インドで作られた5Gスマホ「Infinix Zero 5」に触れる 世界展開できる品質か?:山根康宏の海外モバイル探訪記
Infinixというメーカーの5Gスマホ「Zero 5」を購入した。中国のTranssionが展開するブランドで、アフリカやインドで人気だ。同ブランド初の5GスマホはMade in India、インド製のスマホとなる。その実機に触れてみた。
Infinixというメーカーの5Gスマートフォン「Zero 5」を購入しました。Infinixは中国のTranssion(伝音)が新興国で展開しているブランド。Transsionは他にも「Tecno」「Itel」などを持っており、アフリカやインドで大人気です。そのInfinix初の5GモデルがこのZero 5になります。Infinixのスマートフォンは中国で生産されインドに輸入されたものが多くありますが、Zero 5はMade in India、つまりインドで作られた5Gスマートフォンなのです。
Zero 5のスペックは6.78型(1080×2460ピクセル)のLCDディスプレイ、Dimensity 900搭載、カメラは4800万画素+1300万画素(2倍望遠)+200万画素深度、フロントはパンチホール式の1600万画素でバッテリーは5000mAh。インドでは19999ルピー、約3万円で販売されており、中国メーカーのミドルレンジ5Gモデルといい勝負ができそうです。本体の作りもしっかりしており、アウトカメラ周りはOPPO Find X3 Proを思わせる滑らかなデザイン。このあたりは大目に見てあげたいところ。
インドももはや普通に5Gスマートフォンを作れる時代が来たということでしょうが、スマートフォン本体だけではなくそれ以外の部分にも筆者は注目したいと思います。スマートフォンを作るということは部材メーカーもある程度地元に必要ですし、作ったスマートフォンをパッケージに入れたり保護フィルムを作ったりする必要もあります(そしてもちろんですが物流も重要です)。それらがしっかりしてこそ、海外メーカーと真っ向から勝負できるわけです。
ではZero 5のパッケージを開けてみます。スマートフォンを取り出すと、本体を載せている中敷きがあり、またACアダプターとUSBケーブルが入っています。
ACアダプターは33W充電でしっかりしたものですが、Made in Chinaでした。まだこのあたりのものは中国から輸入した方が安価なのでしょう。またUSBケーブルはやや樹脂の匂いがします。これも中国からの輸入品かもしれませんが、インド製の可能性も高そうです。コストの低いものを使っているようで、Zero 5ががんばって低価格化を図った苦労がこのあたりから見えてきます。
スマートフォンを載せていた中敷きを開封すると中にケースなどが入っていますが、この中敷きの紙質はとても薄く、補強するためにサイド部分に厚紙が入っていました。これは恐らくインドのパッケージ工場で作られたのでしょう。まだまだこの手のパッケージを大量に作る企業がインドには少ないんじゃないかな、そう感じられました。
パッケージの中には透明ケースが入っています。本体に装着すると「5G」の文字が見えるなど、うまくデザインされています。これは装着して人に見せてちょっと自慢したくなるかも。
ただこのケースも実はちょっと柔らかい素材を使っています。おそらくこれもインド製でしょう。筆者はCOVID-19流行以前は中国・深センのケース問屋ビルをよく訪れていましたが、問屋で10円程度の安物でもケースの質はしっかりしていました。このケースについてもまだインドのケース工場の製造ノウハウが弱いかな、と想像してしまいます。
筆者はこれらを見て「インドはダメだ」といいたいのではありません。今や中国が世界のスマートフォン工場となり、サムスンを中心にベトナムへの移管も起きる中で、インドでもスマートフォンの製造が次々と立ち上がっています。いずれはインド製のスマートフォンが世界中で販売される日が来るかもしれません。
しかし「端末だけインドで作り、パッケージングは中国」ではなく、「インドで作り、インドで箱詰めし、インドから出荷する」時代が来ることは間違いないのです。そうなるにはサプライチェーン全体の底上げが必要です。Zero 5を見る限り、本体の品質は問題ありません。あとはそれを「商品」に仕上げる部分がまだこれからだな、と感じたのです。インドのスマートフォン製造の進化を見るためにも、定期的にMade in Indiaの製品を買ってみようと思うのでした。
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