「フレッツ光」通信障害、原因は「未知の不具合」 NTT東西が検証結果を報告(1/2 ページ)
NTT(持株)とNTT東日本、NTT西日本は28日、フレッツ光や光電話で生じた通信障害の検証結果を報告した。通信障害の原因は特定のネットワーク機器が抱えたバグだった。
NTT(持株)とNTT東日本、NTT西日本は28日、記者説明会を実施。4月3日に発生した全国的な通信障害の検証結果を報告した。あわせて、障害に強いネットワークを構築するための取り組みについて説明した。
4月3日の通信障害については、NTT東日本から島雄策執行役員(ネットワーク事業推進本部副本部長)、NTT西日本から桂一詞執行役員(設備本部 サービスエンジニアリング部長)が登壇。冒頭には、ユーザーや関係者への謝罪として、深く頭を下げた。
4月3日のNTT通信障害の概要
4月3日の通信障害では、フレッツ光などの光アクセスサービスや、ひかり電話サービスが一時利用できない状況となった。
影響を受けた地域は、NTT東管内が北海道、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、新潟県の一部エリアの一部、NTT西管内は大阪府、滋賀県、岐阜県、石川県、富山県、福井県、島根県、鳥取県、愛媛県、徳島県の一部エリアとなっている。
影響時間と回線数は、NTT東が4月3日7時10分〜8時53分の約1時間43分で最大35.9万回線。NTT東のひかり電話では、一部回線において復旧が遅れたため、最終的な復旧時刻は10時08分となった。NTT西は、7時10分〜午前8時53分の約1時間39分で、最大8.7万回線だった。
なお、今回の障害では、緊急通報を取り扱うひかり電話サービスについて電気通信事業法上の「重大な事故」の要件に該当しており、両社は総務省への報告を行っている。
同報パケットを正しく処理できず、通信障害に
通信障害の原因となったのは、NTT局舎内にある加入者収容装置と呼ばれる設備だ。この設備は、家庭や企業からの回線と接続し、インターネットなどへつなげる役割を担っている。この加入者収容装置に設置されている特定のネットワーク機器で不具合が生じ、再起動を繰り返すようになったことが通信障害につながった。
障害範囲が広がった背景には、不具合を引き起こしたきっかけが、IPマルチキャスト通信だったことが挙げられる。IPマルチキャスト通信は動画配信サービスなどで用いられている仕組みで、同じパケットを広範囲に配信する。
今回の通信障害では、特定のネットワーク機器でこのマルチキャストで使われるパケットを正しく処理できないバグが内蔵しており、同型の機器がほぼ同じタイミングで再起動を繰り返す状況となった。
原因となった装置にはバックアップ系統が用意されていたが、同様のバグを抱えていたために、同じように再起動を繰り返すようになり、障害の長期化につながっている。
障害は発生から約1時間40分で収まっている。該当のマルチキャストパケットの発信が終了したため、自然に収束したものだという。
NTT東西は3日中に原因を特定し、4日は不具合が発生する背景にあった複数の条件を確認した。NTT西は7日に、NTT東は10日までに機器の設定を変更し、不具合を回避できるような設定への変更を行った。
なお、今回の障害が外部からの攻撃である可能性は低いという。障害のきっかけとなったマルチキャストパケットは、標準規格RFCに準拠した内容で、サイバー攻撃ではある痕跡も確認されていない。
導入5年目の機器で不具合が発生
今回の障害発生の原因となったネットワーク機器は、NTT東日本が約600台、NTT西日本には約500台が配備されている。このうち、NTT東では89台、NTT西は27台で不具合が発生した。NTT網では2018年から稼働している実績のある機器で、NTT東西ともに今回のような不具合は初めて確認したという。
障害を引き起こした機器名およびメーカーについては公表されていない。この機器は市販品で、多くの通信事業者などが利用されているため、バグについて具体的に発表すると、サイバー攻撃に悪用される恐れがあるためだ。
NTTは機器のメーカーへ不具合の内容を共有している。アップデートによる不具合の修正について、メーカー側は検討中としているが、現時点では提供されていないという。
今回の障害の再発防止策として、NTT東西が通信機器メーカーと連携して、潜在的なリスクを洗い出すための検証などを共同で行う方針を発表した。調達条件に機器の実装に関する情報提供を含める他、不具合発生時に迅速に対応できるようにメーカーとの事前調整を行うとしている。
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