「20GBだけでは挑戦的ではない」 0円から使える「povo2.0」誕生の秘密を聞く(2/3 ページ)
基本料を0円に設定し、トッピングである程度自由にデータ容量を買い足していける仕組みを採用したKDDIのpovo2.0が好調だ。買い物をするだけでデータ容量が付与される「ギガ活」も、povo2.0の特徴といえる。そんなpovo2.0を導入した経緯や、現状の使われ方、ギガ活の今後などをKDDI Digital Lifeの代表取締役社長、秋山敏郎氏に聞いた。
20GBを中心に、安いところに重心を置かない
―― トッピングのラインアップが今の容量、期間になったのはなぜでしょうか。
秋山氏 細かいところは料金を考える専門の人間が緻密な計算をしていますが、私から出した要求は、そこまで安いところに重心を置かないということです。1.0からの進化ということで、中心線は20GB。そこは変えていません。ゴルフに例えると、大容量は長距離のドライバーで、3番アイアンが20GBですが、サンドウェッジやパターに近いものもあります。シチュエーションに応じて使い分けられるツールボックスのようなものをそろえようとしました。
今までは3番アイアンだけで生活していたようなものです。もっといろいろなクラブがあっていい。短く刻む場合はパターやサンドウェッジがあるという感じで、長い期間の大容量だけでなく、短く刻める低容量も入れました。ゴルフはやらないので、この例えが適切かどうか分かりませんが(笑)。
―― 僕もやらないのでよく分かりませんが、なんとなくニュアンスは分かります(笑)。ただ、ツールボックスをそろえる中で、3GBの次が20GBはちょっと飛びすぎなのでは……とも思います。10GBのトッピングは入れないのでしょうか。
秋山氏 どこまで入れていくかは、料金設計上、いろいろな議論があります。今回入れていないのは、あくまで20GBを中心線に据えているからです。ただし、大きなご要望があれば、今後変えていくこともありえます。
―― オンラインということもあり、ある程度トッピングの入れ替えはタイムリーにしていくのでしょうか。
秋山氏 カジュアルに出したり引っ込めたりすると混乱するので、そこまでは考えていませんが、新しく追加したり、ご要望があまりないものは入れ替えたりということはありえますね。
―― 決まった料金プランではなく、追加で購入するトッピングなので、入れ替えは既存の料金プランよりはやりやすそうですね。
秋山氏 おっしゃるように買い切り型なので、従来の料金プランよりそういったことはやりやすいと思います。
povo2.0はサブスクの考え方とは真逆
―― コンテンツトッピングがあるのも、新しいところだと思います。これを入れた理由を教えてください。
秋山氏 通信はサブスクの本命というところがあります。月額料金が決まっていて、更新してというように使っていきますが、povo2.0はその真逆です。自動更新がないのもそうで、使いたときに使いたいだけという合言葉もあります。ここに、いわゆるサブスクをやっているパートナーのコンテンツがあればマッチするのではないか。試してみたら面白いという考えがありました。サブスクをビジネスモデルにしている会社がそれをやるのは結構なチャレンジですが、お話をしていく中で、一緒にやっていきましょうと言っていただけました。
どういうふうに発展するのか、どういうコンテンツがマッチするのかというのはこれからです。「DAZN」は試合単位で見ることができますし、「smash.」についてもイベントごとに見るというのは需要としてありそうです。パートナーの方も、そこにトライしたいということで入っていただけています。
―― 決算説明会ではpovo2.0をスタートしてから、一気に10万以上契約が増えたというお話がありました。勢いはどう見ているのでしょうか。
秋山氏 細かくは申し上げられませんが、想定していたよりは純増が多く、初動では他社から来ていた数も多かったですね。もちろん、一定数auや従来のpovoから来られている方もいましたが、よそから来ていた数は想定以上です。結果としてプラス10万という形に仕上がりました。3月に立ち上げたときは社会的に多くのお客さまにご注目いただき、各社とも(オンライン専用プランを)やっていたので波が高かったのですが、そこからいったん落ち着きました。初期のころほどではありませんが、povo2.0でもう1回持ち上がった形です。
povo1.0より年齢層は広がっている
―― 基本料0円なので、取りあえずeSIMで入れておき、サブ回線として維持しておくという使い方もできると思います。もっと波が高くなっても不思議ではありませんが、そこはいかがでしょうか。
秋山氏 その部分は、きっちりご説明やマーケティングをやっていくべきだと思っています。商売上どうかというのはありますが、いろいろな使われ方が考えられます。ギガ活だけで使われている方もいますし、動作保証をしているもの、していないものはありますが、ネットではタブレットに入れている方も見かけます。povo2.0は、いろいろな使い方を見いだす“おもちゃ”のような側面があるのだと思います。あまりご案内するのはちょっとやぼかなとも思いますが。
eSIMは慣れればいいのですが、メインが物理SIMで2枚目がeSIMとなると、ちょっとクセのようなものもあります。誤解もあり、設定に苦労されている方もいます。それもあって、問い合わせにタイムリーにお答えできていないというご批判をいただいていますが、そこは必死にリカバリーして対応しているところです。どのタイミングで、「新しい使い方はこうですよ」と申し上げていくかは、中でも考えています。ちなみに、ユーザー層は幅広くなっていて、3月に始めたpovo1.0より年齢層は広がっています。
―― 先日ドコモの通信障害がありましたが、ああいったときにサッと使えると便利そうです。
秋山氏 (eSIMなら)オンラインでできますからね。本人確認があるので外出先でクイックに設定するとまではできませんが、カジュアルに試してみることはできます。300MBや500MBをギガ活でもらったので試してみるといった使い方があってもいい。そこから商売になるような使い方をしていただけるご提案ができるかどうかです。
関連記事
- 大幅リニューアルした「povo2.0」のインパクト 楽天モバイルにも影響あり?
auのオンライン専用ブランド「povo」が、その内容を大幅に変え、「povo2.0」に生まれ変わる。使いたいときだけ必要なデータ容量をトッピングする仕組みは定着するのか。povo2.0の料金の仕組みを解説しながら、KDDIの狙いや業界に与えたインパクトを読み解いていきたい。 - 「povo2.0」はどんな人にオススメ? データ容量20GBと3GB、維持費0円の場合を検証
KDDIが9月下旬から提供を始める「povo2.0」は、基本料金月額0円でオプションを選択して利用する新プランだ。あまりに自由すぎるがゆえに、どのようにトッピングを選べば安いのか、やや分かりにくいのが難点だ。そこで、毎月のデータ容量20GBと3GB、維持費0円での使い方を紹介する。 - 「povo2.0」は9月29日9時スタート 月額830円の「スマホ故障サポート」も提供
KDDIと沖縄セルラー電話のオンライン専用ブランド「povo」の新サービスの開始期日が9月29日9時に決まった。サービス開始に合わせて、新しいトッピングとして月額830円の「スマホ故障サポート」の提供を開始する。 - povo2.0、月額0円の条件は180日以内に「トッピングの購入」か「660円を超える課金」
auのオンライン専用プラン「povo」は基本料金を0円とし、データ通信や通話定額は必要に応じて「トッピング」という形で購入する。ただし、180日間以上有料トッピングの購入などがない場合、利用停止または契約解除となる場合がある。その条件は「最後に購入した有料トッピングの有効期限の翌日から180日間、有料トッピングの購入がない場合」となる。 - 「1プランが柔軟性を損ねていた」 povoが0円+データトッピングに変更した理由
KDDIが2021年9月下旬から、オンライン専用プラン「povo」を「2.0」にアップデート。基本料金を0円とし、データ容量は必要に応じてトッピングで選ぶ形に変更する。データ容量が毎月固定されないので、利用スタイルに応じて、毎月のプランを選択するイメージに近い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.