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復活に向けて順調な「Xperia」が向かう先 ミッドレンジでも差別化を図るが、市場環境には課題も石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

コンセプトを刷新した「Xperia 1」を投入して以降、ソニーのスマートフォンが徐々にシェアを回復している。そんな中、同社が2022年モデルとして投入したのが、「Xperia 1 IV」「Xperia 10 IV」「Xperia Ace III」の3機種だ。ソニーのモバイルコミュニケーションズ事業本部で事業部長を務める濱口努氏に、新モデルの開発コンセプトや今後の展開などを聞いた。

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差別化はカメラだけにあらず、サウンドやゲームでもソニーの強みを生かす

 静止画か動画かという違いはあれ、どちらかといえばカメラや撮影にフォーカスしてきたXperiaだが、スマートフォン全体を見渡すと、それ以外での差別化も徐々に進み始めている。フォルダブルスマートフォンのGalaxy Zシリーズや、AIを前面に打ち出したPixelシリーズは、そうした端末の1つといえる。「購入時にカメラを重視して決められる方が相対的に多い」ため、各社ともこの機能に注力している一方で、全体的に画質が底上げされたこともあり、違いが分かりづらくなっているのも事実だ。

 これに対し、Xperiaはディスプレイやサウンド、ゲーミングに磨きをかけ、カメラ以外でも特徴を出しているという。

 「私自身がイメージングから来ていることもあり、そこを推しがちに見えているかもしれないが、例えば今回のXperia 1 IVにはゲームエンハンサーにライブ配信機能を入れている。4Kディスプレイも引き続き重視されている点で、これがあるから買った人もたくさんいる。音のところでは、ヘッドフォンでの体験のみならず、アクティブスピーカーの性能のようなところでも他社を圧倒している。(他社と)方向性は違うかもしれないが、ソニーグループ全体の強みである技術を研ぎ澄ませていく方向で進化させている」

Xperia 1 IV
ゲームエンハンサーにライブ配信機能を採用するなど、ゲーム機能を強化している
Xperia 1 IV
音質や音圧といったサウンド性能を強化しているのも、Xperiaの特徴だ

 VRゴーグルの「Xperia View」や、Xperia 1 IV用のゲーミングアクセサリーを開発しているのも、そのためだ。ただ、ソニーでゲームと言えば、やはりプレイステーションを思い浮かべる人が多いだろう。かつては「Xperia PLAY」のような端末もあり、プレイステーションのゲームが遊べる「PlayStation Store」にも対応していた。このころに比べ、ゲーム事業との連携があまり取れてないようにも見える。こうした疑問に対し、濱口氏は「お客さまがプレイステーションで楽しまれているゲームと、モバイルで楽しまれているゲームが少し違うと思っている」としながら、次のように語る。

 「昨年(2021年)まではプレイステーションのゲームタイトルのスポンサーシップをしていたが、(据え置き型のゲームは)モバイルゲームとはちょっと違うという意識がある。KDDIと一緒にやらせていただいた、5G SAを使ったリモートプレイのような取り組み(実証実験)はしているが、いわゆるモバイルゲームのところは、Xperiaでやっていかなければならないところがある。開発発表をしたゲーミングギアのようなものを使って、モバイルゲームならではの配信機能を使ってプレイしていただければと考えている」

Xperia 1 IV
端末を冷却して、長時間のライブ配信を可能にするゲーミングギアも開発中だ

 濱口氏が例として挙げたリモートプレイのようなサービスは、通信品質を用途別にコントロールできる5G SAと相性がいい。コンシューマー向けのサービスは「本当に5Gじゃなければいけないサービスが実はそんなにないので、各社苦しんでいる」だけに、ソニーとしてXperiaを開発している強みになりそうだ。

Xperia 1 IV
KDDIとの実証実験では、5G SAを介してプレイステーションのリモートプレイを行った。ネットワークスライシングを導入した5G SAでは、NSAの5Gよりもスムーズにゲームの遠隔プレイができていた

 法人分野では、「Xperia PRO」を使ってカメラで撮った写真を即座にサーバにアップロードしたり、スポーツイベントの中継に5Gを活用したりと、さまざまな事例を作り、知見を積み重ねている。濱口氏は「B2Bの領域から入っていくが、オポチュニティ(機会)はすごくある」と語っていたが、端末を生かした5Gならではのサービスを生み出せれば、Xperiaの強力な強みになりそうだ。ソニーの打ち出す、次の一手に期待したい。

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