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復活に向けて順調な「Xperia」が向かう先 ミッドレンジでも差別化を図るが、市場環境には課題も石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

コンセプトを刷新した「Xperia 1」を投入して以降、ソニーのスマートフォンが徐々にシェアを回復している。そんな中、同社が2022年モデルとして投入したのが、「Xperia 1 IV」「Xperia 10 IV」「Xperia Ace III」の3機種だ。ソニーのモバイルコミュニケーションズ事業本部で事業部長を務める濱口努氏に、新モデルの開発コンセプトや今後の展開などを聞いた。

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フラグシップで培った機能の裾野を広げるソニー、市場環境には課題も

 濱口氏が「裾野を広げる」と語っていたように、将来的にはミドルレンジ以下の端末にも、Xperia 1シリーズで培った動画機能を落とし込んでいく方針だ。ハイエンドモデルで培った技術やブランドイメージをミドルレンジ以下に拡大し、普及を狙うのは端末メーカーとして、ある意味王道の戦略といえる。

 ただし、「例えば4Kという解像度が必要かというところは考えていかなければならない」というように、フラグシップモデル以外への展開にあたっては、仕様やユーザーインタフェースを変更する可能性はあるという。実際、静止画でもXperia 10 IVやXperia Ace IIIには、Photography Proが搭載されていない。これは、「狙いたいお客さまの求めるニーズに対応した商品作りをしていきたい」と考えているからだ。

 「Xperia 10 IVでいえば、5000mAhのバッテリーで世界最軽量といった使い勝手を入れているし、光学式手ブレ補正も入っている。Photography Proより強力なHDRやナイトモードもあり、音楽は『360 Reality Audio』に対応している。お客さまのニーズを見ながら、それぞれの商品で差別化を図っている」

Xperia 1 IV
Xperia 10 IVは、5000mAhのバッテリーを搭載した端末として、世界最軽量を実現。Photography Proなどには対応していないが、HDRやナイトモードはXperia 1 IVより強力だ。カメラはユーザー層に合わせ、より気軽に撮影できることを目指した

 より安価なXperiaの入門機に位置付けられるXperia Ace IIIは、「より価格重視のお客さま向け」の端末だ。それでも、Xperiaらしさにはこだわっていると語る。「他社からも出てきたが、ソニーの商品として特徴があるのはコンパクトというところ。日本市場の特徴でもあるが、コンパクトモデルを以前から使っていただいていた方に対して出していかなければいけないと思っている」

 日本と海外では、端末サイズに対する嗜好(しこう)の違いもある。海外メーカーがグローバルモデルとして販売されている端末をそのまま日本に導入すると、日本市場にうまくフィットしない可能性があるということだ。これに対し、ソニーは日本市場に特化した形でXperia Aceシリーズを開発している。市場動向に合わせた小回りが利くのは、地の利がある日本メーカーならではといえる。こうした特徴を出せたことが奏功し、Xperia 10 IVやXperia Ace IIIの「出足は非常にいい」。

Xperia 1 IV
コンパクトなエントリーモデルとして好評を博しているXperia Ace III。Xperia Ace IIはドコモの独占販売だったが、同モデルから3キャリア展開に

 一方で、濱口氏はミッドレンジモデル以下の端末を取り巻く市場環境が、大きく変化していることを指摘する。端的に言うと、iPhoneをはじめとした高機能モデルの大幅割引が、ミドルレンジモデルの販売に影響を与えているという。

 「あえて申し上げると、1円端末のインパクトがゼロではない。6万円から10万円を超え価格帯の商品が、ものすごい値段になっていることもあり、市場を見ると、その上と下の価格の端末が影響を受けている。これは弊社だけではない。特に、比較的スマートフォンに高い金額を支払う意思のある方が流れている。20代の方は、必ずしも収入が高いわけではないが、相対的に見ると、機能を重視するため購入予算も高い。お金を払う意思表示をしている人でも、ああいうものがあると店頭でなびいてしまいやすい」

1円販売
高機能モデルの“1円販売”が、ミドルレンジモデルやエントリーモデルの売れ行きに影響を与えているという。写真は1月の記事に掲載されたもの

 確かに、ハイエンドモデルがミドルレンジモデルより安い価格で販売されているとなれば、機能をそぎ落として本体価格を抑えたミドルレンジモデルをあえて選ぶ理由がなくなってしまう。大胆な割引があるのはユーザーにとってうれしい反面、これが続くと、メーカーがミドルレンジモデルを開発する意義が失われてしまう。端末そのものの値引きは電気通信事業法で規制するのが難しいものの、一定の線引きが必要な状況になりつつあるといえそうだ。

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