総務省が「SIMロック原則禁止」のガイドライン改訂を確定 10月1日から順次適用 「eSIMガイドライン」も新設
総務省が「スイッチング円滑化タスクフォース」を通して議論を進めてきた「SIMロックの原則禁止」。パブリックコメントの募集手続きを経て、その方針が正式にガイドラインに盛り込まれることになった。同時に、同タスクフォースで議論を進めてきた「eSIMの普及」に関するガイドラインも新設される。
総務省は8月10日、「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」を改訂した。今回の改訂では、主に移動端末設備(携帯電話端末)のSIMロックに関するルールを改訂しており、原則として10月1日から適用される。ただし、一部の内容は10月1日以降に適用されるものもある。
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SIMロックの原則禁止(10月1日に発売する端末から適用)
今回のガイドライン改定では、2021年10月1日以降に発売する端末について、SIMロック状態で販売することを原則禁止する。
ただし、以下のプロセスを経た上で総務省に確認を取った場合は、同日以降に発売する端末でもSIMロックを設定して販売可能だ。
- 販売する事業者においてSIMロック以外の利用制限方法を検討すること
- SIMロックを掛ける判断に至った経緯や目的、運用計画などを記した資料を用意すること
- 総務省による有識者への意見聴取を経ること
例外的にSIMロックの設定が認められた場合、事業者はその運用計画と運用方針を公表すると同時に、ユーザーにTVCMやインターネットなどで周知することが求められる。
また、SIMロックの運用状況を月次で総務省に事後報告する義務を負う。報告に盛り込まなければならない主な情報は以下の通りだ。
- 販売した端末の機種
- 販売した対象者
- 販売が行われたチャネル(店舗の場合はその名称も)
- 機種ごとの販売台数
- 機種ごとのSIMロック解除台数
なお、改訂されたガイドラインに従ってSIMロックが設定された端末については、ロックすべき要件を満たさなくなった場合に、手続きを求めることなしに無料でロックを解除することが求められる。合わせて、インターネットや電話でSIMロックの有無を簡単に確認できる方法を用意することも必要となる。
利用者に対する情報提供
SIMロックが原則禁止されることに伴い、ガイドラインの「SIMロック解除に当たり留意すべき事項」は「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関する留意点」に改められる。
今回の変更では「SIMロック以外の端末に設定された機能制限」についても、正当な理由がない限り、ガイドラインに準じて対応するように求めている。つまり、SIMロック以外の機能制限も原則として掛けないことが好ましいとしている。
SIMロックを掛けた端末を販売する場合、その旨を購入者に周知しなければいけない。合わせて、SIMロックの掛かった端末の購入者に対しては、追加でSIMロックを解除する条件や手続きについて説明する必要もある(総務省資料より:PDF形式)
SIMロック解除手続き
SIMロックの解除手続きについて、11月1日から、インターネットや電話を使った簡単な方法でSIMロックの有無を確認できるようにすることが義務付けられる。ただし、以下のいずれかに当てはまる場合はその限りではない。
- 9月30日までに既存端末のロック解除の手続きを全て実施した上で、10月1日以降は全ての端末をロックなしで販売する場合
- 事業者側がSIMロックの有無を確認できない端末(代替手段で対応)
さらに、2023年10月1日から全てのロック解除手続きを無料で受け付けることが義務となる。簡単にいうと、店舗や電話窓口など人手を介する場合も無料で対応することが原則となる。ただし、システム上の問題や店舗の事情により対応が難しい場合は、総務省への報告と確認を経て、この措置の対象外とすることもできる。
インターネットを使ったSIMロック解除手続きについては、2022年5月1日から終日(24時間)受け付けることが義務化される。端末によってはロック解除の手続きから反映までに時間を要する場合もあるが、遅くとも翌日までに解除を完了できるように対応することが求められる。
適用に関する例外
今回のガイドラインには、主に以下のような例外規定もある。
SIMロック/機能制限に関する例外
SIMロックの原則禁止と、SIMロック以外の機能制限に関する方針は、「汎用(はんよう)的に通話やデータ通信を行うための端末」、具体的にはスマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン(ケータイ)、モバイルルーターやUSBモデムにに適用される。
その他の端末については、SIMロック解除の禁止と機能制限に関する方針は当面の間適用されない。言い方を変えると、据え置きのワイヤレスルーター(ホームルーター)など、汎用性が低いと認められる端末にはSIMロックや機能制限が容認されるということになる。
9月30日までに発売された端末の扱い
2021年9月30日までに発売された端末については、販売時期によって取り扱いが異なる。
【9月30日までに販売された分】
改訂前のガイドライン(2019年11月22日改訂分)に従って対応する。具体的には以下の通りとなる。
- 一括払いで購入した端末は、SIMロックを解除した状態で販売する
- 信用確認措置(※1)を行った場合は、分割払いで買った端末でもSIMロックを解除した状態で販売する
- 信用確認措置を行わない場合は、SIMロックを掛けた状態で端末を販売できる(※2)
(※1)2カ月分の「保証金」の支払い(端末単体を分割払いで購入する場合)、口座振替やクレジットカードによる支払い実績(回線契約とひも付けて分割払いで購入する場合)など
(※2)購入から100日経過した場合は、SIMロック解除の手続きに応じる義務がある
【10月1日〜2023年9月30日に販売された分】
2021年10月1日から2023年9月30日までに販売された分のうち、販売時にSIMロックが設定されているものについては、以下の扱いとなる。
- 販売時以外のロック解除手続き:改訂前のガイドラインに従って対応する
- 販売時のロック解除手続き:2022年9月30日までに販売する分は、改訂前のガイドラインに従って対応する。2022年10月1日以降は改定後のガイドラインに従って対応する(原則としてSIMロックを解除して販売)
「eSIMサービスの促進に関するガイドライン」も新設
移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドラインの改定に合わせて、総務省は「eSIMサービスの促進に関するガイドライン」も新設する。
- →ガイドライン本文(PDF形式)
このガイドラインでは、eSIMに関する以下の事項が盛り込まれている。
事業者の変更を妨げる行為等の禁止
正当な理由なく、利用者がeSIMのプロファイルを書き換えることを妨げてはならないとされている。これは、事業者の変更だけではなく、事業者内のプラン/ブランド変更にも適用される。
eSIMサービスの促進
eSIMの提供方法や、本人確認方法に関する指針が示されている。本人確認については、eKYC(電子な方法による本人確認)が適当とされている。
eSIMサービスの促進に当たり留意すべき事項
eSIM提供に当たり、利用者へのサポート(サービス周知を含む)をしっかり行うことと、セキュリティの確保を求めている。
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