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インタビュー

総務省はなぜ「分離プラン」を徹底させたいのか? 電気通信事業部長に聞く(2/3 ページ)

2019年のモバイル業界は、通信料金と端末代金を分けた「分離プラン」によって変わろうとしている。分離プランでは、通信契約を伴う端末代金の割引や、端末購入に伴う通信料金の割引が禁止となる。総務省が分離プランを推進する狙いはどこにあるのか?

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端末割引が効き過ぎると、市場のメカニズムが見えにくくなる

―― よく言われていることですが、分離プランによって高額な端末が売れなくなり、端末メーカーにとっては大きな打撃になることが予想されます。

秋本氏 これも有識者会議では指摘がありました。割引があることによって、本来の価格が見えなくなっていた。本来の価格が示されれば、別の端末も選択肢になり得ます。端末市場の競争も、通信料金全体でまかなわれる割引によって見えにくくなっていたのではないでしょうか。

 なぜ特定の端末だけ大幅な割引が行われるのか。本来、ハイエンド、ミッドレンジ、ローエンド、いろいろな選択肢がある中で、料金と機能を照らし合わせて選択されるべきです。割引が効き過ぎることで、端末市場のメカニズムが見えにくくなっていたのではないか? というご指摘をいただきました。

―― 今までが異常だったということでしょうか。

秋本氏 異常と言うかは置いておいて、一定のビジネスモデルが行くところまでは行ったということだと思います。

―― 2019年〜2020年にかけて5Gのサービスが始まり、5Gに対応した端末が出てきますが、新たな技術を載せるということで5G端末は高くなることが予想されます。そうなると、分離プランでは5G端末も売れにくくなり、新技術の浸透を阻害するという指摘もあります。

秋本氏 割引をしてまで(5Gを)普及させたいと思う主体が、端末メーカーなのか通信キャリアなのか、別の主体なのか。端末メーカー自身が割り引きたいということであれば、本来の価格はもう少し工夫できるはずです。

 高額な5G端末もあれば、ミドルで勝負しようというメーカーさんも出るかもしれない。高額で売れないのであれば、考えると思うんですよね。機能をそぎ落として少しでも安い価格で市場に出してみるとか。われわれは、通信契約とセットで端末代の割引を約することを禁止していますが、端末メーカーが単体で割り引くことまでは(禁止の)対象にはしていません。

MNPを条件にした割引も禁止に

―― 端末代金の割引自体は禁止していないということで、分離プラン施行後も、例えば販売代理店が独自に過度な端末割引を行う可能性はあります。そこについて、何らか規制を設けることはあり得ますか?

秋本氏 どこまで独自で、どこまで通信契約とひも付いているかということだと思います。

―― 例えば、MNPで乗り換えると一括0円といった案内もよく見かけますが、契約形態を条件にした割引もNGになるのでしょうか?

秋本氏 そうですね、通信契約とひも付いていると、検討対象にはなりますね。

総務省
店舗が独自で行っている、MNPを条件とした割引もできなくなる

―― いくらまでなら割引を認めるといったボーダーラインを設けることはありえますか?

秋本氏 そうですね……。これから国会審議なので、なるべく抜けがないように分離で通信料金と端末代金を示していきたい。高すぎる違約金や期間拘束の有無による料金差で縛ることをやめていただきたい、ということを国会にご判断いただく形ですね。

―― 可決される可能性は高いとみていらっしゃいますか?

秋本氏 いやぁそこは……。これからご審議で、私どもとしてはお願いする立場なので、成立を願っております。

端末購入補助の原資を通信料の値下げに

―― 完全分離プランでは「docomo with」はNGになります。ただ、このプランは、機種変更をそれほどしない人が毎月1500円の割引を受けられます。そうしたユーザーメリットのあるプランを排除することにならないでしょうか。

docomo with
特定端末を購入すると、毎月1500円を割り引く「docomo with」

秋本氏 (分離プランの要請は)特定の端末を買うことによって通信料金水準が違うのがおかしいくないですか? というところから出発しています。買い替えない人に対しても、通信料金水準全体を引き下げてくださいよねと。

―― 例えば、docomo withの対象を全てのドコモ端末に広げるのなら、問題ないのでしょうか?

秋本氏 いや、買い替えないユーザーもいらっしゃいますから。もう一度言います。端末販売業者なんですか? 通信事業者なんですか? どちらに力点を置いているんですか? という点ですね。端末の頻繁な買い換えを促すことによってビジネスを成り立たせるのではなく、端末購入補助の原資を通信料金に還元してほしいということです。

―― では、実際に分離プランが義務化されたときに、通信料金は低廉になると。

秋本氏 全体としては、ですね。

―― どれぐらい割り引かれるとみていますか?

秋本氏 それは事業者ごとの経営判断だと思います。全体として料金低廉化の環境を整え、それぞれのプランがどんな料金水準になるのかを比較の上で、なるべく期間拘束なく、通信事業者の乗り換えが可能な環境を整えることがわれわれの役割です。

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