたMVNOの声は、先に総務省で開催された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」で顕在化した。
10Mbpsあたりの接続料はあくまで算定式に基づき、機械的に算出されているもので、Y!mobileの料金と直結したものではない。ソフトバンクの10Mbpsあたりの接続料も、過去4年分を見ると、135万2562円(2014年度適用分)から77万3519円(2017年度適用分)まで下がっており、4年前の約57%になった。4年前の金額がY!mobileのデータ容量の増加分とほぼ同じ約1.7倍だったことを考えると、トラフィックはきちんと接続料に反映されているといえる。
寺尾氏が「この料金体系であれば、MVNOの現状の取引レートで十分カバーできると思う」と語っていたのも、こうした状況が念頭にあったからだろう。ただ、77万3519円は現状でもドコモより高く、同額の料金を設定しても、Y!mobileほどの速度が出せなかったり、大々的な広告展開ができなかったりするMVNOにとっては、厳しい金額といえる。10Mbps単位で設定する接続料そのもの在り方が、限界を迎えつつあることもうかがえた。
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