完成形ではない「ドコモのオンライン窓口」 リアル店舗と同じことが即実現できないワケ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
NTTドコモは、2月28日に「オンライン来店」、3月27日に「オンライン手続きサポート」を開始する。どちらも、自宅などにいながらにしてサポートを受けられる仕組みで、サービス利用料は無料。オンラインシフトをにらんだサービスだが、現状ではオンライン来店とオンライン手続きサポートの明確な差が出ているとはいいづらい。
やや中途半端なスタートになったオンライン来店、新規契約や機種変も実現するか
とはいえ、現状ではオンライン来店とオンライン手続きサポートの明確な差が出ているとはいいづらい。オンライン来店で、新規契約や機種変更などの手続きができないからだ。回線契約の譲渡や、ファミリー割引の設定や廃止など、my docomoでは難しい複雑な手続きをできるかというと、そのような建付けにはなっていない。価格差が出る機種変更などができないため、ショップごとの差も打ち出しづらい状況だ。
ドコモショップに何を期待するのかにもよるが、料金プランの変更程度であれば、my docomoでもできてしまう。不明点があれば、オンライン手続きサポートを利用すればいい。あえて、オンライン来店をするだけの分かりやすいメリットがあるかといえば、そうではないのが実際のところだ。理由の1つには、オンラインならではのオペレーションの難しさがある。
例えば、新規契約1つとっても、SIMカードの受け渡しが必要になる。eSIMを使えば今でもオンラインで契約し、すぐに使い始めることはできるものの、端末が含まれてしまうと、そうはいかない。ショップが郵送するのか、予約した上で来店してもらうのか、はたまたオンラインショップに誘導するのかといったオペレーションはきちんと詰めておく必要がある。代理店に委ねる部分が多いため、この手続き1つでも、解決には時間がかかりそうだ。
また、ドコモのブランドコミュニケーション部(広報)によると、現状では、料金プランの変更は可能だが、仮に最適な料金がエコノミーMVNOにしかない場合も、対応ができなくなってしまうという。エコノミーMVNOは、あたかも料金プランの1つのように見せているが、実態としては、ドコモ回線を借りるMVNOにMNPで移る必要があるからだ。相談ができても、移れない料金プランがあるとなれば、結局は来店するか、最初からオンラインで手続きした方がスムーズになってしまう。
誤解を恐れずにいえば、現状のオンライン来店は、やや中途半端な位置付けにも見える。オンライン来店と店舗の連携も取れておらず、実際の手続きを店舗に行って継続するといったことすらできない。O2O(Online to Offline)のサービスを実現する絶好の機会なだけに、それができていないのは少々残念だ。
もちろん、ドコモも今の状況をベストだと思っているわけではない。上記の新規契約や機種変更については、「体制も含めてどのような方法でやるかは検討し、実現したい」(岡氏)と前向きだ。「オンラインで全てを完結したいお客さまもいれば、店舗に行って続きをやりたいという方もいる」(同)というように、いかに柔軟な仕組みを作れるかが、利用率を高める鍵になる。具体的なスケジュールは明かされていないが、早期の対応を期待したい。
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