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インタビュー

なぜゆうちょ銀行がスマホ決済に参入するのか? 「ゆうちょPay」の狙いを聞くモバイル決済の裏側を聞く(2/2 ページ)

2019年5月、ゆうちょ銀行が提供する「ゆうちょPay」がスタートする。口座数だけで約1億2000万という巨大銀行グループの動向が気になる人は多いだろう。ゆうちょPayが参加するGMOペイメントゲートウェイの「銀行Pay」や、そもそも狙いを聞いた。

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ゆうちょ銀行の口座を活性化させるための工夫も

 スマートフォン決済の市場は既に過当競争に入っており、ここでの生き残りは非常に厳しい。一方で表氏は「可能性のあるマーケットであり、ゆうちょならではの強みを考えて、これまで長い間活用いただいた口座を“お財布”代わりに使えるサービスを提供し、口座の活性化につなげていきたい」と述べている。

 ゆうちょ銀行特有の事情として、クレジットカードの他にデビットカードや「mijica(ミジカ)」のようなプリペイドのカード商品がある一方で、決済サービスについては既存の大手各社に「接続先」として利用されるだけで、一方的に顧客を取られることが多かった。

 口座数の多さゆえの事情ではあるものの、「ゆうちょ銀行自らが決済サービスに参入した以上、既存の事業者とは関係性が変わってくるため、接続済みのサービスから新規サービスまで、提携関係は慎重に考えていきたい」と表氏は述べる。ゆうちょ銀行のサービスを育て、それを阻害しない形での組み方を模索していくという。

 また過当競争の中でサービス淘汰(とうた)の波が遠からずやってくるが、これについても「短期間で投げるつもりはない。ただ当然ビジネスなので、一定期間をおいて判断していく必要はある」(表氏)とした。

 口座を活性化するためのサービスのアイデアは既にある。例えばゆうちょPayのアプリでは即時引き落としが発生するため、上限金額を設定した使いすぎ防止の他、上限額のうちの何%を現在使おうとしているのか、といったデータを参照できる仕組みが標準で用意される。

 家計簿アプリなどの連携は現時点でないものの、履歴自体はすぐに確認できるという。またLINE Payやメルペイのように、iDやQUICPay、Suicaといった非接触決済が可能なサービスもある。現時点でゆうちょPayに対応計画はないものの、「お客さまのニーズを見ながら追加を検討する」と表氏は説明する。

 QRコードを使えないような場所ではむしろ、mijicaなど他の決済手段と組み合わせて用途に応じて使い分けてほしいという考えのようだ。最終的な目標は口座活性化という部分にあるからだ。

 残念ながら銀行Payは決済専用のネットワークのため「個人間送金」には未対応だが、銀行間送金機能を強みとするみずほ銀行の「J-Coin Pay」もあり、後発組各社はサービス間で特色を持たせることで差別化を図る傾向がある。ゆうちょPayの場合、その最たるサービスは「通常払い込み(帳票)にQRコード(バーコード)が表示されていれば、ゆうちょPayアプリ上で支払いが可能」というものだ。

 公共料金などをコンビニや銀行に持ち込んで支払ったことのある方がいるかと思うが、混雑時の待ち時間や周囲からのプレッシャーでつらい思いをした人は少なくないはずだ。まだ全ての支払いに対応するわけではないものの、24時間いつでもアプリで支払えるというのは強みの1つとなる。

 また、銀行ATMで行う「現金の引き出し」を駅の券売機で可能にするサービスも模索している。東急電鉄と発表した仕組みにより、東急沿線のQRコード対応券売機でゆうちょPayのQRコードをかざすことで現金引き出しが可能になる。

ゆうちょPay
東急電鉄の券売機でゆうちょPayのQRコードをかざすと、現金を引き出せる

 この仕組みはキャッシュアウトと呼ばれる。例えば米国では、スーパーのレジでATMカードやApple Payなどを使って買い物をした場合に「Cash Back」を指定することで現金の引き出しが可能だが、これを駅の券売機で実装したのが今回の仕組みだ。

 これは一般に「ATMを削減してもサービスレベルを落とさないこと」を目的に設置されるものだが、全国レベルでの窓口やATMネットワークを持つゆうちょ銀行でどれだけ意味を持つかは難しいところといえる。だが表氏は「ソフトウェアのいいところは追加が可能なところ。ユーザーニーズを取り込んでサービスを活性化させたい」と述べており、今後もさまざまな取り組みが続いていくと思われる。

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