2021年の5G動向を振り返る エリアと端末は急拡大するも、恩恵は少なかった?:5Gビジネスの神髄に迫る(2/2 ページ)
コロナ禍で散々なスタートを切った日本の5Gだが、2021年はエリア整備が急速に進み、対応スマートフォンも増えた。一方で過渡期ならではの課題や問題も発生しており、個人・企業ともに利活用についてはまだ模索が続いている。2022年はスタンドアロンと、固定ブロードバンドをカバーするサービスがカギを握りそうだ。
進まなかった企業の活用、一方でFWAの活用は本格化
そのスタンドアロン運用への移行も携帯3社が2021年後半から徐々に開始しているようで、2022年には本格的な移行が始まるものと考えられる。スタンドアロン運用への移行で、5Gの高速大容量通信だけでなく、低遅延、多数同時接続といった特徴もフルに生かせるようになることから、とりわけ5Gを用いて自動運転やIoTなどの活用を進めたい企業からの期待が高いようだ。
一方、スマートフォンで5Gを利用する上では高速大容量通信以外のメリットが薄いので、携帯各社は当面、企業向けを主体にスタンドアロン運用に移行した5Gネットワークを提供すると考えられる。それゆえ、現時点でスタンドアロン運用に対応した端末は、企業が活用するのに十分な機能を備えるルーター型のものが主体となっている。
一般ユーザーがスタンドアロン運用の5Gを利用するには、ドコモが2022年夏に投入予定としているスタンドアロン運用対応スマートフォンの投入を待つ必要がありそうだ。ただ先にも触れた通り、現時点ではスマートフォンにおけるスタンドアロン運用のメリットは小さく、積極的に移行する理由に乏しいのが気になるところだ。
では2021年、企業向けの5G活用は進んだのかというと、各社が提示するソリューションを見る限り、その大半が実証実験レベルにとどまるものであり、ほとんど進まなかったというのが正直なところ。理由の1つは先に触れた通り、携帯大手の5Gがまだノンスタンドアロン運用が主体で、企業ニーズの高い低遅延などの活用ができていないためだ。
ドコモは2021年7月16日より法人向け5Gイベント「docomo 5G DX MEETUP for business」を実施、Googleの「Glass Enterprise Edition 2」を活用したソリューションなどを展示していたが、そのほとんどが実証実験レベルの内容にとどまっていた
であれば、2020年末にスタンドアロン運用ができる4.7GHz帯の免許割り当てが始まったローカル5Gはどうか。こちらも4.7GHz帯の割り当てとともに多くの企業が参入を表明し、積極的な取り組みを見せる企業は増えたものの、やはり具体的なソリューション開発にまでは至らなかったというのが正直なところだ。
その主な原因はコストにある。ローカル5Gを導入する企業は当然ながら携帯電話会社より規模が小さいのだが、国内のローカル5G向けに適した基地局や端末などがあまりそろっておらず、携帯大手向けの高額でオーバースペックな機器を使わなければいけないことから利活用を阻んだわけだ。
そうしたことからローカル5Gを手掛ける企業は、コアネットワークをクラウドで提供し、基地局には仮想化技術を活用し汎用(はんよう)のサーバを用いるなど、設備の低価格化に向けた取り組みに力を入れている。また端末に関しても、高額で高機能なものだけでなく、ルーター型など単機能で低価格なものが徐々に出てきているようだ。
またローカル5Gを巡る新たな動きとして、2021年11月にはソニーが新会社を設立し、ローカル5Gを集合住宅向けのインターネット接続サービスに活用する「NURO Wireless 5G」を2022年春頃より提供することを明らかにしている。ローカル5Gといえば、企業向けというイメージが強いが、ソニーはそれを固定ブロードバンドのラストワンマイルをカバーするFWA(Fixed Wireless Access)に活用しようとしているわけだ。
日本では都市部でも集合住宅を主体に、光回線を思うように引き込めずブロードバンド難民となるケースが多い。そこで2021年にはドコモが「home 5G」を開始するなど、携帯電話会社が5Gを活用してその代替サービスを提供することに力を入れているが、ソニーの動きは固定通信事業者がローカル5Gの活用でそれに対抗するものともいえるだろう。2022年はFWAとしての5Gを巡る動向にも注目が集まるところだ。
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