販売代理店が「完全分離プラン」の導入に強い危機感――サポート拠点としてのキャリアショップは生き残れるか:石川温のスマホ業界新聞
総務省の研究会で打ち出された「完全分離プラン」と「代理店届出制」。これらの影響を真っ正面から受けるのが、キャリアと契約してキャリアショップを運営する販売代理店だ。彼らは今、危機感を強めている。
今週、複数の販売代理店関係者と話す機会があった。彼らに共通する危機意識といえば、やはり「完全分離プランの導入によって、ショップ経営がどうなっていくのか」という点だ。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年2月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
キャリアショップは顧客のサポート拠点という存在価値がある。
完全分離プランが導入されれば、キャリアショップで端末が売れないにも関わらず、無償サポートだけを求められるという状況になりかねない。そうなれば、キャリアショップの存続も危うくなる。
多くの販売代理店関係者から聞こえてきたのは「サポートを有償で提供できないか」という訴えだ。世間を見渡しても、家電量販店のパソコンサポートなど、ほとんどの場合は有償だ。無償で機械やサービスの使い方を教えてくれたり、設定、データ移行などをやってくれる業界は他にないだろう。販売代理店としてはサポートの有償化に踏み切りたいものの、他のところが無償でやっていれば、他社にユーザーが流出してしまうのが目に見えている。
「ほかにお客を獲られるくらいなら無償でサポートする」という袋小路に陥っているのだ。
完全分離プランの導入で、ショップでのサポート体制が注目される中、NTTドコモの吉澤和弘社長は「ショップに対して、サポートをした場合の手数料を渡すということも検討しなくてはいけない」と語っている。また、ソフトバンクの宮内謙社長は「サポートの有償化も検討しなくていけない」と発言している。
いずれにしても、サポートのあり方を見直す時期に来ているのは間違いないのだ。
一部ではサポートを有償化しているショップも存在する。そうしたところでは「有償なので、お客さんはわからないことは好きなだけ聞ける。一方、ショップ店員も有償なので、お客さんが納得いくまで教えようと努力する」(ショップ関係者)という効果もあるようだ。
とはいえ「他社が無償なら、うちも無償で」という販売代理店は多い。
総務省は完全分離プランやショップの届出制を導入しようとしているが、そんなことより、「キャリアショップはサポートを有償で提供すべき」といった規則を作り、違反したところには罰則を設けるくらいことをしたほうが、よっぽどショップにとって喜ばしいことになるのではないだろうか。
たびたび、メルマガでも触れているが、店頭でのサポートが不要な人には4割安い料金プランを提供。そのプランを契約している人で、サポートが必要になったら、適切なサポート料金を支払って店頭で解決するというやり方が、最も「不公平感のない料金プラン」のような気がしてならない。
サービスはタダではない。料金値下げを論じるのであれば「サポートを受けたい人はお金を払う」という習慣をつけさせる必要があるのではないか。
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