分離プランは楽天に“不利”――米国シンクタンクから見た日本の通信行政(2/2 ページ)
米国のシンクタンクがモバイル通信行政に関するシンポジウムを開催した。主催者の視点から見ると、日本のモバイル通信行政に関する政策の問題点は大きく4つあるようだ。それらを簡単に解説する。
端末購入補助の禁止:RMNがむしろ不利に?
海外においてモバイル通信料金が「安い」とされる国・地域は、MNO(自ら通信ネットワークを構築するキャリア)が4社体制であることが多い。
日本でも、RMNが2019年10月に4社目のMNOとしてサービスを開始する予定であることから、MNOの通信料金の低廉化が進むとの期待もある。マンデル氏も「料金を下げるのに一番効果的なのは“競争”。3キャリアよりも4キャリアの方が良い(値下げ効果がある)」と語る。
ただ、4番目のキャリアは後発ゆえにインフラ面で先行キャリアよりも不利な戦いを強いられる。インフラ投資をするためには契約者数(≒収入)を増やす必要があるが、そのためには料金面やサービス面で特色を出さなくてはならない。
一番分かりやすいのは料金面での戦いだが、マンデル氏は「端末の購入補助金を禁止すると、RMNがユーザーを獲得するためのツールの1つを奪われることになる」と警告している。端末の購入補助を禁止すると、新規MNOが既存MNO以上に苦しい戦いを強いられる可能性を示唆しているのだ。
過剰規制:規制への対応がイノベーションを阻害
総務省では、研究会や検討会を通してガイドラインや省令の改正を随時検討しているが、キャリアや代理店がその改定にリソースを割かれすぎているという指摘がある。
マンデル氏はこの点にも言及。規制を「小石」、イノベーションを「川」に例えて、1つや2つの小石は川の流れを止めることはないが、たくさんの小石(規制)を投げ入れ続ければ、いつかは川をせき止めてしまうとして、細かいの規制を増やし続けることがイノベーションの阻害につながる可能性に懸念を示した。
規制が増え続けると、キャリアや代理店はその対応に忙殺される。結果として技術革新や顧客対応がないがしろとなり、「お上」に何でもお伺いを立てる受け身の姿勢になってしまう――マンデル氏は警鐘を鳴らす。
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