手数料0%よりも“顧客体験”が重要 みずほ銀行のモバイル決済戦略を聞く:モバイル決済の裏側を聞く(3/3 ページ)
みずほ銀行が、Android向けに銀行口座直結の決済サービス「スマートデビット」を提供。iOS向けには、JR東日本と提携して「Mizuho Suica」も開始した。みずほ銀行は、モバイル決済に関してどのような戦略を持っているのだろうか?
加盟店が便利になってもユーザーが使わなければ意味がない
iOS版の登場により100万ダウンロードを目指す「みずほWallet」だが、現状のユーザー層はどんな状況だろうか。スマホ決済の分野では40-50代がその利用層の中心といわれるが、みずほWalletでも変わらないようだ。一方で若年層やアーリーアダプターが比較的多く、ブランドデビットの物理カードの利用が29歳以下で50%程度を占める現状を考え、その波が少しずつ広がっている状況だという。
J-Debitがどちらかといえば高額決済の市場をターゲットとしていたことで、クレジットカードとの市場の食い合いを起こしているが、中額以下の決済をターゲットとすることで決済件数はクレジットカードに迫っており、全体としてもユーザー層が広がりつつあるという。
西本氏は、「ウォレット」であることをサービスの特徴に挙げている。「今回はデビットを載せていますが、“ウォレット”ということで今後はクレジットカードも載せられますし、電子マネーも載せられます(実際にiOS版ではMizuho Suicaが搭載された)。あとはスマートフォンなので非接触決済だけでなくQRコードも載せられます」と西本氏。
みずほFGではグループ企業にカード会社のUCやオリコを抱えており、これら各社のクレジットカードを載せることも容易だろう。
「よくQRとNFCの比較表を書いたり、加盟店手数料が3%、1%といった部分を比較したりするのを見ますが、顧客視点ではありません。利用者だけでなく加盟店のことも考えなくてはいけないという意見も聞きますが、加盟店がいくら便利になっても、利用者が使わなければサービスそのものが成り立ちません。どちらがよいか悪いかではなく、利用者第一で、顧客体験価値をどう向上させるかが重要なポイントです」(同氏)
LINEやYahoo!とはビジネスモデルが違う
西本氏は他サービスとのビジネスモデルの違いについても言及する。「LINEやYahoo!が加盟店手数料0%を打ち出していたりしますが、彼らは決済でもうけようとはしておらず、あくまで手段としてデータを活用し、自身のコンテンツに顧客を引き込んだ上で価値を高めることに目を向けているのではないかと思います。QRコード決済や手数料0%は、世間で盛り上げてもらうための仕掛けです。
AppleやGoogleも同様で、自分たちのOS基盤の価値を高めて集客につなげ、広告価値を高めていくところにあります。LINEやYahoo!といった体力のある企業が0%という数字を打ち出す中で、加盟店の手数料だけで競争しようとすると、どこまで戦い続けられるのかという話があります。
中国がそうであるように、今後日本でも加盟店手数料は下がっていくという見方もあるでしょう。そうしたとき、銀行はどうするのかという話ですが、銀行としてお客さまに何ができるのか、自社の中核事業とのシナジーを考慮した顧客体験価値の向上を考えなければいけないでしょう」(同氏)
西本氏が重ねて強調するのは「顧客視点」で、いかにユーザーの利便性を向上させるかに重きを置く。
「キャッシュレスになると8兆円のコスト削減で、ATMも削減できますという話が出ていますが、そういった展望を達成するためにも、まずはユーザーに便利に使ってもらえることが何より重要です。利便性の向上の後に、利益やコスト削減がついてくるという考え方です。銀行本意、業界本意のサービスではなく、普及促進に必要なものは顧客体験の向上です。ですので『NFCなのかQRなのか』『QRにすれば加盟店手数料が下がる』という話ではなく、『スターバックスが高いといわれてもなぜ皆が利用するのか』という話で、やはり顧客体験が重要なのだと思います」(同氏)
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