モバイル×ナビは約20年でどんな進化を遂げたのか ナビタイムとともに振り返る(1/2 ページ)
今から19年前の2003年10月、世界初のケータイを使った歩行者ナビサービスとしてスタートしたのが、auの「EZナビウォーク」だ。ケータイを片手に目的地まで迷わずたどり着けるEZナビウォークは、モバイル業界に大きなインパクトをもたらした。しかしスマートフォンの普及により、モバイル向けナビサービスは大きな転換を迫られることになる。
今いる場所から目的地までどのように交通機関を乗り継ぎ、どの道をどう歩くか。ドア to ドアのナビゲーションは今や、スマホでサクっと検索ができる生活になくてはならない機能だが、今から19年前の2003年10月、世界初のケータイを使った歩行者ナビサービスとしてスタートしたのが、auの「EZナビウォーク」だ。ケータイ×ナビの先駆けとなるサービスはどのように誕生したのか。
ナビタイムのナビサービスを利用できたauケータイ。左から「C3003P」(2002年3月発売)、「A5304T」(2003年2月発売)、「A5501T」(2003年10月発売)。A5501Tは歩行者向け「EZナビウォーク」に対応した
【訂正:2022年8月25日16時50分 初出時、写真中央の機種を「A5301T」(2002年9月発売)と説明していましたが、正しくは「A5304T」(2003年2月発売)です。おわびして訂正いたします。】
転機になったのは世界初のGPS搭載ケータイ
ケータイ×ナビの歩みを振り返る上で、「転機になった端末がある」と話すのは「EZナビウォーク」のシステムの開発と運営を担っていた、ナビタイムジャパン代表取締役社長の大西啓介氏だ。2001年12月にKDDIから発売された、世界初のGPS搭載ケータイ「C5001T」。この発売に合わせてEZweb公式コンテンツとなったのが、ドア to ドアの経路検索が可能なサービス「NAVITIME」だった。「当時コンテンツ部長だった高橋さん(現KDDI社長の高橋誠氏)が、GPSケータイ向けのコンテンツを探しているということで、紹介されたのが最初でした」と大西氏は振り返る。
ナビタイムジャパンの設立は、GPSケータイ発売の前年。大学で道路の経路検索エンジンを研究していた大西氏と、公共交通機関の乗り換えエンジンを研究していた副社長の菊池新氏は、1998年に両技術を組み合わせたトータルナビゲーションシステムを開発。2000年に大西氏の父が経営(当時)する大西熱学から分社、独立する形でナビタイムジャパンを起ち上げる。
ちょうどその頃に出会ったのが、来日していた米Qualcomm元会長のポール・E・ジェイコブス氏だった。「当時作っていたWindows CE向けのナビシステムを見せたら、メモリの少ないモバイル端末でナビが動くことにすごく驚いていた。これが後のBREWアプリの開発につながっていきました」
BREWは当時Qualcommが提唱していた、携帯電話用のアプリケーション・プラットフォームだ。日本ではKDDIが採用を決めていたが、まだ実用的なアプリはないも同然だった。ナビタイムジャパンは約2カ月という短期間でNAVITIMEアプリを開発。アプリは2002年3月に発売されたBREW対応ケータイ「C3003P」にプリインストールされた。
パナソニック製の同端末はGPSに加えて電子コンパスを内蔵。NAVITIMEアプリは進行方向に合わせて自動的に地図が回転する「ヘディングアップ機能」に対応していた。まさに今のモバイルナビの原型ともいえるが、「当時はまだGPSの連続測位に対応しておらず、ナビゲーションボタンを押して現在地を取得する仕様でした。連続測位ができるようになるのは、2003年10月のEZナビウォーク対応機種から。2秒に1回の測位が可能になりました」。
キラーコンテンツ「EZナビウォーク」で純増数1位に
ケータイを片手に目的地まで迷わずたどり着けるEZナビウォークは、auの3GサービスであるCDMA 1Xおよび、2003年11月にスタートした3.5GのCDMA 1X WINのキラーサービスとして大きなインパクトを与えた。パケット定額制サービス「EZフラット(のちのダブル定額)」の導入もあり、auは純増数1位に転じる。
2005年にはEZナビウォークをベースに、ナビゲーション機能を自動車向けに最適化した「EZ助手席ナビ」がスタート。2004年6月には運転中の携帯電話の使用に罰則を設けた改正道路交通法が成立するなど、当時社会問題化していた携帯電話のながら見を防止するため、助手席ユーザー限定のサービスとして提供された。
EZナビウォークとEZ助手席ナビの両サービスは大きな反響を呼び、ナビタイムジャパンは2003年から2007年まで、Qualcommが主催する「BREW Developer Award」を連続受賞している。両アプリはauケータイに標準インストールされ、あわせて有料会員も急増。2006年5月には両サービスのユーザー数が100万人を突破。同8月には早くも200万人を突破している。まさに当時の勢いが伝わってくるようだ。
一方でサービスとしてのNAVITIMEは、iモード、ボーダフォンライブ!(のちのYahoo!ケータイ)向けにも提供され、ドア to ドアの経路検索サービスは多くのユーザーを獲得していく。「駅を出て右か左か迷うところも、きめ細かにナビゲーションするというのが、われわれのサービスの特徴です。そういったところで迷って遅刻しなくなったとか、不安がなくなったという声を、当時たくさんいただきました」と大西氏。バックグラウンドでは、ナビタイムジャパンのスタッフが自らの足を使い、乗り換え位置や出口を調査する、乗り換え時間を調べるといった地道な努力も続けられていたという。
「例えばあるとき、有楽町駅で有楽町線から山手線に乗り換えるときに乗り遅れたという声が寄せられました。分析すると、朝の7時から8時は、人混みのために乗り換えに10分かかるということが分かったのです。同じ路線でも時間によって乗り換え時間を変えることで、乗り遅れがなくなる。今も続けていることですが、そういう細かい整備をずっとやってきた結果、NAVITIMEのルートは信頼できると言っていただけるようになったと思っています」。
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