「Leitz Phone 1」誕生の背景は? ライカとソフトバンクの思い
ライカ初のスマートフォン「Leitz Phone 1(ライツフォン ワン)」が7月以降、ソフトバンクから登場する。2019年7月にソフトバンクからライカにコンタクトを取り、開発がスタート。ライカは2016年頃からスマホカメラに注目しており、両者の思いが一致した。
ライカ初のスマートフォン「Leitz Phone 1(ライツフォン ワン)」が7月以降、ソフトバンクから登場する。Leitz Phone 1はどんな経緯で誕生したのか。6月17日に開催した発表会で、ライカカメラジャパンの福家一哲社長と、ソフトバンク 常務執行役員の菅野圭吾氏が語った。
Leitz Phone 1開発のスタート地点は2019年7月にさかのぼる。ソフトバンク側が2019年7月にライカカメラ社主アンドレアス・カウフマン氏に会って交渉を開始。「ライカとしても、(スマートフォンの)カメラが進化したことで、チャレンジしたいという話をいただいた」とのことで、開発が決定した。
その後、開発パートナーとしてシャープが加わることが決まり、ソフトバンク、ライカ、シャープの3社で開発を進めてきた。そのため、Leitz Phone 1はソフトバンクが独占販売する形となる。並行して「AQUOS R6」の開発も進み、結果としてAQUOS R6は2021年6月、Leitz Phone 1は7月以降と、ほぼ同時期に発売することになった。
一方、ライカ側も「2016年頃から携帯電話のカメラを注視してきた」(カウフマン氏)という。「人々がいつでもすぐに使えて、つながれるカメラに未来を感じたから」と同氏は続ける。2016年と言えば、ライカと共同開発したカメラを搭載したHuaweiのスマートフォン「HUAWEI P9」が発売されたタイミング。ここから“ライカのカメラ”がモバイル業界でも脚光を浴びるようになる。このHuaweiスマホの成功が、ソフトバンクとの提携を後押ししたことは想像に難くない。「ライカの伝統、ノウハウ、技術を結集してライカ初のスマートフォンを開発した」と同氏は言う。
福家氏は「100年にわたる歴史を持つライカ、写真の歴史そのものにとって、Leitz Phone 1は新たな一章を刻む存在になる」と語り、「日々、撮影するスマートフォンでの写真のクオリティーが高まり、撮影する喜びと感動がさらに高まると信じている」と期待を寄せた。
Leitz Phone 1はカメラだけでなく、デザインにもライカのDNAが注入されている。Leitz Phone 1で目指したのは「シンプルさ、本物であること、品質へのつよいこだわり」だとデザインのヘッド、マーク・シェパード氏は言う。「最高品質の素材、精密なエンジニアリング、側面のローレット加工により、正統のライカルックと触感的な使い心地を実現した」と同氏。Leitz Phone 1は「ライカの機能的で感性的なデザイン哲学を完璧に再現した」と自信を見せる。福家氏も「特徴はシンプルで、少し控えめで、でもライカと分かるデザイン」と言う。ソフトウェアでも過度なグラフィックは抑え、UXでは分かりやすさと使いやすさを追求した。
カメラに搭載する1型センサーはAQUOS R6と並んで、スマートフォンでは最大級のサイズとなる。例えば、他のスマートフォンが搭載する1/1.28型のセンサーと比べると55%大きく、「同じ瞬間を撮影しても、55%多くの光を捉えられる」とプロダクト・マネージャーのヘンドリック・クルーゲ氏は言う。ディテールを精細に記録でき、タンポポの綿毛や犬の毛穴などを、拡大した写真からもしっかり確認できることをアピールした。
ライカのカメラを搭載したAQUOS R6も扱う中で、ソフトバンクがLeitz Phone 1を投入する意義はどこにあるのか。ソフトバンクはXiaomiの「Redmi Note 9T」やモトローラの「motorola razr 5G」なども独占販売。さらに2021年内には、バルミューダのスマートフォンもソフトバンクが独占販売することを予告している。AQUOS R6はドコモも扱っているためキャリアの個性が出しづらいが、ソフトバンク専売モデルを増やし、さらにライカやバルミューダといったブランド力の高い異業種とコラボすることで、同質化が指摘されるスマホで他キャリアと差別化を図ることができる。
ライカにとっても、ソフトバンクがLeitz Phone 1を扱うメリットは大きい。Leitz Phone 1の価格は18万7920円(税込み)だが、「トクするサポート+」を適用すれば、最大で半額の9万3960円の支払いが免除される。ライカストアでLeitz Phone 1を単品で販売してもよさそうだが、キャリアの端末購入プログラムを介した方が買いやすくなることから、ライカはあえて自らが販売するという選択肢を取らなかったと考えられる。
ライカのスマホとして注目度の高いLeitz Phone 1だが、キャリアの戦略という観点から見ると、ソフトバンクは次にどんなパートナーとコラボしてどんなスマホを出すのだろう? と期待せずにはいられない。そして製品名の「1」からは、Leitz Phoneをシリーズ化して長期的に展開していこうという狙いも感じられる。実際、シャープはAQUOS R6を開発するにあたり、ライカと長期的なパートナーシップを結んだと明言している。今後、ライカのカメラを搭載したスマートフォンはますます増えていきそうだ。
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