決算で判明、明暗分かれたpovoとLINEMO “オンライン”以外での差別化がカギに:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
鳴り物入りで登場した大手キャリアのオンライン専用料金ブランド/プランだが、開始から1年たたずに、サービスの姿を変えつつある。LINEMOは3GBプランを追加し、povoは月額0円からの「povo2.0」にリニューアル。特に支持されているのはpovo2.0のようだ。
明暗を分けたのは“オンライン”以外の差別化
2社とも4月以降、解約率が一気に上がり、競争が激化していることもうかがえる。KDDIは、2020年度の解約率が通期で0.71%だったのに対し、第1四半期は0.83%に増加。「外の人(他キャリア)が強く、解約率が上がっていたが、6月以降はUQ mobileを強化し、電気サービスとの連携や固定通信との連携をやり、モメンタムが戻ってきた」(高橋氏)というものの、第2四半期の解約率も0.74%と水準は高い。「より下げなければいけない」(同)というのがKDDIの認識だ。povo2.0のスタートも、こうした動きの一環といえる。
同様にソフトバンクも、2020年度は通期で0.71%に抑えていたスマートフォンの解約率が、第1四半期には1.01%に急増。第2四半期は0.91%に抑えることはできたが、料金値下げによる他社の影響は依然として大きい。ただし、先に挙げた宮川氏の「Y!mobileを強化していきたい」というコメントを踏まえると、ソフトバンクはオンライン専用ブランドのLINEMOではなく、もともと好調だったY!mobileに磨きをかけていく方針のようだ。
実際、ソフトバンクのスマートフォン累計契約数を見ると、1年でY!mobileが大きく伸びているのに対し、LINEMOとLINEMOモバイルは合算で微増、ソフトバンクブランドは純減していることが分かる。料金を下げたいソフトバンクユーザーの受け皿になっていることに加え、他社からユーザーを獲得できているのはY!mobileというわけだ。povo2.0で新しい料金体系にチャレンジするKDDIに対し、ソフトバンクは得意分野をさらに伸ばそうとしているといえる。
方針が大きく分かれたKDDIとソフトバンクのオンライン専用料金ブランド/プランだが、現時点でユーザーの支持が厚いのはpovo2.0といえる。一方のLINEMOは、Y!mobileとの差別化が十分図れていないようにも見える。ショップでのリアルなサポートの有無はY!mobileとLINEMOの大きな違いだが、割引まで加味すると料金差は小さい。さらに「Yahoo!プレミアム」が無料でついたり、PayPayとの連携で還元率が上がったりするのもY!mobileの魅力だ。
こうした点を加味すると、ユーザーがあえてLINEMOを契約する動機が弱くなる。オンライン専用ブランド/プランではいち早く200万契約に達しそうなドコモのahamoだが、これは同社がUQ mobileやY!mobileに相当するサブブランドを持っていないからこその勢い。KDDIがpovo2.0で料金体系を大きく変えたのも、UQ mobileとの差別化を明確にする狙いがあった。裏を返せば、“オンライン”だけではなかなか契約に結び付かないということだ。Y!mobileに注力するソフトバンクだが、LINEMOならではの工夫やサービスにも期待したい。
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