4Gサービスの準備は「順調」 料金は「透明性を高める」――MNO参入準備を進める「楽天モバイル」(2/3 ページ)
楽天が2019年度第1四半期の連結業績を発表した。モバイルセグメントは、楽天モバイルのMNO化に向けた準備で先行投資が続いている。その「MNO化」は順調なのだろうか? 決算説明会の模様を簡単にお伝えする。
LTE(4G)サービスは夏頃に「大規模実証実験」 料金はどうする?
楽天モバイルは、2018年4月に割り当てを受けた1.7GHz帯(Band 3)の新帯域を使ってLTE(4G)通信サービスを行う。同年12月には基地局の建設を開始し、準備を着実に進めているという。
廣瀬研二副社長(CFO)によると、今年(2019年)夏ごろに「大規模実証実験」を実施し、その後MNOサービスの料金プランや価格戦略を発表し、10月のサービスインにつなげるという。
問題は「料金プラン」だ。既報の通り、2019年3月14日10時以降にMVNOサービスを契約した人は10月以降に同じプランでMNOサービスに移行できるが、それ以前にMVNOサービスを契約した人、あるいはMNOサービスを新規契約した人にはどのようなプランを提供するのかはいまだに明らかとなっていない。
競合他社の様子を見ると、ドコモは新プランを発表し、ソフトバンクも低・中価格帯のY!mobileブランドで分離プランの導入を表明。auも何らかの形で料金プランの見直しを行う予定となっている(参考記事)。ある意味で、料金面における楽天モバイルの優位性は薄れつつある。
決算説明会では、10月のサービスインに対する準備の進捗(しんちょく)や料金プランに関する疑問について、報道関係者が山田副社長に質問する場面も見受けられた。
―― MNOサービス開始に向けた準備状況を教えてください。
山田副社長 日々いろいろな課題がありますが、それらをしっかりこなしつつ、10月のローンチに向かっています。基本的にはオントラック(計画通り)です。
―― ドコモが新料金を発表してきました。他のキャリアとどう差別化していくのか、方向性だけでも教えてください。
山田副社長 他社さんが(新料金などを)発表をしたら、それは当然フォロー(確認)しています。ただ、私たちとしては「他社さんがこうだから」というよりはお客さま第一の目線で、分かりやすく、透明性の高い料金を打ち出したいと考えています。
もちろん、低廉な求めやすい価格になるとは思いますが、どういう形で発表するなど、詳しいことを話すには時期尚早かなと思っています。
―― 決算説明資料には、(2019年)夏頃の大規模実証実験と10月のサービス開始予定の中間点に「料金プラン、価格戦略発表」と書いてあります。これは「料金プランの発表は夏以降」ということを示しているのでしょうか。
山田副社長 料金発表の時期はあえてぼかして表記しました。まだ決まったものはありませんし、前過ぎると(競合他社に)手の内を見せてしまうことになってしまいます。
―― MNOへの参入を表明した当時と比べると、「安さ」を始めとする楽天モバイルの強みを発揮しづらい環境になっていると思います。そのことをどうお考えでしょうか。
山田副社長 あまり他社さんの価格についてコメントするのも適当ではないですが、まだ(他社の料金には)まだ分かりにくい部分があり、私たちとしては差別化できる余地は十分にあると思います。
例えば「最大3〜4割(料金が)下がります」と言われても、どこから値下げしたのか、とか(条件面が)複雑ですよね。料金が1種類だけで、それで(全員が)3〜4割下がるわけではありません。
そういうこともあり、従前と比べて「差別化しにくくなった」とはそれほど思ってはいません。
―― 価格以外の面(の競争)はどうでしょうか。
山田副社長 これも手の内を明かすことになってしまうのであまり詳しくは話せませんが、ユーザーエクスペリエンス(UX)という言葉もありますが、「お客様第一目線」での総合的な使いやすさなど、改善の余地はあると考えています。
いろいろな場面で、私たちは「携帯業界を民主化する」と言っていますが(参考記事)、それは料金を含むもろもろの事柄をユーザー目線で変えていくことです。ネットワークだけではなく、店舗での体験など(いろいろなことに)イノベーションを起こすことができると考えています。
残念ながら、料金プランの発表はもう少し先の話となりそうだ。ただ、シンプルさを追求しようという姿勢は伺える。
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