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「ソフトバンク」と「Y!mobile」 2ブランド併存戦略の“功罪”(1/3 ページ)

ソフトバンクには「ソフトバンク」と「Y!mobile」の2ブランドが併存している。同社は両ブランドの料金プラン設定などを変えることでより幅広いニーズに応えようとしているが、課題もある。両ブランドは、今後どうなるのだろうか。

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 ソフトバンクのモバイル(携帯電話)通信事業には、「ソフトバンク(SoftBank)」と「ワイモバイル(Y!mobile)」の2つのブランドがある。さらに、同社は子会社として「LINEモバイル」というMVNOを抱えている。

 2月5日に同社が行った決算説明会で宮内謙社長は、ソフトバンクブランドは「大容量」「ビジネス」、Y!mobileブランドは「ライトユーザー」、そしてLINEモバイルは「若い(10代から20代前半の)ユーザー」というふうに、ターゲットユーザーによってブランドを分ける戦略を改めて打ち出した。

 このマルチブランド戦略は、競合する他キャリアにはない差別化要素でもある。しかし、特にソフトバンクとY!mobileの2ブランドを併存させる戦略はメリットもあればデメリットもある。両ブランドは、これからどうなっていくのだろうか。

マルチブランド戦略
ソフトバンクは、子会社化したLINEモバイルも巻き込んだマルチブランド戦略を取る

若干複雑な両ブランドの成り立ち

 ソフトバンクとY!mobileの両ブランドのモバイル通信事業は、若干複雑な経歴を持っている。

 ソフトバンクブランドは、ソフトバンクグループ(旧ソフトバンク)が英Vodafoneから買収した「ボーダフォン」というモバイルキャリア(MNO)がルーツ。そのボーダフォンも元々は「ジェイフォン(J-PHONE)」で、J-PHONEは「デジタルホン」「デジタルツーカー」両グループが統合して生まれたブランドだった。

 一方、Y!mobileブランドは、ソフトバンク(当時は「ソフトバンクモバイル」)とは“別の”MNOだった「ワイモバイル」がルーツ。ワイモバイルは「イー・モバイル(EMOBILE)」ブランドでモバイル通信事業を展開していた「イー・アクセス」が、PHS事業者「ウィルコム」を吸収合併して生まれた企業だった。この合併の際、沖縄県においてウィルコムと地元企業が合弁で設立した「ウィルコム沖縄」は存置され、現在に至っている。この経緯から、沖縄県に限ってはY!mobileブランドを“別法人”であるウィルコム沖縄が運営している。

うまくいった「S」と「Y!」のすみ分け

 2015年にソフトバンクモバイル(現在のソフトバンク)が法人としてのワイモバイルを合併した際は、両ブランドの“すみ分け”が1つの課題とされた。端的にいうと、月額料金の安さがトリガーとなって、ソフトバンクブランドからY!mobileブランドへの「乗り換え」が進み、ARPU(※)が落ち込むのではないかという懸念があったのだ。

※ Average Revenue Per User:1契約者当たりの平均収入

 ソフトバンクでは両ブランド間の行き来を「番号移行」と呼んでいる。合併後の2016年度は「ソフトバンク→Y!mobile」の番号移行が圧倒的に多く、この懸念は事実上当たってしまった。

 しかし、ソフトバンクブランドが超大容量のパックプラン「ウルトラギガモンスター」を導入した2017年度は、「Y!mobile→ソフトバンク」の番号移行も増加。そして2018年度は、第3四半期までにおいて双方向の番号移行がほぼ均衡するように。ARPUも上昇トレンドとなった。

番号移行状況
2月5日の決算説明会で初めて公開されたソフトバンクとY!mobileの「番号移行」状況。「Y!mobile→ソフトバンク」方向の移行が増えた結果、両方向の行き来がほぼ均衡。ただし、縦軸の数値が示されていないため、実数は分からない

 現在、沖縄県以外に所在する、既存のY!mobileショップと商圏が重複しないソフトバンクショップにおいて、Y!mobileブランドの商品も取り扱うケースが増えている。店舗によっては、新築あるいは改装のタイミングで「SoftBank」「Y!mobile」両ブランドが目立つような看板を掲げるケースもある。改装したショップの風ぼうは、まるで「ソフトバンクショップ兼Y!mobileショップ」のようだ。

 両ブランドの行き来が均衡トレンドになったのは、データ通信容量に対するニーズをブランドで振り分けたことはもちろんだが、ショップの「ダブルブランド化」も貢献しているようだ。

Y!mobileショップ検索
Y!mobileのWebサイトで「ソフトバンク」をキーワードに店舗検索すると、沖縄県を除く全国のソフトバンクショップが「Y!mobileショップ」としてヒットする
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