楽天モバイルの“単月黒字化”は可能なのか 反転攻勢に向けた2つの戦略と課題:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
0円を廃止して純減に見舞われていた楽天モバイルが、ようやく純増基調を取り戻した。2月14日に開催された楽天グループの決算説明会で、その数値が明らかになった。残った全契約者が“課金ユーザー”に転じたことで、収入も急速に増加している。
ヘビーユーザーと法人でARPU増を目指す 5Gエリアも鍵に
ただし、コスト削減だけだと黒字化には届かない。半減以上にコストを圧縮できたとしても、今の売り上げとはまだまだ開きがあるからだ。先に挙げたマーケティング施策で獲得を増やせたとしても、1GB以下0円を打ち出していたときより、純増のペースが落ちることは間違いない。先に述べたように、キャリアの収入は契約者数×ARPUだとすると、後者を上げていく取り組みが不可欠になる。
UN-LIMIT VIIは段階制の料金プランを採用しているため、まずは、ユーザー1人あたりのデータ通信量を上げていく必要がある。三木谷氏も、「ヘビーユーザーが増えたり、リッチなサービスが増えたりすることで、もう少し売り上げが上がってくるといい」と期待をのぞかせる。データ容量無制限で3278円の楽天モバイルは、他社と比べ、平均のデータ使用量が多く、2022年12月には18.4GBに達した。こうしたユーザーは、楽天モバイルにとってのロイヤルカスタマーといえる。
また、他社と同様、「5Gを使うとどんどんデータ量が上がってくることも分かっている」(同)。5Gに接続できるエリアはまだまだ狭いが、この割合を上げれば、通信サービスのARPUは天井である3278円に近づいていく。四半期を追うごとに、データARPUが右肩上がりになっているのは、楽天モバイルにとっての安心材料といえる。UN-LIMIT VIIの導入で大量の契約者は失ってしまった格好だが、その分をヘビーユーザーで取り戻しているようにも見える。
ただ、UN-LIMIT VIIは料金の天井が3278円と低いため、データ通信だけでARPUを上げるのには限界もある。とはいえ、安直に値上げしてしまうと、再びユーザーが流出することにもなりかねない。これを補うには、オプションサービスの拡充が必要だ。実際、楽天モバイルは「my楽天モバイル」や「Rakuten Link」などのアプリを通じて、かなり頻繁にオプションをプッシュしている。これも、ARPUを上げる取り組みの一環と見ていいだろう。
契約数やARPUの底上げには、1月に導入した法人プランもプラスに働く。楽天グループは、イーコマースやトラベル事業などを通じて、幅広い会社との接点がある。三木谷氏も、「初年度は最低でも100万回線ぐらいの契約を行いたい」と自信をのぞかせる。法人向けプランは3プラン構成で、料金は最低でも3GB、2178円から。データ利用量によらず、ARPUも自然とUN-LIMIT VIIより高くなる。こうした契約をどう増やしていけるかが、単月黒字化の鍵になりそうだ。
とはいえ、大胆なコスト削減を進めるのと同時に、ユーザーを増やし、ARPUを上げていくのはなかなかハードルが高い。獲得コストを下げすぎて純増が鈍ったり、エリアが想定通りに広がらずユーザーが離脱してしまったりと、バランスの取り方次第で収入が伸び悩む恐れもあるからだ。エリア拡大の頼みの綱であるプラチナバンドも、運用開始は早くても2024年になる。その意味で、2023年は楽天モバイルにとって、難しいかじ取りを迫られる1年になりそうだ。
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