思ったよりも売れてない……!? 「iPhone 13シリーズ」の在庫不足と販売店の“たくましい”売り方:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/2 ページ)
iPhone 13シリーズが発売されてから、間もなく半年が経過します。しかし、一部モデルの特定の構成はいまだに慢性的な在庫不足が続いています。そのことは携帯電話ショップの販売現場にどのような影響を与えているのでしょうか。スタッフに話を聞いてみました。
「古いiPhone」で現場を盛り上げる
店舗スタッフとしては「ああ、iPhone 13シリーズが入荷しない……(特にPro系)」と悲しんでばかりもいられません。何らかの方法で売り場を盛り上げなければいけません。その背景として、大手キャリア(あるいは店舗が属する代理店)が課している「販売ノルマ」があります。
販売ノルマはいろいろな観点から設定されますが、その1つに「端末の販売台数」があります。キャリアにもよりますが、端末の販売台数のノルマではiPhoneだけ“別枠”で目標設定されていることが多いのです。Androidスマホでも、人気の高いブランド(メーカー)や機種では個別の販売ノルマが設定されることがありますが、iPhoneの販売ノルマは達成できないとiPhoneの取り扱い権を剥奪される可能性があるという違いがあります。
携帯電話ショップの売り場を見ると「iPhoneだけ特別扱いされているなぁ」と感じることも多いですが、その背景の1つにこのようなノルマがあります(※1)。
(※1)他社製品と並べて展示してはならないなど、Apple(メーカー)からの指示による部分もあるのですが、ここでは説明を割愛します
ただ、「iPhone 13シリーズの在庫が足りない(特にProシリーズが)」と嘆いてばかりいても仕方ありません。店舗スタッフが着目したのは旧機種となったiPhoneです。
iPhoneはiPhoneで販売台数の目標が設定されてるじゃないですか。「Proが入ってこないから売れない、目標達成できない」なんて言い訳は通用しません。でも見方を変えると、販売目標はあくまでも“iPhone”に課せられたものです。
であれば、頑張ってお客さまを説得して在庫のある構成に振り替えて販売することもありますし、必ずしも最新スペックを必要としないお客さまには手頃な価格になった旧モデルのiPhoneをお勧めすることも増えました。
新型iPhoneが発売される直前は、スマホの販売が大きく落ち込む傾向にあります。「旧モデルのiPhoneを安価に販売して、台数目標の達成を目指そう!」という話は珍しいことではありません。2021年の夏から秋にかけては、それが「iPhone SE(第2世代)」の安売りという形で表出しました。
ご時世もご時世なので、iPhone SE(第2世代)への根強い人気はあります。ただ、iPhone 13シリーズのリリース後は、販売価格が下がった「Phone 12 mini」や「iPhone 11」を安価に販売しています。
乗り換え(MNP)だけでなく、機種変更でも優遇するキャンペーンを行って需要を喚起している所ですが、最近のスマホは高いこともあって、手頃さを打ち出しつつ説得すると買っていただけます。これらのiPhoneを売りさばくことで、何とかノルマは達成できています。
iPhone 13シリーズは確かに最新ですが、最新といえど既に発売からある程度の期間が経過しています。そうなると、熱が冷めるお客さまも少なくありません。
(旧機種において)一括で手頃な選択肢を用意したり、分割でも1〜2年使った後で返却すれば自己負担がほぼゼロになる選択肢を用意したりしていますが、「これはいい」と買ってくださるお客さまも少なくありません。
「今年(2021年)は発売直後に買えなかったから、安くなった旧モデルを“つなぎ”で買うのはどうですか?」というように、お客さまによっては次(2022年)の“旬”(新モデル)を狙うようなトークもしています。
残価設定型の分割払いって、評価が分かれる売り方だとは思うんですよね。でも、支払い完了によって“買い切ってしまう”従来の分割払いと違って、残価設定型を選んでもらえれば「(端末を)返す頃にお店に行こう」という動機付けができるわけです。「今売れる1台」「1〜2年後に売れる1台」といったように、未来の販売につなげられるように必死になっています。
要するに、最新のiPhoneを“買い逃した”人に向けて、買い方も含めて訴求することで何とかニーズを喚起しているということです。
iPhone SE(第2世代)に加えて、iPhone 12 miniやiPhone 13 miniもセールでよく出てくるようになりました。後二者は残価設定型分割払いや返却を前提とする販売プログラムを使って「2年間で買い換えるならおトク」という売られ方をすることが多いようです
買う側の心理として、“買い逃し”は意外と大きく働きます。かくいう筆者も、iPhone 13シリーズを買い逃してしまったのです……。
iPhoneはおおむね毎年買い換えています。今シーズンも「iPhone 13 miniにしようかな、それともiPhone 13 Proにしようかな……」と迷っていた所、発売日の入手が絶望的になり、その後も欲しい構成が入庫する見込みが立たない状況が続いたため「もういいや……」と、購入意欲がすっかり冷めてしまいました。
iPhone 13シリーズの一部の在庫がここまで不足している理由の1つは、世界的な半導体不足です。キャリアを介して端末を調達するキャリアショップや家電量販店だけでなく、Appleの直販チャネルであるApple Storeでも、特定のモデルは店舗在庫がなかったり、通販でも配送予定日が通常より遅くなったりといった事象が発生しています。
Apple Storeはともかく、キャリアショップや家電量販店では端末販売全体に占めるiPhoneの比率が極端に高い状況です。買う側である私たちだけでなく、売る側も厳しい状況が続いています。しかし、それでも“売る”しかないのが販売店。旧モデルのキャンペーンなどで耐え凌ぐ日々はまだまだ続きそうです。
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