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「ソフトバンク」と「Y!mobile」 2ブランド併存戦略の“功罪”(2/3 ページ)

ソフトバンクには「ソフトバンク」と「Y!mobile」の2ブランドが併存している。同社は両ブランドの料金プラン設定などを変えることでより幅広いニーズに応えようとしているが、課題もある。両ブランドは、今後どうなるのだろうか。

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複雑な成り立ちゆえに課題も

 おおむねうまく行っているように見えるソフトバンクとY!mobileの2ブランド戦略だが、両ブランドが元々は別のMNOだったことに起因する課題もある。

課題1:煩雑な「番号移行」

 1つが、番号移行が同ブランド内でのプラン変更よりも煩雑である点。番号移行は、事実上MNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティー)の手続きと同じで以下の手順を取る必要がある。

  1. 移転元ブランドにおいてMNPによる転出(ポートアウト)を申し出る
  2. 移転元ブランドのMNP転出番号を取得する
  3. 移転先ブランドで転出番号を使った「新規契約」手続きを行う

 もっとも、先述のダブルブランドショップなら、一部の契約を除いてワンストップで手続きできるようになっている。Y!mobileブランドからソフトバンクブランドへの移行については「番号移行プログラム」を適用すると転出手数料などが免除される。

 とはいえ、同じブランドでさまざまなプランを用意している他キャリアと比べると、移行が若干面倒であることは否めない

 番号移行をプラン変更だと捉えた場合の課題について、2月5日の決算説明会で関連する質疑があったので紹介したい。


―― NTTドコモは自身のブランドで値下げ方針を打ち出して、KDDI(au)もそれに追随する方向です。先ほどY!mobileブランドで(低価格ニーズに応えるという)話がありましたが、メインブランドでの値下げに対抗するという観点で、ソフトバンクブランドにおける値下げは検討していないのですか。

宮内謙社長 「メインブランド」という考え方は少し違っていて、ソフトバンクブランドとY!mobileブランドは一体化してビジネスをしています。現在、1500店(のソフトバンクショップ)は両方の看板を掲げています。

 安い料金を求めるお客さまにはY!mobileで小・中容量のサービスを提供して、ソフトバンク(ブランド)では大容量のサービスを提供しています。

 他のキャリアさんが大容量プランをタダに近い値段で出してきたら話は別かもしれませんが、メールしかしないユーザーがいる一方で、「ゲームをしたい」とか「動画を見たりアップしたりしたい」というニーズも増えています。そういう観点では、ソフトバンクブランドの「ウルトラギガモンスター+」は良い商品だと考えていて、これを引き続き訴求していきたいと思います。

―― ということは、ソフトバンク(ブランド)にいるシニア層をY!mobileに移行する施策も実施するということでしょうか。

宮内社長 皆さん勘違いされていますが、「シニアの人はちょっと使い(小容量)でいい」というのは大間違いです。私たちのユーザー調査でもそれは分かっています。 「(使い方を)教えてもらったら、本当は動画を撮るなどいろいろやりたい」という人もいるのです。

 (これから増えるであろう)4Kや8Kといった映像をバンバン見たい人なら(シニアでも)大容量プランに入ると思います。スマホの使い勝手が分からないという人のエントリー(入口)としてはY!mobileも良いのですが、使い方やバリュー(価値)を知った人ならソフトバンクブランドに移行すると思います。

―― ユーザー視点では、ソフトバンクとY!mobileのブランド変更は「番号移行」という形で、Web上で簡単に手続きができる性質のものではありません。両ブランドを(サービス面も含めて)一体化できない理由は何なのでしょうか。

宮内社長 会社としては(沖縄県を除いて)一体化していますが、Y!mobileはY!mobileとしてブランド価値が高まっています。「Y!mobileは使いやすくて料金もシンプルでいいね」といった具合に評価されています。

 これをわざわざ変える(ブランド統一する)のはブランド戦略上得策ではありません


 質疑応答を見る限り、近い将来において番号移行の煩雑さの解消は難しそうだ。

質疑に応じる宮内謙社長
質疑に応じる宮内謙社長

課題2:ウィルコム沖縄の存在

 ソフトバンクのY!mobileの両ブランドの行き来が活発になったのは、ダブルブランドショップの存在が少なからず影響している。しかし、沖縄県にはダブルブランドショップが1店もない

 Y!mobileはソフトバンクの「もう1つのブランド」として認知されているが、実際は沖縄県のみ「ウィルコム沖縄」という子会社を介して運営している。沖縄県でのみダブルブランドショップを展開できない(あるいは展開しづらい)のは、こういう事情が関係していると思われる。両ブランドの行き来が若干煩雑な「番号移行」となってしまっているのも、沖縄県だけ別法人という事情が絡んでいると推測される。

 そこで、筆者は決算説明会でウィルコム沖縄に関する質問をしてみた。


筆者 ダブルブランドのショップが増えている中、沖縄県のみ1店もありません。恐らくウィルコム沖縄という別法人でY!mobileブランドを展開しているからだと思われますが、同社について、今後どうしていくお考えでしょうか。

宮内社長 ウィルコム沖縄は私たちと別に2社(沖縄電力と琉球放送)の資本が入っています。将来については現在検討中ですが、(ソフトバンクに)統合する方向で考えています。

 今もウィルコム沖縄を残しているのは、沖縄県において(旧)ウィルコムが(シェア的に)強かったという経緯もあります。今後は一体的に運営できるように取り組んでいきたいと思います。


 ソフトバンクとしては沖縄県についてもY!mobileブランドを直接運営したい意思を示した格好だ。沖縄電力と琉球放送(RBC)の意向次第だが、ソフトバンクがウィルコム沖縄を吸収合併するシナリオも考えられる。

ウィルコム沖縄
若干複雑な経歴を持つソフトバンクのモバイル通信事業。唯一、沖縄県でY!mobileブランドを展開する「ウィルコム沖縄」(画像)だけが企業として統合されていない

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