「iPad Air(第5世代)」はiPad Pro並みに性能が向上したが、悩ましいデバイスだ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
M1チップを搭載した第5世代のiPad Airが、3月18日に発売された。第4世代でフルモデルチェンジを果たし、iPad Proの流れをくんだボディーを採用したiPad Airだが、第5世代はその流れを踏襲。使ってみて分かったのは、最大のライバルが11型のiPad Proだということだ。
Proにするか、Airにするか――悩ましい価格とストレージ容量の設定
引き算上手なiPad Airだが、そこには、iPad ProとiPad Airに十分な価格差があった場合というただし書きもつく。本国の米国では、同じ256GBで比べた場合、iPad ProとiPad Airには150ドル(約1万7800円)の差がついているのに対し、日本では1万4000円と、その差が小さいなっている。これは、日本円でiPad Proの価格設定をした2021年4月より円安が進行しているためだ。Appleにはいかんともしがたい要素だが、約1年で為替相場がここまで大きく円安に振れたのは、iPad Airにとって不幸な出来事だったといえる。
もう1つの要素が、ストレージ容量のバリエーションだ。iPad Airには、iPad Proにない64GB版がある一方で、128GB版がなく、1つ仕様を上げるとストレージが一気に256GBになってしまう。64GB版はデータをある程度持ち歩くにはかなり厳しい容量で、写真や動画などをiPad Airで編集しようとすると、頻繁に削除するなどの対応が必要になる。データのほとんどをクラウド側に置く手はあるが、それでも64GBだとやりくりが大変になりそうだ。
これに対し、iPad Proは128GB、256GB、512GB、1TB、2TBとストレージの容量が段階的に上がっていき、選択肢も多い。最低容量が128GBに設定されているのも、ユーザーにとって選びやすいポイントだ。64GBではストレージに不安がある一方で、256GBは多すぎるという人が、価格の最も安い128GBを選択できる。128GBがちょうどいい人がiPad Airを購入しようとすると、256GB版にせざるをえず、iPad Proとの価格差はわずか2000円になってしまう。この状況だと、iPad Airが割高に見える。
最低容量同士の比較なら64GB版があるiPad Airの安さが際立つが、上記のようにストレージ不足を心配しながら使うことになるのがネックになる。特に、第5世代のiPad Airは、M1チップを採用して処理能力を大幅に底上げしているだけに、ヘビーユーザー向けの端末だ。最低容量をiPad Proと同じ128GBに設定するなり、ストレージのバリエーションを3段階にするなりの工夫は欲しかった。こうした価格設定のため、iPad ProとiPad Airのどちらにするかは、かなり悩ましい選択といえそうだ。
コストパフォーマンスが高いといわれるiPad Airだが、価格設定やストレージの容量まで詳細に見ていくと、ある程度ユーザーを選ぶ端末であることが分かる。必要なデータはクラウドに置いて最低容量で済ませられる人や、カラーバリエーション重視の人、Touch IDがどうしても必要な人、さらにはとにかくM1搭載で価格が1円でも安い方がいい人などはiPad Airが候補に上がるが、条件に当てはまらなければ、iPad Proに目を向けてみてもいいだろう。
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