3G時代を盛り上げた「着うたフル」からサブスクまで 携帯の音楽配信を振り返る:ITmedia Mobile 20周年特別企画
4Gから5Gへと切り替わる今、有料動画配信サービスをいつでもどこでも楽しめるのが、当り前の光景になりつつある。同様に今から20年ほど前、2Gから3Gに切り替わる時代に芽吹き、その後当り前の光景として定着していったのが音楽配信サービスだ
4Gから5Gへと切り替わる今、Amazonプライムビデオ、Netflixといった有料動画配信サービスをいつでもどこでも楽しめるのが、当り前の光景になりつつある。同様に今から20年ほど前、2Gから3Gに切り替わる時代に芽吹き、その後当り前の光景として定着していったのが音楽配信サービスだ。当時を知らない世代は、音楽配信サービスのルーツの一端が着信音にあると言ったら、驚くかもしれない。
auといえば音楽というイメージを決定的にしたサービス「LISMO」
auが着信メロディに使用できる、15〜30秒程度のボーカル入りの楽曲を配信するサービス「着うた」を開始したのは2002年12月のこと。それまでにも「bitmusic」などPC向けの音楽配信サービスはスタートしていたが、当時はまだブロードバンド普及前で配信曲も少なく利用者は少なかった。
一方、2000年代に入って携帯電話では、16和音などを用いた「着メロ」配信サービスの人気が沸騰。その1つで「レコード会社直営♪」の名前の通り、複数のレコード会社が出資し設立されたレーベルモバイルとして、auと組んでスタートしたのがCD音源を配信する「着うた」だった。その後、ミュージック・シーオー・ジェーピーなど、他のコンテンツプロバイダーも参入。2003年12月にボーダフォン(現ソフトバンク)のボーダフォンライブ!、2004年2月にはドコモのiモードでも「着うた」サービスがスタートしている。
着うたのサービス開始とともに、初の対応端末として登場した「A5302CA」。翌年1月には同じく対応端末の「A5303H」が発売された。両機種にはauのテレビCMソング、CHEMISTRYの新曲「My Gift to You」の着うたがプリセットされていた
和音の「着メロ」から「着うた」、一曲丸ごとの「着うたフル」に
2004年11月にはauが、1曲フルコーラスを丸ごとダウンロードできる「着うたフル」をスタート。本格的な音楽配信サービス時代が幕を開ける。フルコーラスの配信は、着うたスタート当時からロードマップに盛り込まれていたものだった。なお、着うたが15〜30秒でせいぜい100KB程度だったのに対し、着うたフルは1曲3〜5分程度で2MBを超えるものもあった。配信ができたのは、2003年10月にスタートした下り最大2.4Mbpsの「CDMA 1X WIN」とパケット定額制プランのおかげといえる。
PC向けには、2005年夏に日本でも「iTunes Music Store」がスタート。4日間で100万曲ダウンロードを突破するなど、注目を集める。当時、着うたフルは1曲210〜315円といったところが主流の価格帯だったが、iTunes Music Storeは1曲150円〜だった。
2006年にはauが、携帯電話でもPCでも配信曲が楽しめる、新サービス「LISMO(au LISTEN MOBILE SERVICE)」をスタート。PC用のソフト「au Music Port」では、着うたや着うたフルのほか、写真や動画、アドレス帳、メールなどもバックアップ可能だった。当時コンテンツ・メディア事業本部長だった現社長の高橋誠氏は、「iPod+iTunesに対抗できるサービス」とアピールした。
一方ドコモは翌年、米国のナップスターとタワーレコードが設立したNapster Japanと提携。今のサブスクリプションサービスの先取りともいえる、定額配信サービス「うた・ホーダイ」をスタートしている。
2006年夏には、1GBの音楽用の内蔵メモリを備えた、ウォークマンケータイ「W42S」がソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(現ソニーモバイルコミュニケーションズ)から、リリースされている
2008年にはKDDIで一部対応端末向けに、より高音質な「着うたフルプラス」もスタート。この年、「レコード会社直営♪」サイトでは、着うたと着うたフルの有料ダウンロード数が累計10億ダウンロードを突破した。
日本レコード協会が公開している、音楽配信売上実績の年次推移データによれば、日本の音楽配信売り上げは2008年が905億4700万円、2009年が909億8200万円でピークを迎えている。この数字は今も更新されていないことから、当時の勢いがいかにすごかったか分かるだろう。なお、2008年に大ヒットした青山テルマ×SoulJa「そばにいるね」は、「日本で最も売れたダウンロード・シングル」としてギネスに認定されている。
2008年にiPhone 3Gが上陸、音楽はスマホで聴き放題が主流に
一方で、同じ2008年の6月にはiPodの機能を搭載する「iPhone 3G」が日本に上陸。いよいよスマートフォンの時代が到来する。2009年、レーベルモバイルは社名とサービス名を「レコチョク」に変更し、2010年にはAndroid向けのサービスもスタートさせている。
2011年にはKDDIが定額聴き放題の「LISMO unlimited powered by レコチョク」をスタート。洋楽中心ながら約100万曲が聴き放題になるサービスとして話題を集めたが、2013年にはプラットフォームを提供していた「KKBOX」の日本進出で、サービスを「KKBOX」にリニューアルした。
2012年には、好きな音楽チャンネルが聴き放題となるKDDIの「うたパス」や、ドコモの「dヒッツ」もスタート。モバイル通信が3Gから4Gへ移行するタイミングもあり、
ラジオ感覚で手軽に楽しめる音楽配信サービスが人気を集めた。また同じ頃、大手レコード会社が楽曲提供を開始したり、より高音質な「iTunes Plus」がスタートしたりするなど、iTunes Storeの音楽コンテンツがますます充実。iPhoneの人気とともに多くのユーザーを獲得していく。
今ではすっかり定着した、定額で聴き放題のサブスクリプション型音楽配信サービスが日本で本格化するのは、LTE-Advancedがスタートした2015年のこと。この年、「LINE MUSIC」「AWA」「Apple Music」「Google Play Music」「Amazon Prime Music」といったサービスが一斉にスタートしている。
また翌年には「Spotify」も、待望の日本でのサービスを開始。ここから音楽配信サービスは徐々に、ダウンロードからストリーミングへの移行していくことになる。日本レコード協会のデータによれば、3年後の2018年にはダウンロードとストリーミングの売り上げ金額が逆転。翌2019年にはその差が2倍以上、2020年には3倍以上に開いている。
2018年にはGoogleによる「YouTube Music」がスタート。同じ頃「TikTok」も爆発的な流行を見せ、以降YouTubeやTilTokの投稿動画からヒット曲が生まれるケースも目立つようになってきた。逆に著名アーティストが、「YouTube」で新曲のPVを配信するようなケースも増えている。5G時代には、音楽と映像を一緒に楽しむシーンがますます広がりそうだ。
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