2号機だけど「ほぼゼロベースで開発」 カード型ケータイ「NichePhone-S 4G」の勝算:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/3 ページ)
カード型の超小型ケータイ「NichePhone-S」の後継機として「NichePhone-S 4G」が発売された。初めてLTEに対応したことで、中身はゼロベースで開発したという。通話やテザリングに機能を絞っているが、勝算はあるのだろうか。
日本語入力は特に評価されている
―― やはりユーザーは通話とSMS、あとはテザリングで十分という方なのでしょうか。反響はいかがでしたか。
曲氏 NichePhone-S 4Gでアンケートを取りましたが、通話目的で使う方が8割弱です。3Gから切り替えたいというユーザーも3割程度いて、もっと増えるのではないかと思っています。使った感想で評価されていたのは、一番がやはり日本語入力ですね。
電話帳やバッテリーの持ち時間などに対する声も非常に多かったです。3Gのときは薄かったのでバッテリーがあまり持たないという声もありましたが、今回は厚くなった分、1000mAhとバッテリー容量が倍以上になっています。スペック上は110時間の待受けで、3Gの72時間からは大幅に伸びています。
意外だったのが、カメラがないので機密情報を扱う場所にも持ち込めるという声があったことです。そういう声は初めて聞いたので、ターゲットユーザーに合っている端末だったと再認識しました。
―― この端末だと、あまり文字入力はしないのかなと思いましたが、日本語入力の改善を重視したのはなぜでしょうか。
曲氏 3Gを出したときは、そう考えていました。一方で、通話用に使いつつ、電話がかかってきて出られないときに「あとでかけ直す」とSMSを送りたいこともあります。SMSを使うときに、これでは使いづらいと不満になっていました。SMSを自分から送って連絡を取ることも、そんなに多くはありませんが、あることはあると思います。
MWCで製造業者を見つけた
―― 基板からとおっしゃっていましたが、3G版も設計にはかなり力を入れていたと聞きました。違いはどこにあるのでしょうか。
曲氏 前回はスペインのMobile World Congressに行き、製造業者を見つけました。ただ、その基板が2Gにしか対応しておらず、3G用の基板を作ることになりました。これに対して今回は、自社が関わっている部分が非常に多くなっています。外観のデザインはもちろん、部品の選定から基板まで、全部現地の製造工場に行ってやり、テストをしてできたものです。その意味では、前よりだいぶ手間もかかっていますね。ほぼゼロベースで、何もないところから開発したといえるものだと思います。
―― 確かにLTE対応となると、展示会でベースモデルを探すのは難しそうですね。自分も展示会でチェックはしますが、なかなか目にしたことはありません。
曲氏 海外の展示会だと、カードフォンはあっても、アフリカや中東など、まだ2Gを使っている国がターゲットになっています。そういう地域では、3Gになると中国の安いスマートフォンを使うので、カードフォンの需要がありませんでした。こういった地域ではガラケー文化がなかったので、ガラケーに対する感情は特にないのではないでしょうか。
ストラップホールも搭載
―― 本体にはきちんとストラップホールが付いています。
曲氏 サイズが小さいですからね。落としやすい、落としたときに見つけにくいということもあり、ストラップホールを付けることにしました。ストラップは日本の文化じゃないですか。みんな付けると思います。
弊社はスマートフォンのケースも作っていますが、ストラップホールを付けてほしいという声はすごく多い。仕様上の問題がなければ、全てのケースに付けようと思っているぐらいです。そういった声は、男女関係なく多いですね。
―― 細かなところですが、SIMカードスロットにキャップがついています。
曲氏 3G版のときは、落としたらそのままSIMカードが外れてしまいました。単体でキャップだけ売ってほしいという声もあったぐらいです(笑)。今回はキャップを付け、SIMカードが外れないようにしました。これも1つの進化です。
―― さまざまな不満を解消していますが、専用の充電端子をMicro USBやUSB Type-Cに変えてほしいという声もあったかと思います。これは難しかったのでしょうか。
曲氏 正直なところ、このサイズなら載せることはできます。ただ、同じ充電端子にしておけば、3G版から乗り換えた方もそのまま使えるのではないか。そう考えて、切り替えはしませんでした。一時はMicro USBも検討していましたが、このサイズだと相対的に穴が大きく開いてしまうことになり、すごくダサい(笑)。ホコリも入りやすくなってしまいます。そこも考え、今のような形がいいのではないかとなりました。
―― 3キャリア対応はやはり難しかったのでしょうか。
曲氏 auへの対応ができませんでした。やはりVoLTE対応が難しいこともあって……。
―― 逆に変わっていないところという意味だと、ディスプレイは前と同じでしょうか。
曲氏 はい。ディスプレイは変っていません。色数を増やそうか検討もしましたが、やはり消費電力が大きくなってしまい、3Gのときと電池の持ちが同じになってしまいます。
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