「20GBだけでは挑戦的ではない」 0円から使える「povo2.0」誕生の秘密を聞く(3/3 ページ)
基本料を0円に設定し、トッピングである程度自由にデータ容量を買い足していける仕組みを採用したKDDIのpovo2.0が好調だ。買い物をするだけでデータ容量が付与される「ギガ活」も、povo2.0の特徴といえる。そんなpovo2.0を導入した経緯や、現状の使われ方、ギガ活の今後などをKDDI Digital Lifeの代表取締役社長、秋山敏郎氏に聞いた。
ギガ活はビジネスモデルとして成り立つ?
―― ギガ活ですが、これ自体が店舗への送客ツールになるのでは……と感じています。一定の費用をもらって、マーケティングツールとして提供するというのはありえるのでしょうか。
秋山氏 ストレートに言うと、ビジネスモデルとして成り立っていくかどうかは試行錯誤しながらやっていきたいと考えています。少なくとも楽しんでいただくことで、エンゲージメントが始まります。マーケティング費用として意味があるかどうかはこれからですが、パートナーシップに発展していく可能性もあり、いろいろなパターンが考えられます。
ポイントと一緒ではないかという話もありますが、ポイントはためるとうれしいかもしれませんが、ギガほどの切実感はありません。普段皆さんが購入されているギガをダイレクトにつけることで、より印象付けることはできていると思います。理屈で考えればポイントの方が万能でいいじゃんとなりますが、あえてダイレクトにギガにした方が面白いのではないかと思い、この形にしています。
―― 確かにデータ容量を集めるのは、ちょっとしたゲーム感覚もあって面白いいと思いました。不安点としては、これがいつまで続くのかという継続性ですが、これについてはいかがでしょうか。個人的にはローソンがなくなるとちょっと困ります(笑)。
秋山氏 ローソン経由の方々が増えてくれば、こういった活動はどんどん増えていきます。皆さまに支えられて大きくなっていくpovo2.0なので。もちろん、パートナーの入れ替わりなど、形が変わることは必ずあります。そのタイミングでビジネスモデルとして続けられる形に持っていけるかどうか、ですね。今は初動のマーケティングという意味合いでやっていますが、効果はあると思っているので、どこかタイミングで止めますというようなことはありません。新しい通信会社との付き合い方として、エコシステムが定着すれば発展していきます。
―― 海外では、広告で料金が無料になるといった取り組みがあったと記憶していますが、ある意味その発展形のような印象も受けました。
秋山氏 業界では昔からあって、いわゆる「もしもしはいはい」のころから広告を聞いて数分間の通話を無料にするというビジネスモデルですね。ギガ活に関しても、根底では、通信と親和性があるものを目指しています。目的やシーンに応じてpovo2.0でデータ通信を使えるようにするには、お客さまがお支払いいただいた金額の中に通信料が含まれている必要があります。分かりやすい例だと、野外イベントのチケットに通信が付いていたり、インスタ映えするレストランでSNSに写真を上げられるように通信が付いていたりというものです。ギガを買うというのを意識しないところまでシーンが増えていけば、新しいモデルになっていくと思います。
―― 今の例だと、もう少し早いタイミングでプロモコードを付与してほしいと思いました。今だとリードタイムが1週間弱ありますよね。
秋山氏 おっしゃる通りです。今はどうしても早くて3日から1週間程度かかってしまいます。これを早くする仕組みが先決です。だからと言って紙にして配ると、デジタルでオンラインなのに紙なのか……というのはあります。もう少しオンラインブランドらしいところにトランスフォームしていきたいですね。
「eSIMって何?」という人をどうケアしていくか
―― そういったシステム面でついでに申し上げると、eSIMの再発行が非常にまどろっこしいと思います。
秋山氏 まだまだお客さま体験を改善する余地があります。ローンチはしましたが、それで出来上がりとはまったく思っていません。どんどん変えていきますし、改善していくつもりでいます。今おっしゃっていただいたように、eSIMの再発行は確かにまどろっこしい。ここをセルフケアでオートにしていくことは急務だという認識です。そのせいでお待たせしてしまっているところがあるので、早く改善していきます。
―― eSIMとは相性がよさそうですが、やはり比率は高いのでしょうか。
秋山氏 料金プランやサービスとの親和性を考えると、不思議ではないのですが、(比率は)高いですね。半分はいきませんが、auやUQ mobileと比べるとかなり高いと思います。
それがゆえに、初めての方が戸惑われてしまうところがあります。フェース・トゥ・フェースで端末を見ながらサポートするようなことはやっていないので、ANPの設定や、主回線・副回線の設定なども自分でやらなければなりません。面白そうと興味を持ってくださる方の中にも、「eSIMって何?」という方はたくさんいます。そういった方をどうケアしていくのかは大きな課題です。
―― タブレットとも相性がよさそうですが、現状だとiPadが動作保証されていません。この点はどうされていくのでしょうか。
秋山氏 ちゃんと、いろいろなパターンを検証しなければいけないと思っています。これは、サポート体制も含めてです。時期はお約束できませんが、いずれかのタイミングでとは思っています。
―― 競合のLINEMOでは、改善サイクルを高速に回しているそうですが、ここまでお話をうかがっているとpovo2.0もかなり速そうですね。
秋山氏 ものにもよりますが、この1カ月は週に3、4回はどこかしらをいじっています。当初はほぼ毎日で、3日連続で改善するということもありました。ご案内もしていましたが、当初は不具合もあり、ご迷惑をおかけしてしまいましたが、それを解消するためでもあります。
―― 結果として、トッピングを使うユーザーが多く、ARPUがUQ mobileより高いというお話もありました。やはり、お試しでというより、メイン回線として使うユーザーが多いのでしょうか。
秋山氏 今はpovo2.0に限定しても高い水準です。来ていただいたお客さまは、何かしらのトッピングを購入されています。最初にポーンと大きな容量のトッピングを買う方も結構な数になります。そういったこともあり、少なくとも当初の想定よりARPUは高めに出ています。
取材を終えて:auやUQ mobileとも差別化が図れており、ギガ活の可能性にも期待
政府の要請にこたえる形でデータ容量が横並びになってしまった各社のオンライン専用ブランドだが、LINEMOのミニプランやpovo2.0の登場で、にわかに競争が活発になってきた印象を受ける。中でもpovo2.0は、従来の料金体系とまったく異なるプリペイド型で、ユーザー側にも工夫する楽しみがある。auやUQ mobileといった正統派のブランドがある中、差別化もしっかり図れている。
システム的に改善の余地があったり、トッピングにはまだまだ工夫の余地がありそうだったりと、発展途上なところは多いが、今後の進化に期待が持てそうだ。また、ギガ活も、トッピングを生かした意欲的な取り組みといえる。データ容量を直接付与するエコシステムは、キャリアならでは。ポイントプログラム以上にキャリアらしい取り組みで、povo2.0のユーザー数が増えたときに強力な送客ツールになる可能性を秘めている。
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KDDIが2021年9月下旬から、オンライン専用プラン「povo」を「2.0」にアップデート。基本料金を0円とし、データ容量は必要に応じてトッピングで選ぶ形に変更する。データ容量が毎月固定されないので、利用スタイルに応じて、毎月のプランを選択するイメージに近い。
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