端末割引の負担減り、KDDIとソフトバンクが増収――解約率も大幅に改善。法改正は「キャリアだけに恩恵」:石川温のスマホ業界新聞
携帯電話大手3キャリアの2019年度第3四半期決算が出そろった。KDDIとソフトバンクの決算の数値を見ると、解約率の低下や販売奨励金(インセンティブ)の出費削減などでむしろ“好調”さを増している。
この2週間でNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが決算会見を実施。また、いくつかのMVNOがイベントや決算会見を行ったことで、昨年10月に施行された法改正の影響がなんとなく見えてきた。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年2月8日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
施行直後の10月は総務省の割引規制により端末の販売が大幅に落ち込んだ模様。ソフトバンクの宮内謙社長は「10月1日からの完全分離に加えて消費税が上がったので販売は落ちた。ただ、9月までは激しくサブシディ(補助金)を出してどんどん売った」という。9月まで駆け込み需要があり、10月に一気に落ち込んだ。しかし、11月、12月にかけては回復傾向にあったというのは、3社の共通認識だ。
また、10月以降、ソフトバンクの解約率が大幅に改善したというのは注目に値する。ソフトバンクのスマホ解約率は第3四半期が0.53%で、前年同期は0.79%、前々年同期の0.85%に比べるとかなりの改善が見られる。
割引に対する規制が入ったことで、MNPが硬直化し、流動性が一気に落ちたのだろう。
この反動は、MVNOでも見られる。
イオンモバイルによれば「昨年10月以降、解約率が低減した。おそらく、イオンモバイルでは契約の縛りがないために、これまでMNPでキャリアに戻る人が多かった。しかし、昨年10月以降、キャリアでの競争がなくなったため、イオンモバイルを辞める人が減ったのではないか」(イオンリテール 専門事業本部、井関定直モバイル事業部長)という。
確かに市場は総務省の狙い通り健全になったのかも知れないが、競争は確実に減っているようだ。
結局、MVNOよりもサブブランドに人気が集中しているようで、宮内社長によれば「ワイモバイルが強くなって契約者数が500万を超えた」というし、UQモバイルも先日、200万契約を突破したというアナウンスがあったばかりだ。
一方で、MVNOは苦戦し、IIJmioの契約数が減少に転じてしまっている。
決算全体を見ると、KDDIとソフトバンクが好調な感がある。
ソフトバンクは、ワイモバイルやLINEモバイルの人気もあってARPUが落ちているものの、月あたりの割引額も大幅に減少していることにより、結果として増収増益につながっている。今後、さらに分離プランが浸透することで、収益構造がより改善されることになるだろう。
総務省の法改正は、キャリアを端末割引の呪縛から解き放ち、競争をしなくていい生ぬるい環境に逃しただけに過ぎない。このままでは、市場全体で流動性が落ち、料金競争など夢の話に終わりかねない。総務省は法改正が本当に正しい手法だったのか、早急に見直す必要があるだろう。
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