Armは6月28日(グリニッジ標準時)、コンシューマー機器向けの用途特化型演算をサポートする「Arm Total Compute Solution」の最新状況を発表した。その中で、リアルタイムレイトレーシング(RT)に対応するスマートフォン向けフラグシップGPUコア「Immortalis(イモータリス)」の概要や、モバイルデバイス向けCPUコアの最新状況を披露した。
Immortalisの概要
ImmortalisはArmのフラグシップGPUコアとして、従来の「Mali(マリ)」の上位に位置付けられるブランドとなる。スマホゲームのグラフィックスの高度化に合わせて「究極のモバイル3D体験」を実現すべく演算能力も高めたといい、同社のGPUコアとしては初めてRTをサポートしている。
第1弾製品となる「Immortalis-G715」は、高効率GPUコア「Mali-G710」をベースに開発された。先述の通りRTに対応した他、一部オブジェクトのシェーディングをあえて粗くすることで描画全体のパフォーマンスを改善する「可変レートシェーディング(VRS)」をサポートする。演算エンジン(EE)も一新しており、従来のGPUコアと比べて最大15%の描画パフォーマンス向上と最大15%のエネルギー効率改善を実現したという。コアの基数は、搭載されるSoCによって異なり、少なくとも10コア構成となる。
なお、既存のMaliシリーズにも「Mali-G615」「Mali-G715」という新しい製品が登場する。Immortalis-G715と同様に、両コアはMali-G710をベースに開発されVRSをサポートする。一方で、RTはサポートされない。コアの基数は、搭載されるSoCによってMali-G615が6コア以下、Mali-G715が7〜9コアとなる。
新しいGPUコアのラインアップ。Immorital-G715をフラグシップ、Mali-G715とMali-G615をプレミアムと位置付けている。いずれも高効率GPUコアであるMali-G710をベースに開発されたという
Armv9アーキテクチャのCPUコアもラインアップを拡充
Armは2021年、新しいCPUアーキテクチャ「Armv9」を発表した。今回の発表では、Armv9アーキテクチャを使った新型CPUコア「Cortex-X3」「Cortex-A715」が披露された他、「Cortex-A510」のリフレッシュ版がアナウンスされた。
Cortex-X3(フラグシップコア)
「Cortex-X3」はパフォーマンスを最重視するCPUコア(Arm風にいうと「フラグシップコア」、Intel風にいうと「Pコア」)で、2021年に発表された「Cortex-X2」の改良版となる。
Cortex-X2と比べると、Cortex-X3のシングルスレッド性能はスマートフォン向けで最大25%、ノートPC向けで最大34%のパフォーマンス向上を果たしたという。
Cortex-A715(bigコア)
「Cortex-A715」はパフォーマンスを重視するCPUコア(Arm風にいうと「bigコア」、Intel風にいうと「Pコア」)で、2021年に発表された「Cortex-A710」の改良版となる。
Cortex-A710と比べると、Cortex-A715は最大5%のパフォーマンス向上と20%の効率改善を果たしたという。
Cortex-A510(LITTLEコア)
「Cortex-A510」は処理効率(消費電力)を重視するCPUコア(Arm風にいうと「LITTLEコア」、Intel風にいうと「Eコア」)で、2021年に発表されたものである。
Cortex-A510は従来、Cortex-X2/Cortex-A710と組み合わせるLITTLEコアという位置付けだったが、Cortex-X3/Cortex-A715に対するLITTLEコアとしても利用されることになった。ただし、Cortex-X3/Cortex-A715に組み合わせる2022年版は、従来版と比べると最大で5%の消費電力削減を実現したという。
PCでの採用拡大を意識した仕様変更も
Armv9アーキテクチャでは、bigコア(フラグシップコアを含む)とLITTLEコアを「DynamIQ Shared Unit(DSU)」とで連結することで「CPUクラスター」を形成している。
今回発表されたCortex-X3/Cortex-A715/Cortex-A510(リフレッシュ版)で使われるのはDSUは、Cortex-X2/Cortex-A710/Cortex-A510と同じ「DSU-110」だが、連結できるCPUコアを最大8基から12基(従来比1.5倍)に拡大した。
加えて、「Cortex-X3×8コア+Cortex-A715×4コア」のようにLITTLEコアを省く構成を取ることも可能となった。これは、ノートPCでの利用にも耐えうるパワフルなSoCを開発しやすくするための措置だ。
関連記事
- MediaTek、5Gチップ「Dimensity 9000+」発表 3億2000万画素カメラや7Gbps通信をサポート
MediaTekは、6月22日に次世代フラッグシップスマートフォン向け5Gプロセッサ「Dimensity 9000+」を発表した。搭載端末は2022年の第3四半期にリリースされる予定。 - Qualcomm、「8」より10%高速なハイエンド「Snapdragon 8+ Gen 1」発表
Qualcommは「Snapdragon 8+ Gen 1」と「Snapdragon 7 Gen 1」を発表した。前者は昨年12月発表のハイエンド「Snapdragon 8 Gen 1」の強化版でCPUとGPUがそれぞれ10%向上。後者は「Snapdragon 778G 5G」の後継に当たる。 - Qualcomm、スマホ向けハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」発表
Qualcommは、スマホ向けハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」を発表した。「Snapdragon 888」の後継に当たる。先代よりも性能は20%向上し、電力効率は30%高いとしている。 - 最新SoC「Snapdragon 8 Gen 1」では何が変わるのか? カメラからセキュリティまでを解説
Qualcommが発表した新プロセッサ「Snapdragon 8 Gen 1」は、下り最大10Gbps、上り最大3.5Gpbsの高速通信が可能になる。カメラの画像処理性能も強化され、明暗の激しい場所や暗所などよりキレイに撮影できるようになった。カメラが常時オンになることで、セキュリティレベルも向上した。 - ソフトバンクグループが「Arm」のNVIDIAへの売却を中止 Armは2023年度の再上場を目指す
ソフトバンクグループが、完全子会社である英Arm Limitedの株式を米NVIDIAに売却する契約を解消したことを発表した。「規制上の大きな課題」が原因だといい、今後はArmを単独で再上場させることに注力する。【更新】
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.